トップランナーと語る未来 第16回 東京大学大学院 関屋裕希氏

モチベーションの科学から考えるキャリアウェルビーイング――「やる気を出せ」はもう古い?

  • 2026-09-02

変化が激しく、不確実性が高まる現代において、企業では社員一人ひとりが自ら考え、選び、行動する「キャリア自律」がこれまで以上に求められています。一方で、現場では「主体的に動いてほしい」「自律的に働いてほしい」という期待が高まるほど、「そもそもやる気とは何か」「どうすれば自分やチームのモチベーションを高められるのか」という問いも深まっています。

第16回は、東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員の関屋裕希氏を迎え、PwCコンサルティング合同会社の三城雄児、上野菫とともに、モチベーションの科学から考えるキャリアウェルビーイングについて議論しました。

参加者

東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員
関屋 裕希氏

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
三城 雄児

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト
上野 菫

※対談者の肩書、所属法人などは掲載当時のものです。本文中敬称略。

(左から)上野 菫、三城 雄児、関屋 裕希氏

キャリア自律が求められる背景

上野:
本日のテーマは「モチベーションの科学から考えるキャリアウェルビーイング」です。

最近、組織変革の現場では、「主体的に動いてほしい」「自律的に働いてほしい」「キャリアを自ら切り開いてほしい」といった声をよく耳にします。一方で、当事者側では「主体的に動くとはどういうことなのか」「やる気は出したいけれど、やり方が分からない」といった悩みも少なくありません。本日は、モチベーションの観点から、自分自身のやる気の出し方、そして、チームとしてのモチベーションの高め方のヒントを紐解いていきたいと思います。

関屋:
東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座で研究員をしている関屋裕希です。私は大学時代から心理学を学び、学生時代はマインドフルネス、大学院では感情の研究をしてきました。現在は、働く人のメンタルヘルス、とりわけ不調予防やポジティブメンタルヘルス、ワークエンゲージメントをどう高めるかに関心を持って研究しています。そうした背景から、自分や周囲のモチベーションとどう付き合えばよいかをまとめた「モチベーションの問題地図」も執筆しています。本日はよろしくお願いいたします。

三城:
PwCコンサルティングで組織人事コンサルティングと人材開発の責任者を担っている三城雄児です。私は自分のことを「人と組織の治療家」と呼んでいます。大学時代から一貫して「人と組織」というテーマを学び、現場で実践してきました。今日は、組織や人を少し広い視点から見ながら議論できればと思います。

上野:
キャリアデザインワークショップの設計・展開に携わっております上野菫です。

今回このテーマを取り上げたのは、モチベーションが経営において重要なテーマになっているからです。その背景には、人的資本経営があります。今、多くの企業が「人をコストではなく資本として捉える」方向へ舵を切る中で、一人ひとりの価値を最大化することが重要になっています。

ただ、その実践段階には難しさもあります。正解が見えにくい時代になり、会社が一律にキャリアの道筋を示すことが難しくなっている。だからこそ、個人が自分で考え、自分で選び、自分で動く「キャリア自律」が重視されています。

PwCコンサルティングでも、キャリア自律を重要な経営テーマと位置付けています。最高人事責任者(CHRO)のリードのもとでキャリアウェルビーイングの取り組みを進めており、その1丁目1番地としてウェルビーイングに基づくキャリアデザインワークショップを展開しています。

従来のキャリアデザインでは、5年後、10年後の理想像を描き、そこに向かうキャリアパスを設計する考え方が主流でした。しかし、今は未来の確実性が低く、描いた道筋がそのまま存在する保証はありません。だからこそ、これからは「道」を描くのではなく、不確実な環境の中でも、自分がどちらへ進むべきかを示してくれる「コンパス」を見つけることが重要だと考えています。

クライアントに向けたキャリアデザインワークショップでも、この「コンパス」を見つけることを重視しており、その中核にあるのが「内発的動機を感性で感じ取る」というステップです。自分が何を大切にしているのか、何にモチベーションを感じるのか、仕事のやりがいは何か――そうした問いを通じて、自分自身の内面を振り返ってもらっています。

その時、クライアントからよく寄せられるのが、「自分のモチベーションをどう高めればよいか分からない」「チームのモチベーションをどう高めればよいか分からない」という2つの悩みです。まずはその前提として、モチベーションとは何かをお聞きしたいと思います。

