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サステナビリティ対策が重要な経営課題となる一方で、企業としての収益性確保とのトレードオフに悩む経営者は少なくありません。企業はいかに両者のバランスを取って持続的成長を実現すべきなのか。『サステナビリティ新時代 成果を生み出すホリスティック×システミックアプローチ』(ダイヤモンド社)を2025年7月に刊行したPwC Japanグループの執筆者3人が、変革の具体的方法論を語ります。
(左から)中村 良佑、齊藤 三希子、中島 崇文
対談者
PwCコンサルティング 執行役員 パートナー
中島 崇文
PwCコンサルティング ディレクター
齊藤 三希子
PwC Japan有限責任監査法人 サステナビリティ・アドバイザリー部 ディレクター
公認会計士/サステナビリティ情報審査人
中村 良佑
※本稿はDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューに2025年10月に掲載された記事を転載したものです。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
――ここ数年、日本企業でもサステナビリティの取り組みが進んでいます。しかし最近、米国のパリ協定離脱通告をはじめとして、そうした流れに逆行する動きが目立っています。サステナビリティをめぐる昨今の状況をどう捉えていますか。
中島:
パリ協定採択から10年が経過した現在、サステナビリティは転換期にあると見ています。その間、脱炭素や気候変動に対応するさまざまな社会的な取り組みが進み、枠組みや法制度の整備も大きく進展しました。
2024年、そうした動きが欧州の産業競争力を低下させる可能性を指摘した「ドラギレポート」が発表され、くすぶり続けていたサステナビリティへの懸念が表面化しました。米国のパリ協定離脱通告に関しては、欧州基点の枠組みが「エネルギー資源国米国」にとってベストではないと、トランプ政権が判断したのだと理解しています。
PwCコンサルティング パートナー 中島 崇文
とはいえ、取り組みが遅れれば、企業は将来的なコスト増に直面します。その意味では、ただ理想を追うのでなく、具体的かつ実践的な取り組みが求められる時代になってきたというのが、より的確な現状認識だと思います。サステナビリティの実現というベクトルは、今後も変わらないでしょう。
――環境・社会の持続可能性を実現しながら、企業が長期的に成長していくには、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)が必要と御社は提唱されています。SXとは、どのようなものなのでしょうか。
中島:
SXは、経済価値と社会・環境価値を両立させながら変革を進め、双方の持続的成長を目指す取り組みです。たとえば、企業の温室効果ガス排出によって環境が悪化すると、めぐりめぐって企業運営にネガティブなインパクトを及ぼします。気候変動による豪雨で工場が水没する、といったケースです。そうした事態を避けるための取り組みがSXであり、そこには必ず経済合理性がなければなりません。
――サステナビリティの取り組みを進めるうえでは、経済合理性や競争力強化とのトレードオフが発生しがちです。この問題を解決するために、御社では「ホリスティックアプローチ」と「システミックアプローチ」を提唱されています。まずホリスティックアプローチとは、どのような考え方なのでしょうか。
齊藤:
昨今、サステナビリティは環境課題や社会課題、さらには地政学リスクなどが複雑に絡み合い、アジェンダ別に切り分けて議論することが極めて困難な状態にあります。企業はサステナビリティを個別最適ではなく全体最適として捉える、すなわちホリスティックに考えることが求められています。
こうした流れを受け、サステナビリティの課題を総合的に評価する方法論としてPwCが概念化したのが、ホリスティックアプローチです。課題間におけるトレードオン/トレードオフを可視化・評価したうえで、施策ポートフォリオを見直して全体を最適化する方法のことを指します。
PwCコンサルティング ディレクター 齊藤 三希子
それらの総合評価を簡易的に行うためのサービスも開発中です。本サービスでは「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」「ウェルネス」の4つを軸としたレーダーチャートにより、各指標の負荷や効果を算出・可視化して総合評価します。競合との比較、あるいは複数の施策の優位性の比較ができ、サプライチェーン全体の総合評価が可能です。各社が取り組んでいるサステナビリティ施策の価値を貨幣価値換算することにも対応する予定です(図表1)。
図表1:ホリスティックアプローチのアウトプットイメージ
(PwC作成)
――ホリスティックアプローチを推進している具体的な事例はありますか。
齊藤:
大林組の事例があります。同社はサステナビリティの観点から建物の木造・木質化を推進していますが、コスト増による高価格化をいかに顧客に受け入れてもらうかという課題を抱えていました。そこで、本サービスの建築物でのPoC(概念実証)として建物単位で評価し、サステナビリティ対応の価値の可視化の検討を共同で行いました。この評価手法を成熟させ、いずれはさまざまな設計案や構工法の比較評価を含め、顧客の納得感を引き出すための営業ツールとして活用されたいとのことです。
――ホリスティックアプローチを実現していくうえで、PwC Japanグループはどのような役割を担っていくのでしょうか。
齊藤:
ホリスティックアプローチの分析結果を活用しながら、サステナビリティ経営の戦略立案やサプライチェーン変革、施策ポートフォリオの全体最適化など、ホリスティックな視点からさまざまな形でSXを支援していけたらと考えています。
――一方のシステミックアプローチは、どのような考え方でしょうか。
中島:
一言で言えば「エコシステムの全体最適化」です。システミックアプローチでは、まずエコシステムの構造を明らかにし、変革の阻害要因のうち最も介入効果が高い「レバレッジポイント」を特定します。そこに多様なプレーヤーがテクノロジー、ファイナンス、ルールメイクといった観点から協調的・同時多発的に介入し、エコシステム全体の加速度的な成長を促していきます(図表2)。
図表2:システミックアプローチの方法論
(PwC作成)
