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日本全国の若手経営者やファミリービジネスの次世代リーダーを包括的に支援するPwC Japanグループの組織「NextGen Japan」の第3回イベントを2025年11月に開催しました。PwC Japanグループは、グローバルに展開する「NextGen」活動の一環として2024年に「NextGen Japan」を立ち上げ、支援・啓発イベント等を主催しています。第3回のテーマは「ファミリービジネスのライフサイクル」。経済産業省による基調講演、『グローバルファミリービジネスサーベイ2025』の結果速報、パネルディスカッションを通し、諸課題と向き合う多角的な視点が提示されました。激動する経営環境の下、ファミリービジネスはいかに成長を持続し得るか——当日に展開された議論をレポートします(肩書は取材時点のものです)。
PwCが主宰する「NextGen」は、世界の68カ国・地域から約2,500人のメンバーが参加する招待制組織です。その活動を通して若手経営者や次世代リーダーは、環境の変化に対応した新しい考え方や、同世代の経営者とのネットワークを獲得することができます。今回のイベント冒頭、挨拶に立ったPwC税理士法人代表の高島淳はこうしたNextGenの意義を強調し、「時代の激動に立ち向かう新たな視点やネットワークを通じて、“成長の場”として活用してほしい」と述べました。
基調講演を行った経済産業省 経済産業政策局 産業創造課長の松田洋平氏は、2025年2月に政府が策定した「中堅企業成長ビジョン」と、ファミリービジネスのガバナンスに関して解説。全国に約9,000社ある中堅企業の多くで、コロナ禍からのいち早い回復と、国内投資や賃上げへの積極的な姿勢が見られることを解説しました。また、現在行われている「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」での議論に触れ、ファミリーガバナンスに関するガイダンスについては2026年春ごろの取りまとめを目指すと明らかにしました。
ファミリービジネスサーベイの結果速報を挟み、PwCコンサルティング合同会社パートナーの大橋歩が登壇。「ファミリービジネスのライフサイクル」について見解を共有しました。
大橋はまず、日本経済に占めるファミリービジネスの存在感を指摘。上場企業の半数、非上場まで含めると「9割がファミリービジネスである」とし、その強みとして「長期的視野」「経営者の強い求心力」「迅速な意思決定」「社会貢献・地域貢献の重視」などを挙げました。一方、経営規模が一定の水準を上回ったときのマネジメントの難しさ、「ファミリーガバナンス」への取り組みの手薄さが、日本では世界に比べ目立つと指摘しました。
大橋が特に強調したのが、企業が成長を目指す過程で遭遇する「屈曲点」での難しさです。「さまざまな障害やハードルを越える必要があり、それまでの成功体験を生かしにくい局面もある」とし、成長を継続するために「屈曲点では新たなチャレンジが不可欠」と主張しました。
また大橋は、ファミリービジネスのライフサイクルを「事業譲受期」「経営安定期」「事業拡大期」「事業承継期」の4つのステージに分類。各ステージ間には「転換期」があり、経営者が重要な意思決定を迫られる特に重要な時期だと言います。ファミリー(家業)、所有、経営という3つの円からなるスリー・サークル・モデルを用い、大橋はファミリービジネスの複雑さを解析(図表1)。「一定の高成長期になると、もともと重なっていた各サークルが徐々に分離し始める。完全分離している上場企業とは異なり、ゆるやかにつながる状態だからこそ、ガバナンスやマネジメントのあり方を注視する必要がある」と強調しました。
図表1:ファミリービジネスのライフサイクルとスリー・サークル・モデル
続くパネルディスカッションでは、PwC Japan有限責任監査法人パートナーでPwC Japanグループのファミリービジネス支援チームのリーダーを務める本多守、PwC税理士法人パートナーの望月文太、PwCアドバイザリー合同会社パートナーの吉原重之の3人が、率直な議論を展開しました。ファシリテーターは大橋が務めました。
