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2021-12-22
PwC Legal Japan News
2021年12月
本年5月19日に成立した、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律」により金融商品取引法の一部が改正され(以下、同法による改正後の金融商品取引法を「金商法」といいます。)、新たに「海外投資家等特例業務」が創設されました。11月10日には、金商法の政府令に係るパブリックコメントの結果1等(以下「本パブリックコメント」といいます。)が公表され、これに合わせて金融庁の公表する「投資運用業等 登録手続ガイドブック」2が改訂されました。改正後の金商法及びその政府令は本年11月22日より施行されています。
本ニュースレターでは、本年6月30日付のPwC Legal Japan News 6月号(銀行法等の一部を改正する法律の概要)で解説したこの海外投資家等特例業務について、本パブリックコメント等を踏まえてその概要をアップデートし、解説します。
グローバルな拠点再設置の加速に呼応して海外の金融機関・資金を日本市場に取り込み、日本市場が「国際金融センター」としての機能を発揮していくことができるよう、海外のプロ投資家を顧客とするファンドの投資運用業者の参入障壁を軽減する手段の一つとして、「海外投資家等特例業務」が創設されました3(金商法63条の8第1項)。
海外投資家等特例業務が対象とする業務は、従来からの適格機関投資家等特例業務と同様に、組合型集団投資スキーム持分の自己運用とされ、適格機関投資家等特例業務と同様に事前に届出を行うことが求められます(金商法63条の9第1項)。また、組合型集団投資スキーム持分の日本国内における取得勧誘(自己募集)については、原則として第二種金融商品取引業の登録が必要とされますが、こちらも適格機関投資家等特例業務と同様に届出のみで取得勧誘を行うことが可能とされます。なお、海外投資家等特例業務は、主に海外の投資運用業者の参入を念頭に置いた制度ですが、国内の事業者についても、同様の要件を満たす場合には本制度を利用することが認められます。
海外投資家等特例業務とは、以下のいずれかを業として行うことをいいます(金商法第63条の8第1項柱書)。
組合型集団投資スキーム持分を有する「海外投資家等」から出資され、又は拠出された金銭の運用に関する行為(自己運用、金商法63条の6、同条1項1号柱書、2条8項15号)
組合型集団投資スキーム持分に関する、「海外投資家等」を相手方とする募集又は私募を国内に設ける営業所又は事務所にて行う行為(自己募集)
自己募集に関しては、適格機関投資家等特例業務とは異なり、私募に限らず募集を行うことが認められています。このため、二項有価証券である組合型集団投資スキーム持分を499名超の者に取得させることが可能となります。
自己運用の対象は、「海外投資家等」から出資され、かつ、当該出資を受けた金銭が「主として」非居住者から出資を受けたものに限られます(金商法63条の8第1項第1号柱書)。「主として」とは、非居住者の出資割合がファンドの総出資額の2分の1超であることを指します4。また、「非居住者」とは、居住者以外の自然人及び法人をいい(同号、外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号)、「居住者」とは、日本国内に住所又は居所を有する自然人及び本邦内に主たる事務所を有する法人をいいます。
海外投資家等特例業務における「海外投資家等」には次の者が含まれます(金商法63条の8第2項)。
外国法人又は外国に住所を有する個人であって、その知識、経験及び財産の状況を勘案して内閣府令で定める要件に該当するもの(同項1号)
適格機関投資家(これに準ずる者として内閣府令で定める者を含み、前号に掲げる者を除く。)(同項2号)
前二号に掲げる者のほか、前項各号に掲げる行為を行う者と密接な関係を有する者として政令で定める者(同項3号)
この類型には①外国法人及び②次の(i)又は(ii)のいずれかに該当する外国に住所を有する個人が含まれます5(金融商品取引業者等に関する内閣府令(以下「業等府令」といいます。)第246条の10第1項各号)。
(i) 次に掲げる要件の全てに該当する者
(a)組合型集団投資スキーム持分を取得する時点における、その保有する資産の合計額から負債の合計額を控除した額が、3億円以上になると見込まれること
(b)組合型集団投資スキーム持分を取得する時点における、その保有する投資性金融資産6の合計額が3億円以上になると見込まれること
(c)金融商品取引業者等(外国の法令上これに相当する者を含む。)に有価証券の取引又はデリバティブ取引を行うための口座を開設した日から起算して1年を経過していること
(ii) 組合型集団投資スキーム持分を取得する時点において、外国の法令上、特定投資家に相当する者
(ii)外国の法令に準拠して設立された厚生年金基金又は企業年金基金に類するものであって、外国において主として退職年金、退職手当その他これらに類する報酬を管理し、又は給付することを目的として運営されるもの
