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仮想空間で人々が交流できるメタバース。ユーザー同士のコミュニケーションだけでなく、商品やサービスの提案、販売といった商機の可能性もあることから、保険業界や金融業界などのBtoB向けの商品開発を含め、あらゆる業界で新市場としての潜在性が注目されています。
現状、メタバースにおける各業界のBtoBへの取り組みはまだ始まったばかりであり、マネタイズに成功しているのはBtoC領域の一部新興企業に限られています。各業界の事業者は、自らの強みを活かしたビジネスを模索している段階と言えるでしょう。
メディア産業とメタバースとの関係性について考えたとき、今後メタバース空間でデジタルコンテンツ消費が一般化した際、これまではゲーム中心だったものが音楽・映像も含めたより大きな体験・消費に置き換わっていく可能性があると考えられます。この観点から見た時、メディア業界は、他業種と比較して圧倒的にメタバースの影響を受けやすく、いち早く適応する必要性が高いと考えられます。
本稿ではテレビ局やラジオ局といった放送局、出版社などのメディア業界に焦点を当て、メタバースに「人とコンテンツを結びつける機能」が備わった時にどのようなビジネス機会があるのかを、以下の5つの切り口から考えていきます。
前編
1. メタバースにおけるメディア企業のビジネス機会
2. メタバースはいつ本格化するのか
後編
3. メタバースが既存のメディア産業に与える影響
4. メディア企業がメタバース参入を検討する際に持っておくべき6つの視点
5. メタバース活用に向けた課題とメディア企業に求められるケイパビリティ
まずはメタバース市場を構成するプレイヤーを整理しましょう。現時点でのプレイヤーは主に以下の3つに分類されます。
本稿では「プラットフォーマー」「サービス・コンテンツの提供者」としてのメディア業界(企業)に着目します。現状のメタバース市場への参入事例を概観すると、市場自体が黎明期にあるということもあり、本格的なマネタイズに成功しているビジネスモデルは限られています。多くの企業が自社の提供する商品やサービスに関連するコンテンツなどを仮想空間に展開しつつありますが、プロモーションやブランディングを目的にメタバースを活用しているのが現状です。
従来、伝統的なメディア企業の多くはコンテンツの提供者であることはもとより、放送や媒体の発行など、プラットフォーマーとしての役割を同時に担い、その中で自社のブランディングとマネタイズの双方を追求してきました。今後、メディア企業がメタバース市場への参入を検討する場合、どのような立ち位置を取るべきなのでしょうか。「メタバース参入の主目的」と「プラットフォームの在り方」を軸に考えていきましょう。
メディア企業は自社でプラットフォームを構築した上でメタバースビジネスを展開すべきでしょうか(「プラットフォーマー」になるケース)。それとも、すでにサービスとして提供されているプラットフォーム上にコンテンツを展開するべきでしょうか(「サービス、コンテンツの提供者」になるケース)。それぞれのメリットとデメリットを考えていきます。
企業のメタバース参入の目的は、主に以下の2つに分類されます。
・マネタイズ
・ブランディング
メタバースは本当に普及するのか、ビジネスで活用し得るのか――。そのような疑問を持つ企業は少なくないというのが、メタバースコンサルティングサービスを展開する私たちの実感です。ただ、足元で着々と準備を進める企業が一定数いることも事実です。PwCコンサルティング合同会社は、メタバースのビジネス利用の実態と課題を探るため2022年6月に1,000社を超える企業を対象とした大規模調査の結果を公表しました。その結果、実に87%の企業が「メタバースは脅威ではなくチャンスである」と捉えていることが分かりました(その理由として最も多かったのは「新規ビジネスを創出し得るから」でした)。
また、メタバースのビジネス活用を推進している、もしくは検討している企業は38%に上り、その約半数が実現時期として1年以内を目標としていました。メタバース黎明期である2022年にあって、いずれの調査項目からも、低成長時代を打破する起爆剤としてのメタバースへの期待がうかがえました。
メタバース市場では、体験型コンテンツの提供やデジタル商品の販売といったBtoC事業が先行して始まったばかりです。今後数年かけてメタバース空間内にユーザーが定着し、同空間内でのコンテンツ消費を含む経済活動が活発化するというのが大方の見解です。一方で、メタバース空間でのイベントスペースの貸し出しや生産ラインのデジタルツインの構築といったBtoB事業の場合、事業開始から収益化までにBtoCほどの時間はかからないでしょう。そう考えられる理由の1つは、事業の立ち上がり方の差にあります。
メタバース空間で消費者にコンテンツを届けることを想定したBtoC事業では、「プラットフォーマー」であっても「サービス、コンテンツの提供者」であっても、一定数のユーザーが集まるまでは投資を行い続けるフェーズが必要です。固定のファンをつかむための期間であり、いわばブランディングのためのフェーズとも言い換えることができます。その後、サービスが一般化してようやくマネタイズのフェーズとなり、そこからは利益が拡大していくと考えられます。
アーリーアダプター層を中心とした消費者による先行活用が始まっているものの、BtoC事業では事業者のマネタイズにはある程度の時間を要します。それに対してBtoB事業では、初期先行投資は必要であるものの、比較的早期のマネタイズが可能となると考えられます。主に「プラットフォーマー」が当てはまりますが、参入してくる「サービス、コンテンツの提供者」から空間構築費や維持費を徴収できることが理由として挙げられます。
いずれにせよ、メタバースがビジネスの場として一般化するには、消費者数の拡大ならびにBtoC事業のマネタイズが欠かせません。いずれも一定程度の時間が必要であり、そこに至るまでにはメタバース空間でのコミュニケーションや課金が一般化していく「ユーザー定着フェーズ」も必要であると言えるでしょう。そして、「マネタイズフェーズ」でいかに効率よく収益化するかは、ユーザー定着フェーズでいかに消費者にメタバース空間やサービスに慣れてもらうかにかかっているとも言えます。