望月は、税理士法人の観点から「価値循環サイクル」の概念を紹介。「企業価値を高め、そこで高まった価値を社会に還元し、循環させること」を企業は目指すべきと訴えました。また事業承継支援に関し、近年顕著なトレンド変化として、「20年前は課税額を減らすことが主なテーマだったが、昨今は税務以外の面も含めた事業承継や、ファミリービジネスのガバナンスに向ける眼差しが深さを増している」と紹介。財団設立については、「純粋に税務マネジメント目的のケースと、真意として社会貢献を目指すケースの両極端に分かれている」という興味深い指摘も披露しました。
吉原はM&Aの観点から事業承継の現状を報告。事業承継に関連する相談が急増するなかで、ファミリー内に後継者がおらず第三者への承継を検討するケースが増加している実態を述べました。さらに注目すべきトレンドとして「上場企業の純粋なMBOが増えている」とも指摘。特にここ1年ほどは「金融機関のスタンスが変わり、ファンドのリスクマネーがなくても経営者に対して直接お金を出すようになった」と、最新の動向を解説しました。
本多は、監査法人の役割について「社会からの信頼を顧客に付与すること」に尽きると述べ、財務報告等の信頼性を担保することのみならず、「問題が発生したときに事の本質を突き詰め、再発防止策を示すことも私たちの大切な任務」であるとして、責任感の一端を覗かせました。
また本多は、ファミリービジネスオーナーが持つさまざまなアジェンダについてワンストップで支援を行うPwC Japanグループのファミリービジネス支援チームをリードする立場から、その理念を「オーナーの方々に寄り添って、オーナーのアジェンダとお悩みにしっかり応えること」と明示。そのために、「PwC Japanグループのメンバーが横断的に連携して、オーナーオリエンテッドなソリューションを提供する」とし、会場に集まった参加者に向けて力強いサポートをアピールしました。
(左から)望月文太、吉原重之、本多守、大橋歩
ここで本多は「オーナーズアジェンダ」というフレームワークに基づく考え方を紹介しました(図表2)。同フレームワークでは左側に「オーナー個人とファミリーの課題」を列挙し、右側に「オーナーが直面しているビジネスの課題」を置きます。ここで改めて本多が強調したのは左右が密接に関連する点で、自身の海外駐在時の経験を例に詳述しました。海外でビジネスを展開していたあるファミリーのケースで、オーナー側(左)には「現地で結果を出し、日本に帰って事業承継すること」という目標=課題がありました。一方、ビジネスサイドの視点(右)としては「創業者の精神をローカライズし、現地でしっかり数字を出すこと」に重きを置く後継者の方針と実際の行動傾向がありました。
本多は、「実は、この左右はすべてつながっている」と指摘。「断片的に切り取るのではなく、左右を結ぶ文脈をきちんと理解したうえで、オーナーをどうサポートするのかを意識しながら寄り添う——そんなサービスを私たちは提供した」との経験を振り返り、それこそが「オーナーズアジェンダに基づく支援の本質」と語りました。
図表2:オーナーズアジェンダのフレームワーク
本多と同様に望月も自らの経験を振り返り、「課題が顕在化した事例」からの学びを率直に開陳しました。
望月が過去にサポートしたファミリー企業の事業承継案件では、先代の意向も考慮して税務面を最大に考慮した遺言案を提案したところ、後継者からは税務面以外でのガバナンスの視点を強く指摘されたことがありました。
望月は、「この経験から事業承継にあたっては、税理士としての立場とともに、企業にとってのガバナンスや中長期的な展望を検討すること、そして、強いリーダーシップのあるオーナーだけではなく、ご家族の皆様とのコミュニケーションを図りながら進めることの重要性を痛感した」と振り返りました。
