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PwCが世界のCEO4,454名を対象に実施した「第29回世界CEO意識調査」1によれば、AI投資が具体的な成果につながったと回答したCEOはわずか12%にとどまる一方、強固なAI基盤を確立した企業は大きな利益を報告する可能性が3倍高いことが示されています。投資効果を高めるうえでは、投資の規模に加え、それを支える基盤の構築が重要であることが示唆されます。
この構図は、マーケティング領域にも当てはまります。マーケティングテクノロジーの導入そのものが成果を約束するわけではなく、成果を上げている企業には、その前提となる「戦略」と「基盤」がしっかりと構築されているという共通点が見られます。PwCが2025年に発表した調査レポート「マーケティングの成熟度を高めるための戦略とプロセス」2でも、マーケティングの成熟度を高め成果につなげるには、独自のマーケティング成熟度モデルをもとに、戦略設計と基盤構築への取り組みが起点となることを示しました。
本稿ではこの前年の調査・論考を発展させ、2026年も国内企業の経営層を対象にCxO実態調査を実施しました。マーケティング成熟度の経年変化を追うことで日本企業の現在地を再確認するとともに、新たにマーケティング投資の意向や成果との関連から見える課題を抽出しています。
調査の結果、投資意欲が拡大する一方で、日本企業のボリュームゾーンであるHigh・Middleレベルでは、多くの項目で成熟度が前年を下回り、構造的な伸び悩みの兆候が浮き彫りになりました。とりわけ、ブランド戦略の設計やデータ基盤の構築、ガバナンスの整備など、中長期的なブランド価値の構築と、それを支えるマーケティング基盤の整備を両輪で進める領域(本稿ではこれを「ブランド・マーケティング」と呼びます)において、十分な取り組みと投資がなされていないことが、停滞の主因として明らかになっています。
また同時に、成熟度と成果の間には強い相関があることも確認されており、この中核領域を起点に、自社の成熟度の段階に応じた取り組みと投資を設計することが、状況を前に進める鍵と言えます。
全体では「戦略設計」「ガバナンス」が相対的に高い水準にある一方、「テクノロジーとツール」「マーケティングチャネル」は低い水準にとどまりました。もっとも「ガバナンス」は全9カテゴリーのうち唯一前年から微減しており、テクノロジーやデータ活用の進展に統制整備が追いついていない可能性が示唆されます。
今後2〜3年の投資増加意向は41%と、現状(36%)から5ポイント上昇し、投資拡大の基調が確認されました。ただし、その中身を見ると領域別では「テクノロジー」と「人材」がともに51%と突出して高く、投資先が特定領域に偏重する傾向がみられます。一方で、ブランド戦略や顧客データ基盤といった成果の可視化に時間を要する領域は、中長期的なブランド価値を支える重要な基盤であるにもかかわらず、優先度が下がりやすいという構造的な傾向が浮き彫りになりました。
本調査では、各社を総合スコアに基づきVery High/High/Middle/Lowの4段階に分類したうえで、各投資領域が成果にどの程度つながりやすいかを分析しました。その結果、成熟度の段階によって"効く投資"が大きく異なることが明らかになりました。特に、基盤が整いつつあるHigh段階では投資が成果に結びつきにくい「踊り場」が生じており、単なる投資拡大ではなく、戦略の再設計が求められる構造が浮かび上がっています。
以上の結果は、漫然と投資を拡大するのではなく、まずブランド戦略と顧客データ基盤を中心にブランド・マーケティングの土台を築き、自社の成熟度に応じて段階的に投資配分を広げていくことが、成果につなげるうえで有効な投資のあり方であることを示唆しています。
本稿では、PwC独自のマーケティング成熟度モデルを用いて自社の現在地を把握するためのフレームワークに加え、成熟度レベルごとに、現在地の特徴と取り組むべき打ち手、そして「効く投資」のポートフォリオを詳細に解説しています。さらに、ボリュームゾーンであるHighの踊り場を越えて高度化ステージへ進むための戦略再設計の方向性についても提言しています。
自社の成熟度レベルに応じた具体的な打ち手や投資の考え方については、ぜひ本稿(PDF)をダウンロードのうえご覧ください。
1 PwC,2026,「『第29回世界CEO意識調査』の結果を発表」
https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/2026/ceo-survey2026.html
2 PwC,2025,「マーケティングの成熟度を高めるための戦略とプロセス~日本企業の経営層への調査から見えた実態と課題~」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/marketing-strategy-and-process.html
2026年1月、売上高500億円以上の企業に属する回答者に対しスクリーニング調査を行い、そのうち経営層(経営者・役員/CxOクラス・本部長・事業部長クラス)かつ自社の経営企画・事業企画・全社改革・DX推進・営業・マーケティングのいずれかに関わっていると回答した方を対象に本調査を実施。