モチベーションは「ある・ない」ではなく、段階で捉える

関屋:
モチベーションは日常では「やる気」と表現されることが多いですが、心理学では「行動に向かうプロセス」と定義されます。つまり、行動の原動力になるものです。

ここで大事なのは、モチベーションを「ある・ない」の二択で捉えないことです。私たちはつい、「あの人はモチベーションがある」「あの人はモチベーションがない」と言ってしまいがちですが、実際にはもっと段階があります(図表)。

図表:モチベーションの4つの種類

モチベーションの4つの 種類

関屋 裕希『モチベーションの問題地図』(技術評論社)より引用

右から左に向かうほど、動機が内在化していくプロセスになっています。右側は他律的、左側に行くほど自律的です。

まず、「やる気がない」「そもそも動機付けがない」状態があります。

その次に、「仕方なくやる」という状態があります。これはさらに、報酬や罰のためにやる段階と、世間体のためにやる段階に分けられます。

その先に、「大切だからやる」という段階があります。自分にとって意味がある、自分らしさを発揮できる、キャリアに沿っているからやる、という状態です。

そして最後に、「楽しいからやる」「面白いからやる」という内発的動機付けの段階があります。行為そのものがご褒美になっている状態です。言ってみれば、「無人島にいてもやり続けるだろうな」と思えるような水準です。

ですから、モチベーションは「あるか、ないか」ではなく、「今、どの段階にあるのか」と見た方が実態に近いのです。

「自律しろ」が他律になってしまう組織の矛盾

三城:
このモチベーションの段階の話は、現代の企業のキャリア自律の議論にとても必要だと思います。企業では今、「キャリア自律」が経営テーマになっています。経営者が「もっと社員が自律的に働くように」と求め、「自律してほしい」と言った瞬間、その裏には「今のお前は自律していない」という評価が含まれてしまうことがある。言っている側にそのつもりがなくても、受け手にはそう伝わることがあります。さらに、「自律させなきゃ」と言っている人たち自身が、どこか他律的になっているようにも見えるのです。

この図のように、自律にも段階があると分かるだけで、対話の質は大きく変わると思います。こうした分類には、心理学的な背景があるのでしょうか。

関屋:
そうですね。背景には、エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論」があります。私も、「自律してほしい、でも会社の期待には応えながらね」という語られ方には違和感があります。条件付きの自律になってしまっていて、「そもそも自律って何だっけ」という問いが置き去りになりがちです。

東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員 関屋 裕希氏

企業がキャリア自律を進める難しさ

三城:
企業や社会は、もともと他律でできています。教育もそうですし、会社の仕組みもそうです。「やらなければいけない」「期待に応えなければいけない」という前提でできている。そんな中で急に「内発的動機を大事にしよう」と言われても、現場は戸惑います。

実際、「内発的動機を重視すると、みんな好きなことしかやらなくなって、会社が回らなくなるのではないか」と言われることもあります。

だから私は、外発的動機か内発的動機かの二者択一ではなく、「ハイブリッドエンジン」で考えるようにしています。外発的動機も必要です。ただ、その比率を見直して、内発的動機の割合を増やしていくことが、これからの時代には必要なのではないか、と。

関屋:
その表現はとても分かりやすいと思います。仕事のすべてを100%内発的動機だけで回すのは現実的ではありません。行動そのものが楽しいと感じられる割合が一定あればよいのであって、自分にとって大事だからやる、社会的な意味を感じられるからやるといった動機も、十分に大切です。外発も内発も両方あるのが自然なのです。

三城:
二者択一ではなく、グラデーションで捉えるということですよね。今やっている仕事の中に、報酬のための部分もあれば、自分らしさを発揮できる部分もある。そうやって割合で捉えるだけでも、自分の状態が見えやすくなると思います。

内発的動機と大義は対立しない

上野:
クライアントと話していると、「内発的動機が高い人が増えると、好きなことしかやらなくなるのではないか」「チームに自分本位な人が増えてしまうのではないか」という懸念をよく聞きます。この点はどう考えればよいでしょうか。

