【開催報告】自動車・建機のサーキュラーエコノミー

データ活用で拓く、新たなビジネスモデル〜「モノ売り」から脱却する、循環型ビジネスの未来

  • 2026-02-04

PwCコンサルティング合同会社は2025年10月10日、株式会社セールスフォース・ジャパン社主催の『自動車・建機のサーキュラーエコノミーデータ活用で拓く、新たなビジネスモデル〜「モノ売り」から脱却する、循環型ビジネスの未来』に登壇しました。

サーキュラーエコノミー(資源循環)を取り巻く動向や、企業の取り組むべき対応について解説しましたので、本稿では、特に自動車会社の事例を中心にその概要を紹介します。

サーキュラーエコノミーの概観と企業に求められる対応

本章ではPwCコンサルティング合同会社 パートナーの中島 崇文が、サーキュラーエコノミーの概要や、今企業が取り組むべき理由、システミックアプローチについて解説を行いました。

サーキュラーエコノミーの概要と企業が取り組むべき理由

サーキュラーエコノミーとは「モノの循環」と「経済的価値の創出」の両立を目指す概念です。これと対をなす従来の概念であるリニアエコノミーにおいて、気候変動、大気汚染、水ストレスや生物多様性の喪失に大きな影響を与えることが懸念されていることから、サーキュラーエコノミーへの転換が求められています。

そうした背景を踏まえ、企業がサーキュラーエコノミーの実現に向けて取り組むべき理由は大きく3つ考えられます。

①法規制・国際スタンダードへの対応

2019年頃からEUを筆頭にサーキュラーエコノミーへの問題意識が高まっています。具体的には、欧州グリーンディールや使い捨てプラスチック指令といった政策・法規制が導入されました。日本でも、プラスチック資源循環促進法(プラ新法)や資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(再資源化事業高度化法)が策定されるなど資源循環の機運が高まっています。さらにグローバルでは、サーキュラーエコノミーのフレームワークとしてのGCP(Global Circular Protocol)による指標開発が進められています。その中でも自動車業界は、欧州電池規則やELV指令によって、車載電池のリサイクル材の最低使用率や自動車由来の再生プラスチックの含有率が定義されるなど、サーキュラーエコノミーの取り組みは事実上義務化されている状況です。

②地政学リスクへの対応

車両の電動化が加速していることや、重要鉱物資源国での資源ナショナリズム台頭による供給制約により、金属資源や重要鉱物の供給不足および価格高騰が、近い将来想定されます。このことを事業運営上のリスクとして捉え、対策を講じることが必要だと考えます。

③ビジネス機会の獲得

上記のような外部要請およびリスクへの対応といった「消極的対応」だけでなく、この状況を好機として経済合理性との両立を目指し、新たなビジネス機会の獲得に踏み出す「積極的対応」も重要です。その方向性は、製品価値向上と企業価値向上の2つに大別されます。製品価値向上に関しては、廃棄物を有価物へ転換する取り組みや、初期不良品や短期間使用品などを整備・再生するリファービッシュによる製品価値の回復のような具体的施策が有効です。また、環境への貢献を通じてブランド価値を高めることは、企業価値の向上に資する方策だと考えられます。

サーキュラーエコノミー実現の要諦

サーキュラーエコノミーの実現を阻む障壁には、空間的制約と時間的制約の2点が存在します。空間的制約は一社・一産業でその収益化を図るのが困難であること、時間的制約は投資回収・収益化まで時間を要することを意味します。

これらの障壁を打開するためのアプローチとして、以下3つの要諦を意識することが有効です。

①エコシステムの全体最適化

一社・一産業での取り組みは困難であり、多様なプレイヤーを巻き込んで協業していくことが求められます。そのためには共通の目的・ビジョンを持つ仲間づくりと、協業し合うエコシステムの構築が必要です。

②ビジネスモデルの経済合理化

協力相手も自社も営利企業同士であるため、目的・ビジョンだけでつながる理念先行の関係性ではなく、経済合理との両立を実現できるエコシステムを構築する必要があります。

サーキュラーエコノミーの取り組みによって、社会に貢献すると同時に、顧客にも価値提供をし、ステークホルダーも収益を確保できる「三方良し」を実現できる状態を構築することが必要です。

③抜本的な打ち手によるスケール化

サーキュラーエコノミーの実現には、既存ルールの更改や新技術開発、投資の呼び込みなどスケール化が欠かせません。そのためには、企業・産業の枠を超えて連携し、一企業・一産業では発想し得なかった抜本的な打ち手を生み出し、検討・実行していくことが求められます。