この教訓を基に、その後は「中立性」を強く意識し、「事業承継の専門家として、税務とそれ以外の面も含め、オーナーファミリーの意向に沿った承継を実現すること」を心がけている、と望月は語りました。
吉原は、あるMBO案件で出会ったオーナーの言葉を紹介しました。そのオーナーは「従業員に、当社で働くことへの生きがいを感じてほしい。当社の社員であることを誇りに思ってもらいたい」と語り、MBOの目的も「長期的な投資の自由度を高めること、そして従業員への還元を増やすこと」だったと言います。この社長のような“経営者の思い”を引き出すために吉原は、「腹を割って話せる場をなるべく多く設ける」ことや、「クライアントの商品やサービスを実際に体験する」ことを心がけていると述べました。
さらに吉原は「商品やサービスとは、オーナーの思いが形に結晶したもの。自分もそれをきちんと理解し、できれば好きになって、“推し活”するような立ち位置からサポートしたい。それができれば、オーナーさんとの距離も必ず縮まる」と語りました。
本多は、PwCの特長が現れた支援として、2つの事例を紹介しました。その1つ目は、海外進出支援。グローバル企業の監査で海外拠点のサービス体制に問題が見つかった際、本多は現地に赴き、「何が問題で、何を改めるべきか。責任追及ではなく、課題の本質」を見極め、率直かつ建設的に助言し、管理体制を強化したと言います。
2つ目は、危機対応。ある企業に重大事案が発生したケースでした。「社内の情報がきちんと上層部に上がらない企業風土」が問題の真因でしたが、創業家が委員長を務める調査委員会では、PwCからの改善の必要を指摘する提言に委員長が怯む場面もあったと言います。しかし本多は、「あなたがここで正しい決断を下さないと、誰からも信頼されなくなる。逆にここで頑張れば、信頼を得て事業をリーダーとして率いていける」とアドバイスし、ガバナンスが効く経営へと状況が好転しました。
本多は「必要なことを、適切なタイミングで躊躇せず伝える。それによって、ファミリーに本気で寄り添い、一緒の立場で長期的にビジネスを考えていることを理解してもらえる。そこに私たちの価値がある」と述べ、PwCのファミリービジネス支援の本質を強調しました。
ファミリービジネスの将来展望として望月は、社会全体が注力すべき2つの領域を挙げました。1つは「AIを活用した事業承継支援の強化」。例えば、「オーナーのアバターを作成して、その人物が後継者に理念を引き継ぐ」といった活用を目指す。もう1つの領域としては「より積極的な社会貢献の実現が求められる」と指摘、例としてフードロス削減に向けた税制改革、企業価値の向上を促す事業承継税制の見直しなどを提案しました。
吉原は、PwCのグローバルネットワークを生かした事業展開支援と、ビジネスDXの支援、サイバーセキュリティ強化に向けた支援の重要性を強調しました。
本多は、NextGenのネットワークの効用について、「参加者同士の交流がさまざまなアイデアや、ライフサイクルに応じた課題の共有を可能にする」と総括。アジア各国をはじめ世界各地で展開されているNextGenの活動をいっそう強化することで、今後は「さまざまな課題を持ち寄った参加者が、ネットワークのなかで互いに助け合う環境をさらに整備していきたい」と抱負を語りました。
パネルディスカッションの議論を踏まえ、プログラムの最後に、参加したファミリービジネスの継承者同士が意見を交わすテーブルディスカッションが行われ、今回のイベントは幕を閉じました。
約2時間半にわたる議論は、政策から実務まで、ファミリービジネスを多角的に捉えるとともに、万全の支援体制で経営者らを新たな挑戦に駆り立てる充実した内容となりました。変化の激しい時代にファミリービジネスが持続的な成長を遂げるには、ライフサイクルの各段階での適切な意思決定と、専門家による伴走支援が不可欠であることが、改めて浮き彫りになったと言えます。今回のイベントにより、貴重な学びと交流の場を提供し、参加者に大きな刺激を得ていただくことができました。
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