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2022-06-21
本連載でこれまで紹介してきたように、メタバースにまつわるビジネスは、大きく2つに分けて考えることができます。
メタバースビジネスは企業向け(B to B)のサービスと、消費者向け(B to C)のサービスにさらに分けることができますし、メタバースプラットフォームビジネスにはメタバース空間を構築する業務もあれば空間を運営する業務もあったりします。また、いずれのビジネスもメタバース空間の内と外のサービスに分けることもできます。つまりメタバースをめぐっては、さまざまなビジネスチャンスが存在し、それぞれの領域で数多くのプレイヤーが活躍しているのです。
今回は、メタバースを取り巻くプレイヤーにはどういったものがあるのかをあらためて紹介します。また、自社に最適なビジネスを見極める上で求められるアクションを考えます。
まず、メタバースにまつわるビジネスを、空間内と空間外で区切ってみましょう。
まず思い浮かぶのは、メタバース空間の構築をはじめとするインフラ整備(ここではインフラと呼ぶ)業務でしょう。メタバース空間を構築するために必要なコンピューティング資源を提供するビジネスであり、クラウドサービスはこれに該当します。このサービスを提供する企業としては、MetaやNVIDIAなどが挙げられます。
空間内のメタバースプラットフォームビジネスとして他に挙げられるのは、メタバース空間を運営・提供するサービスと、メタバース空間内で情報を提供するサービス(為替レートやデジタルアセットの売り出し状況など)です。前者はプラットフォーム提供者、いわゆるプラットフォーマーと呼ばれるもので、NVIDIAやThe Sandboxなどが挙げられます。少し話はそれますが、メタバース空間を構築・運営していく上では、金融の基盤として仮想通貨および、デジタルアセットの基盤としてNFTが不可欠となり、これらを提供するサービスもメタバースプラットフォームビジネスの一種として考えられます。
なおメタバースのプラットフォームはこれまでB to C向けに構築されており、B to B向けに特化した空間の構築を望む声は少なくありません。メタバースプラットフォーマーにとってはそうした空間の構築が、ビジネス拡大の起爆剤になると考えられます。
メタバースプラットフォームビジネスの具体的な事業例については「メタバースのビジネスモデルを考える【後編】参入企業が押さえておきたいハードルやリスク」をご参照ください。
既に存在するメタバース空間を活用して行うビジネスは、大きくB to BとB to Cに分けることができます。B to Cではゲーム、イベント、デジタルアセット、試乗体験、旅行などさまざまな分野においてビジネスが始まっています。最近ニュースでよく話題になるようなものも、これらに関するものが多いのではないでしょうか。
B to Bでは従業員向けの教育・トレーニングプログラムや会議ツール・バーチャルオフィスの提供、広告枠の販売、メタバースユーザーに関するデータの提供などが既に始まっています。広告に関しては、新しいビジネスモデルが登場することが予想されます。例えばアバターの帽子や服といったデジタルアセットにNFTビルボードを組み込んで、それを他のアバターが目にした回数、あるいは他のアバターが同じアセットを購入した数などをベースに広告料金を支払う、といった内容です。これらが広告代理店の新しい収入源となる日も近いかもしれません。
これらのサービスを利用するのは主に企業になるため、B to Cに比べてメディアでの露出はそれほど多くはないように見受けられますが、B to C向けのビジネスを展開する企業も可能なサービスであるため、ビジネスとしてのポテンシャルは高いと考えられます。
メタバースビジネスの具体的な事業例については「メタバースのビジネスモデルを考える【前編】既存のメタバース空間でビジネスを行う場合と、インフラやツールを提供する場合」をご参照ください。
メタバース空間の外にもメタバースに関連するビジネスは存在します。こちらも、メタバースプラットフォームビジネスとメタバースビジネスに分けて考えることができます。
メタバースプラットフォームビジネスは、おおまかに前述のプラットフォームとインフラに分けられます。インフラは、メタバースを利用するためのデバイスの提供が主たるものです。VRヘッドマウントディスプレイが最たるもので、Meta Questシリーズを筆頭に、さまざまなメーカーが製造・販売しています。
ヘッドセットの他には、温度が伝わるウェアラブルデバイスや、口元を覆って音漏れをなくすマイク、触覚が伝わるグローブ、超音波で触覚を伝えるデバイスなど、メタバース空間での体験価値を高めるためのさまざまな製品が市場に出されています。
メタバース空間内のメタバースプラットフォームビジネスとして仮想通貨やNFTを紹介しましたが、これらもメタバース空間外でのビジネスとして捉えることができます。なぜなら、メタバース空間内で取引される仮想通貨を現実の世界で売買することが可能だからです。また、メタバース空間内のデジタルアセットはNFTであることが多く、これらもまた現実の取引所で売買が可能です。オークション業者をはじめ、売買に携わるさまざまな企業がメタバースプラットフォームビジネスを行っている、と言ってよいのではないでしょうか。
イメージしやすいのは、メタバース空間内に掲出した広告・宣伝により、ユーザーをリアルな世界へと誘致する小売り業や観光業でしょう。メタバース空間内の百貨店で目にした洋服をリアルで購入したり、疑似体験した観光地に実際に足を運んでみたり、メタバースを起点にした消費活動や送客も今後、多く実現することが予想されます。
その他にはメタバースビジネスに関する情報提供サービスやコンサルティングなども、この部類に当てはまるでしょう。
今後メタバースの標準化が進めば、インタフェース(API)やデータ形式がある程度統一されることが予想されます。そうすれば、複数のメタバース空間にまたがったアプリケーションの開発や、メタバース空間の内外を超越した資産管理も可能になるでしょう。あくまで現時点でのおおまかな区分けとして、上記をご参考にしていただければ幸いです。
ここまでメタバースを取り巻くプレイヤーをおおまかな分類をもとに見てきました。参入の容易さやリアルな経営資源の活用しやすさに鑑みると、メタバースをビジネスに活用するための第一歩はメタバースビジネスから、という企業が多いのではないかと推察します。一方で、メタバースプラットフォームビジネスに参入する場合、基幹技術や莫大なコンピューター資源が必要になるため、参入可能な事業者は限られるでしょう。現実の世界でブランドをある程度確立した企業が、リアルと同様の商材をメタバース空間で実験的に展開する、というのが最近よく見られるパターンです。アパレルブランドや有名キャラクターが、メタバース空間内で販売されるというのが最たる例でしょう。また、リアルに展開されるデジタル屋外広告をメタバース空間内のデジタル屋外広告として活用するなど、現実世界でのナレッジをメタバースにそのまま適用する例も見られます。現実世界で一定の認知を獲得できている企業は、メタバース空間でビジネスを行うための経営資源を既に有している、と言えるのかもしれません。
もちろん、メタバースに関連する事業に参入するに当たっては、自社のどの経営資源をどの分野に投入すれば自社の強みを最大化できるかを検討し、ビジネスとして成立させるための方法論を構築する必要があります。社内で横断的なプロジェクトチームを立ち上げたり、他社にコンサルティングを依頼したり、全従業員が気兼ねなくアイデアを出せる環境を整えたりするなど、さまざまな工夫をこらすことがその第一歩と考えられます。
市場は流動的です。それゆえ、柔軟に変化を取り込みながら対応していくことが求められます。参入障壁が低く、なおかつ変化の激しい領域ではトライアンドエラーが基本と言えます。メタバースビジネスに限った話ではありませんが、失敗をも貴重なナレッジとして蓄積するくらいの気構えが、ビジネスの未来を拓くのかもしれません。