関屋:
よく聞かれる質問です。自己決定理論は4段階で語られることが多いのですが、私は個人的にはその先があるのではないかと思っています。

つまり、「楽しいからやる」「面白いからやる」という内発的動機を十分に味わった先に、それがもっと大きな社会的意義と結び付くフェーズがあるのではないか、ということです。自分が面白いからやっているのだけれど、そのエネルギーを社会を良くするために使いたい、構造を変えるために使いたい、という状態です。

その段階に入ると、とても強いです。

三城:
実務でも、内発的動機で動いている人はエネルギーがあるし、人を巻き込む力がある。やりたいからやっている人の熱量は、周囲にも伝わりますし、結果的に大義につながっていくことも多いと感じます。やらされている状態から、いきなり社会的貢献につながるわけではなくて、まず自分が本当にやりたいこととつながることが重要です。

昔、世界中の人事・リーダーシップの専門家が集まる場で、オーセンティックリーダーシップについての講演を聞いたことがあります。講演者は、たった1枚のスライドに「Saying=Doing」とだけ書いていました。言っていることとやっていることが一致していれば、人はついてくる、と。

でも、今日の話を聞いて思うのは、内発的動機で動いている人は、さらにその先の「Being」まで一致していますよね。言っていること、やっていること、その人の在り方が全部一致している。だからエネルギーがあるし、応援したくなる。

関屋:
まさにそうだと思います。私も以前、「Saying」と「Doing」が一致している上司のもとでは、部下のワークエンゲージメントが高まりやすいという研究をしたことがあります。そこに「Being」が加わって、一貫していることのインパクトはさらに大きいと思いますし、それはリーダーシップそのものだと感じます。

三城:
東洋医学では、頭と心と腹の3つが一致していることが健全な状態だと考えます。頭では「やりたい」と言っているけれど、心では「やりたくない」と思い、身体も無理をしている。そういう不一致の状態は、やがて体にも負荷がかかります。

逆に、「やりたくない」という気持ちがあることをちゃんと認識して、「やりたくないけれど、今日は仕方ないからやる」と言えるほうが、まだ健全です。だから、キャリア自律やモチベーションを考えるときも、「自分は本当はどう感じているのか」を見失わないことが大事なのだと思います。

内発的動機をどう見つけるか

上野:
ここまでの話を聞いて、「内発的動機が大事なのは分かった。でも、自分の内発的動機が何なのか分からない」という悩みを持つ人が多いと改めて感じます。報酬や評価のために動くことに慣れている人ほど、自分のエネルギー源を見つけるのは簡単ではありません。こうした悩みに対しては、どのようなアドバイスがありますか。

関屋:
ここで紹介したいのは、心理学でいう「行動実験」という考え方です。私たちは教育や社会を通じて、いろいろな価値観を取り込んできています。だから、「自分の内側を探ってみて」と言われても、ピンとこないことが少なくありません。

そんなときは、まず小さく行動してみる。それで自分がどう感じたかを観察する。その順番がおすすめです。

例えば、「自分はピーマンが苦手だ」と思い込んでいる人がいるとします。その人はピーマンの入った料理をそもそも選びません。でも、たまたま出されたピーマン料理を食べてみたらおいしかった、ということがあります。そうすると、「自分はピーマンが食べられない」という思い込みが変わる。

内発的動機も同じで、分からないなら、まずやってみる。やってみて、どう感じたかを観察する。その繰り返しが、自分の源泉を見つける助けになります。

三城:
ピーマンの例はとても分かりやすいですね。その人は、そもそも人生の中で「ピーマンを食べる」という選択肢を持っていなかった。でも、それを試しにやってみたことで、世界が広がる。

キャリアデザインでも同じで、「やりたいことが見えない」という人は、世界そのものが狭くなっているのかもしれません。だから、まず行動してみることが、自分の見ている世界を広げることにつながるのだと思います。

関屋:
そうですね。しかも「実験」と考えると、うまくいっても、いかなくても、どちらもヒントになります。成功しなければならないというプレッシャーが少し和らぐのです。

もう一つ言うと、「内発的動機は、まだ出会っていない未知の何かの中にある」と思い込む必要もありません。実は、すでに見えているのに、自分で見えていないだけということも多い。

