
米国トランプ政権の反DEI政策の米国外企業への適用 ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2025年6月)
2025年1月21日に米国トランプ大統領が発令した「違法な差別の根絶と実力主義の機会の回復」と題する大統領令第14173号の内容と、その域外適用の試みについて概説します。
AIの急速な普及とともに、その解析プロセスやアウトプットを「どこまで信頼できるのか?」という世の中の疑念は膨らんでいる。AX(AIによる変革)を巡る「トラストギャップ(信頼の空白域)」の拡大だ。もはやAIに無関心でいることはできない状況の中、AIの利活用を促すためのAIガバナンスをいかに構築すべきか。AIの最新動向を研究し、政策提言も行う中央大学の須藤修教授と、会計監査におけるAI活用やAIガバナンスの構築支援に取り組むPwC Japan有限責任監査法人の宮村和谷氏、伊藤公一氏に話を聞いた。
(左から)伊藤 公一、須藤 修 氏、宮村 和谷
登場者
中央大学
国際情報学部 教授
ELSIセンター長
須藤 修 氏
PwC Japan有限責任監査法人
執行役 パートナー
トラストサービス開発推進部
宮村 和谷
PwC Japan有限責任監査法人
公認会計士 パートナー
AI監査研究所 所長
伊藤 公一
※本稿は、日経ビジネス電子版の記事広告を転載したものです。
※発行元である株式会社 日経BPの許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
対話型AIの登場で、世界中でにわかに「生成AIブーム」が巻き起こったのは2022年の秋。たった3年足らずの間で、AIや生成AIは驚くほどの進化を遂げている。
「世界では米国を筆頭に、中国、欧州などのAI先進諸国が熾烈な開発競争でしのぎを削っています。LLM(大規模言語モデル)によるテキスト生成に、外部情報の検索を組み合わせて回答精度を高めるRAG(検索拡張生成)や、テキストだけでなく、動画、画像などを生成するマルチモーダルAIの開発、LLMとSLM(小規模言語モデル)を連結させたMoE(Mixture of Exprt)の開発、論理的推論能力の強化など、いち早く技術を確立して実権を握ろうとする覇権争いが繰り広げられているのです」
そう語るのは、中央大学 国際情報学部国際情報学科教授で、東京大学名誉教授でもある須藤修氏である。
須藤 修 氏
そうした世界の動きに対し、後れを取っているのが日本であるという。
AIの開発には、高性能のスーパーコンピューター(スパコン)や、その構築に欠かせない最先端半導体、AIモデルそのものの開発技術などが必要だが、印象です。それほど世界のAIに対する投資はアグレッシブで、覇権争いを勝ち抜こうとする勢いは強烈なのです」と須藤教授は指摘する。
日本がAI開発で後れを取っているのは、その利活用の仕方が海外に比べて保守的であることも背景にありそうだ。
「生成AIの普及とともに、社内業務の効率化や、簡単な情報収集などに利用する日本の企業は着実に増えてきました。しかし、AIを使って新しいサービスを開発したり、ビジネスモデルを大きく変えようとしたりする動きはあまり見られず、それが国内のAI開発を遅らせている要因の一つになっていると考えられます」
そう語るのは、PwC Japan有限責任監査法人のパートナーで、同法人のAI監査研究所の所長を務める伊藤公一氏だ。
伊藤 公一
PwC Japanグループが実施した国際サーベイ※1でも、例えば米国企業は新サービスの開発や収益拡大のためにAIを活用する傾向が強いのに対し、日本企業は社内業務の効率化などに活用範囲が限定されがちであることが明らかになっている。
「必要は発明の母」と言われるように、新しい技術やサービスが生まれるためには、人々がその必要性を強く感じる必要がある。しかし、日本は必ずしもニーズがないわけではない。むしろ、新しい技術に対して保守的な姿勢が根強く、それがイノベーション、とくにAI分野において「AI後進国」と呼ばれる現状を生み出していると思われる。
※1 参考文献:PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2024 春 米国との比較」
また、近年の世界情勢や気候変動などの問題は年々増加、深刻化しており、世界の「地政学リスク」は急速な高まりを見せている。AIを巡る各国の覇権争いについても、「地政学に基づく考察が必要だ」と須藤教授は語る。