ここまで見てきたサーキュラーエコノミー実現の要諦を実践していくにはシステミックアプローチが有効であると考えます。

サーキュラーエコノミー実現に向けたシステミックアプローチ

システミックアプローチとは、そこに属する多様なステークホルダーとその関係性・メカニズムをシステムとして捉え、複数の変革要所に対して投資・開発を行うことでシステム全体の変革を促す考え方です(図表1)。まずはプレイヤーとその関係性を洗い出すことでシステムの全体像を把握し、そこから最も介入効果の高い阻害要因・促進要因を抱える要所と、その要所を動かすために打ち手を特定し、どのような投資・開発をすべきかを具体的に検討していきます。このようにエコシステムの「構造」を変えることで経済合理的なビジネスモデルを構築し、プレイヤー間の「関係性」を変えることでボトルネックを解消して投資と開発の促進が可能になります。サーキュラーエコノミーによって、企業価値の向上と環境・社会価値を最大化する好循環を生み出していくことが期待されます。

図表1:サーキュラーエコノミー実現に向けたシステミックアプローチ

自動車業界がサーキュラーエコノミー実現に取り組む意義

本章ではPwCコンサルティング合同会社 ディレクター/スマートモビリティ総合研究所 GX & Ecosystemプログラムディレクターの細井 裕介が自動車サーキュラー実現における5つの要所について解説を行いました。

自動車業界は、カーボンニュートラル実現に向け車両の電動化に取り組んでいます。一方で、欧州電池規則やELV指令により、グリーントランスフォーメーション(GX)推進が求められるなど、サーキュラーエコノミーへの対応が喫緊で求められている業界の一つです。

同時に、サーキュラーエコノミーに取り組むことで収益性の向上に資するビジネス機会を獲得することが期待されています。例えば、車両リファービッシュによる製品利用価値の最大化や、構成部材の再資源化、再生材の活用などの方策が考えられます。

2030年時点で自動車・モビリティのサーキュラー市場は1,178兆円の巨大なものとなることが予測されています。環境負荷低減と収益を両立させるCSV戦略において、サーキュラーエコノミーは重要な位置付けであると言えます。

このような自動車業界において、サーキュラーエコノミーによる収益向上を実現するためには以下5つの要諦を抑える必要があると考えます(図表2)。

図表2:自動車サーキュラー実現における5つの要所

①技術産業化

静脈産業におけるこれまでのプロセスを、先進技術の活用によって徹底的に合理化することで、新たな付加価値を生み出し、それ自体を産業化し、経済合理を実現していくことが求められます。

例えば、中古車流通において、これまでは担当者が車両状態などの情報を踏まえ、属人的な判断でプライシングを行っていましたが、今後は車両個別の個体情報や市場情報をAIが分析し、最適なプライシングを行うことでより迅速で、精度の高い価格算定が期待されます(図表3)。このように従前のプロセスの付加価値を先進技術で実現することで、新たな収益源を得ることが可能になると考えられます。

図表3:PwCが提供する中古車AI Pricingソリューションの例

②他産業との連携(X to Car/Car to X)

自動車産業のみに閉じた在り方を検討するのではなく、他産業と連携したビジネスモデルを検討することにより、経済合理性の実現が求められます。例えば、電力産業と連携することで、車載蓄電池に存在する余剰電力を系統向けに供給することでエネルギー調整力を最大化したり、劣化した車載蓄電池を定置用蓄電池として再活用することで電池の使い切りを実現したりすることが期待されます。このように製品の用途を従来の単一の形から複数の形へと拡大することで、より経済合理性を追求することができると考えられます。

③機能の統合化・集約化

考えられるユースケースとその機能をマスター化することで、個別施策ごとの機能・プロセスを検討するのではなく、施策横断での統合的な検討が可能になります。これにより、効率的な施策検討が可能になることが期待されます。

④グローバル競争

日本の自動車産業は輸出中心であるため、製品が諸外国へ流出することは避けられませんが、サーキュラーエコノミーの観点では、これはグローバル競争力の弱体化につながると考えられます。その対策として、輸出先で都市鉱山などサーキュラー機能の開発に取り組み、再生資源の調達力強化を目指すことが重要になります。

⑤データリソースサーキュレーション

一連のサプライチェーンの中で発生するデータを正しく収集・管理することで、CFP(カーボンフットプリント)算出、需給マッチング、品質保証などの付加価値を創出し、経済合理性の向上につなげていくことが期待されます。

新興OEMがSDVやBEVなどを武器にグローバル競争力を強める中で、保有台数としてすでに多くの自動車をグローバルに送り出している日本の自動車産業は、サーキュラーエコノミーに取り組みやすいポジションにいると言えます。サーキュラーエコノミーを環境対応としてだけでなく競争力を生み出す戦略として捉え、産業強化につなげることが重要だと考えます。

主要メンバー

中島 崇文

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

細井 裕介

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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