11月の海外経済の動きをみると、欧州経済は、消費などでインフレによる悪影響がみられる。一方で生産は冬場のエネルギー供給不安を見越した前倒し生産の動きがみられており、今後、年末から年初にかけた反動減・景気後退リスクが高まっている。需要は停滞しているものの、物価上昇が2桁となっているため、ECBとしては引き締め的なスタンスを維持せざるを得ないであろう。
また、中国経済はロックダウン後の回復基調にあったが、ゼロコロナ政策の継続・不動産市場の調整により、再び停滞色を強めている。また、新しい執行部の下で、経済重視路線の後退が懸念されている。さらに緩和的な政策をとった場合には、資本流出やインフレが懸念されているため、近い将来に大規模な景気拡張的政策がとられる見込みが低下しており、先行きは慎重にみる必要があろう。
米国については、急激に利上げを進めている影響で、住宅や消費の一部で経済の減速がみられている。一方、労働市場は堅調さをみせている。今月は、10月のCPIのコア指標の伸びの低迷や、11月FOMC議事録で今後の利上げ幅の鈍化が示されたことから、来年も失業率が大幅に上昇せずにインフレ率が低下する見方が強まっている。しかし、今後の動向次第で利上げ幅、利上げの到達点には不透明感が強いとみた方がよいであろう。
国内経済に目を転じると、インフレの影響を受けつつ緩やかな回復基調にある。こうした中、日本のインフレ率は、これまでエネルギー・食料価格中心であり、依然としてそうした要因が大きい。しかし、一部では国内需給の逼迫、それを受けて企業がコスト増を最終財価格に転嫁する動きも出てきており、2%の物価目標の達成に近づいているといえよう。このため、来春の現在の執行部の任期満了とその後に向けて、徐々に日本でも金融引き締めの議論が浮上してこよう。ただし、そのまま現状の緩和策を終了すべきかどうかは、今後2%の物価目標が「安定的に」達成されるか、という点がカギとなり、これまでの物価上昇の動きとは切り離して改めて議論すべきであろう。
先行きの物価をみる上での第一の要素は、上記の海外経済動向である。欧米経済では、経済・物価の過熱を抑えるべく利上げを実施しており、海外経済の減速は外需の減速を通じて、日本経済の下押し要素となろう。第二は、国内での増税議論である。ロシアによるウクライナ侵攻等を受けて、国内でも安全保障に関する支出増の議論が活発化している。その財源として各種増税が議論されており、こうした動きは足元でインフレによる実質所得の減少にある日本では追加的な負担増となり、国内消費、それを見越した設備投資などの需要を下押ししかねない。このため、国内でも企業がコスト増を価格転嫁できる環境となってきたことは非常に好ましいが、それによるインフレを抑えるために金融引き締めまでが必要となるかは、海外経済の減速、増税を含めた今後の国内需要の見通しを慎重に踏まえる必要があろう。
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