「例えば、AIの利活用が進むにつれ、そのアウトプットの確からしさや信頼性をどうやって担保するのか?という『AIガバナンス』の議論が世界中で巻き起こっています。米国や欧州の動きを見ると、という声が強まりつつあるのです。そうした動きをいかにキャッチアップするかということも、日本がAI領域でプレゼンスを発揮するための重要な取り組みとなるでしょう」(須藤教授)
日本企業向けに地政学リスクマネジメント対応支援※2を行ってPwC Japan有限責任監査法人も、AIガバナンスは「地政学リスク回避の観点から取り組むべきだ」と提言する。
「あらゆるビジネスがグローバルサプライチェーンで成り立っている今日、1つのサプライヤーが利用するAIやその使い方への信頼性が揺らぐと、ビジネス全体が致命的な打撃を受けてしまう恐れがあります。AIガバナンスの強化に向けては、国ごと、企業ごとなどの取り組みがありますが、企業レベルにおいても地政学リスク回避の観点から対策に臨まないと、本質的な課題解決にはたどり着けないと考えます」
そう語るのは、PwC Japan有限責任監査法人の執行役 パートナーで、トラストサービス開発推進部に所属する宮村和谷氏だ。
宮村 和谷
では、国レベルにおけるAIガバナンス強化の枠組みは、どう形成すればいいのか。
須藤教授が提唱するのは、国や企業だけでなく、市民や専門家など、あらゆる当事者がガバナンスの策定に参画する「マルチステークホルダーモデル」の採用だ。
「AIは、作り手であっても勝手に進化を遂げていく中身を把握し切れない“ブラックボックス”なので、企業だけが説明責任を負うことには限界があります。使い手である消費者や、その消費者を育てる教育者、ルール作りを助言する法学者など、あらゆるステークホルダーがAIガバナンス強化のための責任を共有し、一緒に創り上げていく必要があると考えています」(須藤教授)
※2:PwC Japanグループ「地政学リスクマネジメント対応支援」
マルチステークホルダーモデルの中で、「重要な役割の一つを担う」と須藤教授が考えるのが、監査人である。
なぜなら、AIガバナンスは、AIの進化や利活用の促進とともにアップデートされ続けるものだからだ。
「進化を促しながら、その過程で新たに生まれてきた問題をつぶしていくのが、利活用とガバナンスを両輪で向上させる理想のプロセスなのです。マルチステークホルダーモデルは、このプロセスを回す効果的な枠組みなのですが、次々と生まれる新たな問題を見つけ出すには、モニタリングと評価の機能が不可欠。その役割を果たすのが監査ではないでしょうか」(須藤教授)
その役割を深く認識し、早くから国への提言や企業向けAIを行ってきたのがPwC Japan有限責任監査法人だ。
前者は、企業がビジネスで利活用しているAIするものだ。
「クライアント企業のみならず、サプライチェーン全体におけるAIの利用状況をモニタリングし、取引先が適切なリスク対応を行っているかどうかをします」と宮村氏は説明する。
「例えば、クライアントがAIモデルを作るといった場合に、それを開発する会社が入ってきますし、開発のためにはデータが必要になります。その際、開発を担う会社はどういったAIモデルを組み合わせて開発を行うのか、また、そのデータ元はどこでどのように取り寄せられたものなのか、といった、AIに係るサプライチェーン全体のニーズが高まってきており、私たちもそれに対応するサービスの提供をています」(宮村氏)
「Audit for AI」において宮村氏が強調するのは、「PwC Japanグループ全体のケーパビリティを総動員して、多面的な角度の知見や専門性に基づくAIが行える点」だ。
「対象の業種やビジネスモデルなどに応じて、各部署からそれぞれの専門家をアサインします。倫理面や制度面など、AIガバナンスの確認項目は多岐にわたりますが、360度の視野から問題の発見と評価を行うことができます。監査法人だけでなく、PwCコンサルティングなどの専門家に入ってもらうこともあります」(宮村氏)
一方、後者の「Audit with AI」とは、これまで同法人が行ってきた会計監査にAIを活用し、より高度なサービスを提供するものである。
「AIを使うことで大量の財務データを自動分析できるだけでなく、人間では気付かないような異常パターンや、不正の兆候なども検知できるようになります。監査の精度が上がり、 会計士の業務負荷が軽減されることで、被監査会社とのディスカッションといった、より価値の高い業務に注力できるメリットがあります」と伊藤氏は語る。
