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2022-07-11
メタバースはテクノロジーが可能にした新しい空間です。エクステンデッドリアリティ(XR)、人工知能(AI)、ブロックチェーン……。多くのテクノロジーは以前から知られていたものですが、メタバースで応用されることでさらに普及しました。
テクノロジー無くしてメタバースは成り立たない――。そう言っても過言ではありません。今回は、メタバースを構成するテクノロジーの数々を紹介します。
メタバース空間での私たちの体験を支える中心的なテクノロジーが、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、複合現実(MR)からなるXRです。スマートフォンやゲーム機器で2次元の画像を見ながらメタバース空間を利用することもできますが、XRが作り出す3Dで構成された世界にヘッドマウントディスプレイを使って入り込むことで、私たちは異次元とも言える没入体験をすることができます。メタバースとXRが不可分のものとして扱われることが多いのはこのためです。
VR:3Dで構成された仮想空間のことをそのまま指す場合が多いです。ユーザーはアバターの姿になって、仮想空間に入ります。
AR:現実の風景に仮想世界を重ねて表示するテクノロジーを指します。例えば、キャラクターを捕獲し、収集するようなゲームへの活用が挙げられます。スマートフォンの画面越しに写る現実の風景に仮想空間のキャラクターを重ねることで、あたかも現実世界で捕まえているような感覚を得ることができます。最近は、ヘッドマウントディスプレイや眼鏡、あるいはコンタクトレンズを用いてより手軽にARを利用することも可能になっています。
MR:ARのように、現実と仮想世界を組み合わせるテクノロジーを指します。ARは現実と仮想世界の区別がつくものですが、MRはそれらがまさしく融合しています。例えば、ヘッドマウントディスプレイを使用して高層ビル群を眺めているとしましょう。目の前のビルのうち、いくつかは本物で、いくつかは現実に存在しない仮想世界のビルといったように、完成時のイメージをより具体的に湧かせるといった用途で使用されることが多いです。
以上のいずれのテクノロジーを体感する際には、ヘッドマウントディスプレイやスマートグラス、あるいはコンタクトレンズなどが付随して登場しています。こうした各種デバイス(ハードウェア)も、メタバースをより快適に利用する上での重要なテクノロジーとして注目すべきでしょう。
ハードウェアには、装着したユーザーの動きを感知してメタバース上での動きに反映する機能(モーションキャプチャ)や、装着した人に触感や温度などを伝える機能などがあります。この2つがユーザーに、より高い没入感と利便性を提供します。
ユーザーの没入感をより高める上で、ヘッドマウントディスプレイの存在が欠かせません。さまざまなメーカーが製造、販売を加速させており、ハードウェアにおいては最も競争が活発な分野の1つでしょう。他にも、メタバース上での動きを全身で体感できるスーツや、よりリアルな触覚を伝える人工皮膚などのテクノロジーが開発・製品化が進んでいます。
利便性を高める方向性で注目されているのは、AR用のコンタクトレンズやメガネです。軽量なので付けたまま外出できるのが特長で、装着すると視界に文字やマーカーで情報が表示され、ユーザーの活動をアシストします。最先端のメガネの中には、翻訳機能によって相手の言語をリアルタイムで母国語に変換し、表示するものも存在します。中にはボードゲームに特化したARメガネもあり、レンズ上に表示された3Dの盤面上で駒が火を吹いたり魔法を使ったりして、ユーザーを楽しませています。
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メタバースプラットフォーマーの中には、より快適なメタバース空間の構築に向けて複数のAIプロジェクトを進行させている企業も存在します。音声指示で環境を構築できるボットや、あらゆる言語間の翻訳をリアルタイムで可能にする機能、空間上での自然な会話を可能とするAIアシスタントなど、誰もがより手軽にメタバース空間を楽しむことができるよう、研究・開発が日々、進められています。