そういうときには、小さい頃に好きだったこと、無心でやっていたことを思い出してみるのも有効です。まだ他律に深く巻き込まれる前の自分が、何に夢中になっていたのか。その中にヒントが隠れていることがあります。

例えば、「虫取りが好きだった」といっても、その楽しさの中身は人によって違います。捕まえる行為が好きだったのか、コレクションするのが好きだったのか、美しく並べるのが好きだったのか、人に見せるのが好きだったのか。それぞれ違うのです。

だから、「何をしていたか」だけでなく、「何が面白かったのか」を見ていくと、自分らしい楽しさの質感が見えてきます。

三城:
頭で分析すると分からなくなりますよね。私自身、小さい頃は公園で穴を掘って、水を流して、それを何時間もやっていました。でも、何が楽しかったのかはうまく説明できない。ただ、そのときの身体感覚は残っています。

だから、「何をしていたか」だけでなく、「そのときどんな感覚だったか」に寄り添うことが大事なのだと思います。言語化できないものも、十分に内発的動機を探るヒントになると思います。

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 三城 雄児

行動がモチベーションを引き出す

関屋:
もう一つ、よく誤解されるのが、「モチベーションがあるから行動できる」という順番です。確かにそういうこともありますが、逆もあります。行動することで、あとからやる気が湧いてくることもあります。

例えば、走りに行きたいけれど面倒だと思っているときに、とりあえず靴だけ履く。すると、少し行ってみようかな、となる。10メートルだけ走ってみると、意外ともう少し走れる気がする。こうして、動くことでモチベーションが引き出されることがあります。

三城:
やる気があるから動くというより、動いたからやる気が出てくるという感覚は、すごくありますね。

関屋:
「小さく」がポイントです。どうしても私たちは、「ちゃんとやらなきゃ」と思いがちですが、とりあえず靴だけ、とりあえず一歩だけ、くらいのサイズ感で始めるほうが動きやすいのです。

上野:
「自分の内発的動機を見つける」というと、転職や大きなキャリアチェンジのような話だと誤解されがちですが、実際には、もっと小さな日常の行動の中にヒントがあるということですね。

関屋:
そうですね。モチベーションは、頭の中だけで見つけようとするより、小さく動きながら確かめていくほうが見えやすいことがあります。まずは小さく試してみることが大切なのだと思います。

三城:
キャリア自律というと大きな話に聞こえますが、実はそういう小さな行動の積み重ねの中に、自分らしいコンパスが見えてくるのかもしれませんね。

チームのモチベーションを高めたいとき、まず見るべきは誰か

上野:
個人のモチベーションに続いて、よく管理職の方が悩んでいるのが「チームのモチベーションをどう高めるか」です。1on1もしている。コーチングも学んでいる。心理的安全性にも気を配っている。それでも、チームが自律的に動かない。そう感じているマネージャーは少なくありません。

三城:
よく受ける相談ですし、私自身もかつて同じことで苦しみました。コーチングも学んだし、一人ひとりとの面談もしました。目標設定の仕方も工夫した。組織人事の専門家として、いろいろなHow toを実践したのです。

でも、うまくいかなかった。自分が経営していた会社でも、なぜか人が自律的に動かないという体験をしました。結果として、会社が潰れかけて、大きな負債も抱えました。

そのときに気付いたのは、「チームのモチベーションを高めなきゃ」と思っている自分自身のことを、全く見ていなかったということです。

「変えなきゃ」を手放したときに起こる変化

三城:
「チームのモチベーションを高めなきゃ」と言っている人は、たいてい善意からです。愛情もあるし、責任感もある。私もそうでした。でも、その姿勢そのものが、相手には「今の自分は足りていない」「もっとやる気を出してほしいと思われている」という圧力として伝わることがあります。

口にしなくても、無意識に感じていることは伝わります。1on1で寄り添っていても、心の中で「この人たちが動いてくれないと困る」と思っていたら、その感覚はにじみ出るのです。

だから、こういう相談を受けたとき、私は「あなた自身は、その状況を前にして何を感じていますか」と尋ねたくなります。

関屋:
とても大事な視点だと思います。相手を変えようとする前に、自分がどんな状態にあるのかを見る必要がありますよね。

三城:
私はあるとき、「考えない・判断しない・行動しない。ただ感じろ」と言われて、半信半疑でやってみたことがあります。会議で、何かを評価したり、方向付けたりするのをやめて、ぼーっとしてみたのです。

