これからどうなる?─「排出量取引制度」Q&A

第5回 価格安定化措置

  • 2025-07-01

※本稿は、2025年年6月1日(No.1744)に寄稿した記事を転載したものです。
※発行元である株式会社中央経済社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。

この記事のエッセンス

  • 排出枠の市場価格が急騰または急落した場合、国民生活や経済活動等への多大な影響が懸念される。取引価格の上限および下限を設定し、その価格帯をあらかじめ示す取扱いにより、取引価格の予見可能性を高め、脱炭素投資を促進する。下限価格は、あまり低過ぎると、GX投資が進まない可能性があるとの説明がされた。上限価格および下限価格の設定は、どういう水準が適正なのかを議論し組み立てたいとしている。
  • 従来は、排出量を固定して炭素価格が市場メカニズムにより決定される、または税金で炭素価格を固定して排出量が需要量に応じて市場メカニズムで決定される方法で政策目標への達成を捉えていた。しかし、実際に導入された炭素税や排出量取引制度をみると、排出量または炭素価格の一方のみを固定するのではなく、人為的に階段状で右上がりの供給曲線を作り出し、排出量と価格の変動を小さく抑えるような制度が生じるようになってきたとされている。

はじめに

カーボンニュートラル目標を表明する国および法域が増加するなか、海外において、排出削減と経済成長および産業競争力の強化を共に実現するグリーントランスフォーメーション(以下、「GX」という)に向けた投資が進んでいる。

国内では2023年5月に、GXの実現を目指す投資(以下、「GX投資」という)の促進に向けた政策パッケージである「成長志向型カーボンプライシング構想」を反映した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(以下、「GX推進法」という)が成立した。これは、GX経済移行債を財源とする20兆円規模の先行投資支援と排出量取引制度を含むカーボンプライシングとの組み合わせにより、企業のGX投資の促進を含んでいる。2023年度から排出量取引制度が試行され、クライメート・トランジション利付国庫債券は2024年2月から発行されている。

また、内閣官房のGX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ(以下、「CP専門WG」という)において、排出量取引の制度化に向けた論点整理が行われた。議論は排出量取引制度の骨格の形成を中心に行われ、制度運営における詳細は、今後の法制化において明確にされるが、現在試行されている排出量取引制度とは異なる点がある排出量取引制度の本格稼働が予想されている。本連載においてはCP専門WGにおける資料をもとに排出量取引制度の議論を中心に解説していく。

第5回は、価格安定化措置について概要を解説する。なお、記載については、筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。


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執筆者

川端 稔

監査事業本部 パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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石川 剛士

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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