この類型には、次の(i)、(ii)又は(iii)のいずれかに該当する者が含まれます(金融商品取引法施行令第17条の13の5第3項)。
(i)海外投資家等特例事業者の役員、使用人
(ii)海外投資家等特例事業者の親会社等
(iii)その他内閣府令で定める次に掲げる者(業等府令第246条の10第3項各号)
(a)海外投資家等特例事業者の子会社等又は兄弟会社等
(b)海外投資家等特例事業者が行う運用対象財産の運用に係る権限の委託を受けた者
(c)海外投資家等特例事業者の投資助言委託先
(d)海外投資家等特例事業者の親会社・子会社等、運用委託先、投資助言委託先の役員又は使用人
(e)海外投資家等特例事業者の3親等以内の親族
海外投資家等特例業務を行うためには、当該業務を適確に遂行するための人的構成を有し、必要な体制を整えるなどの一定の要件を満たしたうえで、その商号、名称又は氏名、主たる営業所8又は事務所の名称及び所在地等の一定の事項を届けることが求められます9(金商法第63条の9)。
まず、適格機関投資家等特例業務と異なり、欠格事由として、海外投資家等特例業務を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者又は遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者が挙げられており(金商法63条の9第6項1号ロ、ハ)、人的構成要件、体制整備義務10が要求されている点に留意が必要となります。また、同じく欠格事由として、国内に営業所又は事務所を有しない法人、国内に代表者を定めていない法人、外国に住所を有する個人が挙げられており、国内拠点の設置が義務付けられることとなります(同項2号、3号)。この点は税務上の観点からも恒久的施設への該当性等の考慮が必要となります。
海外投資家等特例業務の届出者は、適格機関投資家等特例業務の届出者と同様に、一定の行為規制に服します。届出事項の変更時の届出義務のほか、適格機関投資家等特例業務の場合と概ね同様の行為規制が適用されますが、業務管理態勢の整備義務(金商法35条の3)の適用がある点が異なります。同条による態勢整備は、具体的には、社内規則等の整備と当該社内規則等を遵守するための従業員に対する研修(業等府令70条の2第1項)に係る義務が課されることとなります。
海外投資家等特例業務は、主として海外の資金を運用する海外の事業者について、届出という簡素な手続による参入を認めるものであり、これを活用して海外の事業者を取り込むことを念頭に置いた制度です。従来の適格機関投資家等特例業務とは異なり、必ずしも投資家に適格機関投資家が存在することを要せず、投資家数の制限も存在しないといった特徴がありますが、一方でファンドに対する出資総額のうち2分の1超の額を非居住者から受け入れる必要があります。また、国内拠点の設置義務がある点に加え、人的構成要件、業務管理態勢の整備義務など適格機関投資家等特例業務の場合よりも重い負担が届出者に課される可能性がある点に留意が必要となります。
1 2021年11月10日金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211110/01.pdf)
2 令和3年11月Ver.3.1 金融庁「投資運用業等 登録手続ガイドブック」(https://www.fsa.go.jp/policy/marketentry/guidebook/01.pdf)
3 本パブリックコメント回答No.182
4 金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針Ⅵ-2-8-1(1)②
5 海外投資家等特例業者は、これらの要件を満たすことを適切に確認するための措置として、例えば、当該顧客からの自己申告の書面及び当該顧客が任意に提供した資料(取引残高報告書又は通帳の写し等)、又は業等府令246条の14第1項第5号ハに規定する書面等を活用した上で、確認結果及びその根拠を記載した書面を管理・保存するなど社内記録を適切に作成・保存することが求められます(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針Ⅵ-2-8-1(1)③)。
6 有価証券をはじめとする業等府令第62条第2号イからトに掲げるものに限ります。
7 本パブリックコメント回答No.175
8 原則的に、主たる営業所又は事務所(外国法人にあっては、日本における主たる営業所又は事務所を含む。)及び海外投資家等特例業務を行う営業所又は事務所については、いわゆるバーチャルオフィスを用いることは認められません(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針Ⅵ-3-3-1(1)④)。
9 なお、これらの届出の添付書類は英語で記載することができます(業等府令第246条の14第2項)。
10 具体的には、海外投資家等特例業務を適確に遂行するための社内規則の作成、社内規則の遵守体制の整備が必要となります(業等府令246条の19)。
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