たとえば、自動車産業がサーキュラーエコノミーへの転換を図ろうとすると、自動車は最終的に輸出されることが多いため、リサイクル材不足という課題に直面します。それがプラスチックだった場合、食品産業と連携することにより、包装パックやトレーを2次資源として活用できます。業界をまたいだエコシステムの変革によって、自動車産業のみならず食品産業の課題も同時に解決できるというわけです。
――システミックアプローチの具体的な事例はありますか。
中島:
当社が関与している事例ではありませんが、気候変動関連のビジネスやテクノロジーを投資対象にしているファンドの事例があります。そのファンドは、脱炭素に必要な革新的技術を開発するスタートアップへの投資に加え、当該技術のビジネス化支援、需要家の確保、長期にわたる投資と回収を担保する「オフテイク契約」の締結、さらには必要な議論のファシリテーションまで行っています。ファンド単体で動くのではなく、プロジェクトに関心のある事業会社や政府と連携し、ビジネス規模の拡大を図っている点がポイントです。
洋上風力発電開発の事例では、開発用地の確保に向けて、地域住民をエコシステムに組み込んで解決を図ったものがあります。発電による利益が住民にも還元されるよう、共同出資・共同利益の関係を構築することで、住民との対立関係をパートナーシップへ変革し、開発を推進しました。これは直接的に取引のないステークホルダーを新しいスキームでエコシステムに取り込んだ例です。
――システミックアプローチを実現していくうえで、PwC Japanグループはどのような役割を担っていくのでしょうか。
中島:
システミックな取り組みそのものは、実はこれまでも実践されてきました。しかし結果的にそうなっただけで、再現性がなかったのです。その意味で、私たちがシステミックアプローチを形式化できたことには、大きな意義があると思っています。現状、勉強会などを通じて普及に努めている段階ですが、ゆくゆくは「エコシステム開発プラットフォーマー」として企業の変革をサポートしていきたいと考えています。
――サステナビリティへの取り組みに関しては、情報開示に頭を悩ませている企業も多いかと思います。サステナビリティ関連の情報開示は、どのようにあるべきだとお考えでしょうか。
中村:
情報開示はそもそも、読み手の意思決定に影響する情報、言い換えると、マテリアル(重要)な情報を提供することが目的です。わかりやすく言えば、適切な意思決定をしたいというステークホルダーの「期待」に応えることにほかなりません。
PwC Japan有限責任監査法人 ディレクター 中村 良佑
サステナビリティ情報の開示については、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が策定した基準がグローバルスタンダードになりつつあります。しかしこの基準は原則主義であり、細かい開示項目については企業の判断に委ねられています。したがって、企業としては1on1、学術論文、他社の動向などあらゆるチャネルを通じて、投資家をはじめとするステークホルダーが何を求めているのかを見出す必要があります。
一方で、ステークホルダーから「会社としての意思」を問われた場合に備え、サステナビリティ経営の核となる「パーパス」をしっかり固めておくことも重要です。「社会のためにこれを成し遂げたい」という志がないと、情報開示が体裁を整えただけのものになりかねません。
――そうした情報開示を行ううえで、ホリスティックアプローチとシステミックアプローチはどのように役立つのでしょうか。
中村:
現状、ISSBが策定している具体的なテーマ別の基準は気候関連(IFRS S2号)だけですが、生物多様性、さらには人的資本への拡大が予定されています。これらのサステナビリティテーマ間にもトレードオフが生じうることからすれば、今後、ホリスティックな見方が求められるのは間違いないでしょう。
また、システミックな視点を持つことも不可欠です。いまや企業は自社の温室効果ガス排出量だけでなく、スコープ3と呼ばれるバリューチェーン全体の開示が求められており、上流と下流の企業に情報を提供してもらう必要があります。その際、上流・下流の企業からすれば、自社の排出量の開示が求められないとしても、それらの企業のスコープ3開示のために情報を提供する必要があり、開示の実務が積み重なるにつれて、より質の高い情報、さらには取り組みが求められることになります。つまり、求める側も求められる側も、バリューチェーン全体を意識せざるをえないのです。
開示内容は国際的に比較されるため、競争力の観点からも、システミックな視点を持ち、内容の伴った情報開示に努める必要があります。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中島:
今回発刊した『サステナビリティ新時代 成果を生み出すホリスティック×システミックアプローチ』は、サステナビリティ経営を具体的に実践するための指針となるような書です。サステナビリティに関して、今後起こりうることや取り組みのヒントを得られる内容になっています。サステナビリティ経営の羅針盤としてご活用いただけたら幸いです。
齊藤:
脱炭素の取り組みが人権やネイチャーポジティブを毀損するようなトレードオフは許されない時代です。ホリスティックアプローチで自社の環境経営戦略を見直し、環境・社会価値と経済価値を最大化する最適な戦略を見つけていただければと思います。
中村:
真の変革を起こすには、人のマインドにアプローチする必要があります。マインドを動かすのはパーパスや志に基づいた行動です。情報開示一つ取っても、単なる書類作成の作業ではなく、そのような行動やマインドの変革につなげていくことに取り組む企業が増えていくことが望ましく、本書がその一助となることを期待しています。
『サステナビリティ新時代 成果を生み出すホリスティック×システミックアプローチ』
PwC Japanグループ 著
定価:2,200円(税込み)
発行年月:2025年7月
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を取り巻く外部環境は目まぐるしく変化しており、規制の強化や新しい技術の開発などが高速で進行していることからその推進の難易度はむしろ上がっています。本書では、環境・社会・経済すべての価値を向上させるSXを実現しようとする日本企業へ方向性と方法論を提示します。
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