
Worldwide Tax Summary 2025年4月号
本稿では、海外税制(米国、EU、ベトナム、国連)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年4月号 寄稿)
2020-06-02
前稿では、これまで比例関係にあった経済成長と移動拡大が「ポストコロナ」時代にはデカップリング(分離)される可能性を論じた。本稿では、今後、移動が量的・質的な変化をとげる中で、自動車・モビリティ産業の経営者が優先的に考えるべきアジェンダを提示したい。
まず何より難しいのは、今後は多くの企業において「両利きの経営」が求められることである。従来は自動車事業の拡大のために全社一丸となって市場での競争に打ち勝つことが至上命題であった。しかし、右肩上がりの市場成長に世界的にも疑問符が付くこの先は、新たな収益の柱を生み出し、育てていくことの重要性が増す。各事業の自律性と収益責任を徹底できるよう遠心力を働かせるとともに、企業体としての存在意義の再定義や事業間シナジーの見極めにより求心力を利かせる、という絶妙なバランスを実現することが経営者の重要な役割となる。
そして、既存の自動車事業においては、収益の盤石化が求められる。これまでも各現場での改善活動による効率化は行われてきているが、今後は組織の抜本的改革やチャネルの統廃合など、旧来聖域とされてきた領域にもメスを入れた構造的な改革を行わなければ、市場の成熟・縮小に対応できない可能性もある。また、同業種・異業種問わず合従連衡の動きに乗り遅れてしまうリスクにも留意すべきである。ゆでガエル状態になる前に、経営者は改革の方向性とタイミングを不確実性の中で勇気をもって決断する必要がある。
またデジタル技術を活用し、研究開発から販売・アフターサービスまでバリューチェーン全体を徹底的に高度化・効率化することも求められる。既に世の中には、開発、生産、マーケティングなどの各領域においてさまざまなデジタルソリューションが提供されている。経営者は、担当部門からの提案に受け身になって闇雲にそれらを導入するのではなく、事業全体を俯瞰して律速となる領域に優先投資し、限られた経営資源を最適に活用できるようにすべきである。最小の人員かつ遠隔でも操業できる体制を構築することは、有事の事業継続性の観点からも有効であることは昨今、皆が認識している通りである。
新事業においては、多くの企業がCASEやMaaSの進展に合わせて、モビリティサービスに関連した事業機会を見出している。自社がハードの製造・販売にとどまるにせよ、サービス領域にまで拡大するにせよ、留意しなければならないのは、既存事業とは大きく異なる戦略や組織運営が必要になるということだ。良いものを作れば売れるという発想は捨て、最初から業界のエコシステムそのものを他社連携も含めて構想することが重要である。そして新事業組織は、従来とは別次元のスピード感やリスク許容度などに基づいた新しい働き方で運営することが成功の鍵となる。
以上のように、今後経営者は、両利きの企業運営を実現する上で、大鉈をふるうことも含めて既存事業を盤石化すると同時に、従来とは大きく異なるアプローチで新事業開発を進めていくことが求められる。来月以降は、このような大アジェンダを念頭に置き、より具体的なテーマについて議論を深めていく。
【Strategy&は、PwCの戦略コンサルティングサービスを担うグローバルなチームです。】
ディレクター
PwC Strategy&
tomohiko.t.kitagawa@pwc.com
※本稿は、日刊自動車新聞2020年5月23日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
本稿では、海外税制(米国、EU、ベトナム、国連)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年4月号 寄稿)
日本の物流業界は今、これまでにない大きな転換期を迎えています。精力的な動きをしている食品業界について、現状や課題、今後の方向性やあるべき姿などを解説します。(Logistics Today 2025年2月27日寄稿)
生成AIを中心に新たなテクノロジーがマーケットに展開され、HRテクノロジーへの期待が高まっています。PwCが実施した2つの調査結果を基に、HRテック導入の際の5つのポイントについて解説します。
PwC Japan有限責任監査法人が発表した、2030年に向けた中期経営ビジョン「Assurance Vision 2030」について、2025年の取り組みをご紹介します。(旬刊経理情報 2025年4月1日号 寄稿)
本書では、SDV(ソフトウェア定義車両、Software Defined Vehicle)とは何か、今後何をすべきかを検討いただく一助として「SDVレベル」を定義し、SDVに関するトピックや課題を10大アジェンダとして構造分解して、レベルごとに解説しています。(日経BP社/2025年4月)
2025年の産業・サービス分野におけるM&A活動は、企業がポートフォリオの拡大、再編、洗練に向けた取り組みを強化していることから、成長へ向かうことが見込まれます。
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。
PwCコンサルティング合同会社は、持続的なモビリティ社会システムの創造を推進する「スマートモビリティ総合研究所」を設立しました。モビリティ動向・関連データの発信によりステークホルダーの認識共通化を後押しするとともに、コミュニティ形成のためのリアルな場を提供し、モビリティ領域における価値創造の機会を創出します。