何日か続けるうちに、初めて「みんな疲れているね」と言えた瞬間がありました。それまでは、何とかしなきゃと思っている自分自身がずっと泥沼でもがいていた。そのため、私は自分や周囲の疲れに気付けず、苦しさをなかったことにしていました。だからこそ、そこをきちんと見ることが出発点になりました。

すると、驚くことに、メンバーが急に積極的に話し始めた。会社の空気が少しずつ変わったのです。

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 上野 菫

アクセプタンスが変化の起点になる

関屋:
それはまさに「アクセプタンス」だと思います。心理学では、今の状態をありのまま受け入れる姿勢をアクセプタンスと呼びます。

私はよく、底なし沼の例えを使います。沼に落ちたとき、多くの人はもがいて出ようとします。でも、それをすると余計に沈んでしまう。一番沈まない方法は、両手を広げて、沼にべたっと張りつくことです。

つまり、「この状況を何とかしなきゃ」ともがくのではなく、まず今の状況をそのまま受け止める。三城さんが会議でやったのは、まさにそれだったのだと思います。

三城:
実際、そのときは何もしないのがすごく怖かったです。経営者やマネージャーは、考えなきゃいけない、判断しなきゃいけない、何かアクションしなきゃいけないと常に思っていますから。

関屋:
大事なのは、アクセプタンスは「何も考えない人になる」ことではないという点です。まずはいったん、今起きていることを変えようとせずに見る。そのことで、ようやく本当に必要な反応や行動が見えてきます。

自分へのアクセプタンスが、他者へのまなざしを変える

関屋:
今日の話を聞いて、「相手を変えようとしてはいけないのか」とか、「考えないようにしなければいけないのか」と思ってしまう方もいるかもしれません。でも、それもまた新しい評価や判断になってしまいます。

だからこそ、自分に対してもアクセプタンスの姿勢でいてほしいです。「変えようとしてしまう自分がいるな」くらいのトーンで見ていくことが大事です。

三城:
私はそれを、「自分を『よしよし』してあげる」と表現しています。私たちは反省エンジンで動きがちです。「もっと改善しなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」と、自分を攻撃している。その攻撃性は、どうしても他人にも向かってしまう。

だから、まず自分に寄り添う。セルフコンパッションという言葉もありますが、自分に「よしよし」としてあげる感覚が必要なのだと思います。

キャリアウェルビーイングをどう位置付けるか

三城:
PwCコンサルティングでは、キャリアウェルビーイングを掲げて「Be well, work well」という取り組みを進めています。私はこれを、日本の雇用の課題そのものだと思っていますし、もっと大きく言えば、人類のこれからの進化のテーマだとさえ思っています。

本来、私たちは幸せになるために働いていたはずです。しかし、資本主義が進み過ぎる中で、働くことが疲弊やストレスの源になってしまった。だから今、働くことの意味そのものに立ち返る必要があるのではないかと思うのです。

ウェルビーイングは福利厚生でも自己啓発でもありません。経営が変わっていくためのテーマです。「なぜ働くのか」「何のために同じ場に集っているのか」という問いに向き合うことでもあると思います。

私は心理学の言葉で好きなものがあります。「本当の変容は、自分に帰ること」。組織でいえば、それは本来の目的に帰ることでもあるでしょう。キャリア自律やモチベーションを大事にするというのは、その原点回帰にもつながっているのだと思います。

「ありのままでいい」と感じられたとき、人は変わる力を持つ

関屋:
今日の話は、DoingではなくBeingの話でもあったと思います。人は、他者から「今のままでいいよ」「ありのままでいいよ」と心の底から感じられたときに、初めて変化のエネルギーが湧いてくる生き物だと思うのです。

だから、キャリアウェルビーイングという言葉の中には、「どう働くか」だけでなく、「どう在るか」が含まれているのだと感じます。

人は、他の人から「今のままでいいよ」「ありのままでいいよ」と感じられたときに、変化のエネルギーが湧いてくる生き物だと思います。今日の話は、DoingだけでなくBeingをどう捉えるか、ということにもつながっていたのではないでしょうか。

主要メンバー

三城 雄児

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

上野 菫

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

Email

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