さらに、同法人ではAI監査に注力すべく、各方面から専門家を集いAI監査の専門組織を発足。その所長を務めるのも伊藤氏だ。
「監査のデジタル化や、中長期的な計画に基づく研究開発に取り組んでいます。外部からデータサイエンティストをはじめとするエンジニアを採用し、監査のプロとテクノロジーのプロが一緒になって、AIを使った新しい監査の方法を生み出し続けているのです」(伊藤氏)
この他、PwC Japan有限責任監査法人は、国や各業界によるAIガバナンスのガイドライン作りにも深く関わっている。そういった高い知見、経験値のみならず、AI先進諸国にも広がるPwCグローバルネットワークとの連携も、企業のAI監査やガバナンス体制づくりの支援に役立っているようだ。
こうした取り組みは、卓越した監査業務を通じて、世界中のあらゆる領域で広がるトラストギャップを埋めていくというPwC Japan有限責任監査法人の使命の延長線上にある。
須藤教授は、「マルチステークホルダーモデルによる当事者同士の相互信頼と共創的なガバナンス体制の構築こそが、不確実性の高いAX時代のトラストギャップを埋めるカギを握ると考えます。PwC Japan有限責任監査法人には、その枠組みにおける重要な役割を担ってもらいたい。大いに期待しています」と語った。
宮村氏、伊藤氏も、最後にこう締めくくった。
「まずはPwCがAIを駆使した監査を実施します。そして企業が利用しているAIの信頼の構築にも取り組んでいくことになるでしょう。PwCはこれらを通じてAIのノウハウを蓄積し、企業のAI利活用を支援できる存在を目指します。AIの進化は目覚ましく、社会に大きな変化をもたらしていますが、同時に新たなリスクや不安も生まれている中で、PwCがトラストギャップを解消し、企業と社会の健全な発展に貢献していきます」(伊藤氏)
「AX(AIによる変革)の領域におけるトラストギャップはサプライチェーン全体に及びます。そのため、単に個別のクライアントにサービスを提供するということだけではなく、業界そのものやマーケットの仕組み・基準の、“ものさし作り”となるところから積極的に関与していく必要があるということを常々感じています。そういった全体の仕組みの中で、今後も積極的に準備を進め、世界にトラストを付与する存在を目指していきます」(宮村氏)
今日も世界中で繰り広げられているトランスフォーメーション(X)。あらゆる領域で進むXだが、それによりトラストギャップも拡大し続けている。PwCJapan有限責任監査法人は、トラストの探求を続けることで、パブリックインタレストへの貢献を目指し続ける。
2025年1月21日に米国トランプ大統領が発令した「違法な差別の根絶と実力主義の機会の回復」と題する大統領令第14173号の内容と、その域外適用の試みについて概説します。
2025年6月19日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、2025年6月補足文書(以下、「補足文書」という)を公表しました。
AIが急速に普及する中、利活用を促すためのAIガバナンスをいかに構築すべきでしょうか。中央大学の須藤修教授に、会計監査におけるAI活用やAIガバナンスの構築支援に取り組むPwC Japan有限責任監査法人の宮村和谷、伊藤公一が聞きました。
現在のビジネス環境は、消費者ニーズの多様化やグローバル競争の激化に加え、気候変動や地政学的リスクなどの外部環境の急速な変化が企業の事業ポートフォリオに影響を与えており、予測の不確実性を前提にした柔軟な対応策が不可欠です。その対策として、KPI管理の高度化に向けた取り組みについて解説します。
Download PDF -
PwC Japan有限責任監査法人は6月25日(水)より、表題のセミナーをオンデマンド配信します。
Download PDF -
PwC Japan有限責任監査法人は6月18日(水)より、表題のセミナーをオンデマンド配信します。
Download PDF -
PwC Japan有限責任監査法人は、2025年3月6日(火)に開催した本セミナー を、3月27日(木)よりオンデマンドで配信開始します。
Download PDF -
PwCコンサルティング合同会社は3月10日(月)より、表題のセミナーをオンデマンド配信します。セミナーの最後に無償トライアルのご案内があります。