同時に、テクノロジーに関する特許の出願も進んでいます。ヘッドセットを介してユーザーの表情を解析し、その反応に基づいてコンテンツを表示するシステムや、胴体に装着してユーザーの生体データを取得するセンサー、大量データやユーザーのエンゲージメントに基づいて最適な広告を表示するものまで、さまざまです。こうした特許を支えるテクノロジーもAIです。
ユーザーの行動データをリアルタイムに収集し、興味・関心を予測することで、適切な情報を提供する――。ひと昔前なら、こうしたビッグデータを活用したOne to Oneマーケティングの舞台はインターネットやSNSでした。それを変え得るのがメタバースです。AIがもたらす情報処理技術の進化は、ユーザーの行動のみならず、購買の際の心拍数すら収集を可能にします。メタバースが企業のマーケティング活動の次なる舞台となる日も近いのではないでしょうか。
メタバース空間上で行われる金融取引や売買を円滑に実現する手段が、仮想通貨です。「通貨」と聞くと金属製のコインを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、仮想通貨にはコインのような実体がなく、メタバースのような完全デジタル空間でその真価がより発揮されることが期待されています。加えて、最近はデジタルアートの売買が広がりつつありますが、そうしたデジタル資産にブロックチェーン上で所有証明書を記録し、固有の価値を持たせる非代替性トークン(NFT)も注目されています。
ブロックチェーンは、台帳を1カ所に集約するのではなく、個々に保有した上で連携する自律分散型のシステムです。多数のユーザーがデータを共有し、計算結果を検証することで、改ざんを防止できる仕組みになっています。ブロックチェーンを使って通貨発行を行ったり、ユーザーのIDデータを分散して管理(DID<Decentralized Identifier>の標準化)したりすることも、ブロックチェーンの活用によって期待されるユースケースです。
今後、メタバースのようなデジタル世界が現実世界を再現していくにあたり、デジタルデータの「コピーが容易」という性質はリスクになり得ます。仮想通貨やデジタルデータの所有を証明し得るブロックチェーン技術が、デジタル世界の基盤を形作る要素になっていく可能性は十分に考えられます。
没入感にあふれたメタバースを実現するには、3D空間を精緻に設計することが不可欠です。一口に3Dと言っても、3Dの物体(オブジェクト)、光や重力などを含めた動きのある空間、アバターのインタラクティブな動作など多岐にわたり、これらを統合したものがメタバース空間となります。現在、3Dの物体やアニメーションを制作できるツールにはさまざまな種類があり、広く普及しています。データ形式は完全に標準化されているわけではありませんが、人気のあるソフトウェアは相互にデータ交換できるようになっていることが多いです。多くのメタバースは、こうしたソフトウェアや独自の開発環境で作られています。
また多くのメタバースには、ユーザー自身がメタバース内で新しくアバターや物体などを作るためのツールが用意されています。これを使って、建物や家具などを作ることもできます。
メタバースのプラットフォーマーの中には、独自の開発ツールを強化して、よりリアルで没入感のある世界、あるいは有用性のある世界を作り出そうとする動きも見られます。企業向けの開発環境を提供するデジタルツインプラットフォームも存在し、そのツールを個人向けに無償で提供する試みも始まっています。私たち一人ひとりが気軽にメタバース空間を構築できる時代も、そう遠くないのかもしれません。
黎明期にあるメタバースが、それを取り巻くテクノロジーとともにどのような発展を遂げていくのか、正確に予測することは難しいでしょう。不確定要素が多い状況にあっては、まず管理者層、特に経営者自身が、これらのテクノロジーがどのようなものなのかを実際に体感することが重要になります。一読しただけでは理解が難しいテクノロジーも、いざ自身で触れてみると、その効能を肌で実感できることが多いものです。特にXRはすぐに手が届くほど普及しつつあるので、ヘッドマウントディスプレイを身に着け、自社活用のユースケースを自ら考えてみることは、近い将来の糧になるでしょう。企業によるメタバースのビジネス活用が加速しているからこそ、周辺テクノロジーを含むその可能性を理解し、有望な事業領域を今から識別しておくことが大切です。