メッシュアーキテクチャが切り開く新たなデータアナリティクス~

第12回 AIレディネスを支える基盤とは

  • 2026-04-13

第10回から第11回にて、生成AIがもたらしたデータ品質要求の変化とAIレディネス(AI readiness)を見据えたドメインと中央組織の役割について解説をしました。第12回となる本稿では、AIレディネスデータや活用を支える基盤の在り方について解説をします。

生成AI・エージェントAIによって変化するデータ活用の在り方

AIレディネスを前提としたデータ基盤を検討する際には、従来のデータ活用から何が変わるのかを整理することが重要です。特に大きな変化は「扱うデータ」「データ品質」「データへのアクセス主体」の3点に表れると言えます(図表1)。

1つ目は「扱うデータの変化」について述べます。従来は、ERP(基幹システム)や業務システムに代表される、構造化した定量データの活用の活用にとどまっていたのに対して、生成AIやエージェントAIの活用が進むと、社内で保持しているデータ量の約8割を占める文書、画像、音声、ログ、センサー情報などの非構造化の定性データも重要な情報源となります。また、生成AIやエージェントAIがRAG(Retrieval-Augmented Generation)などによって意味検索や類似検索を実現するためのベクトルデータも管理の対象になります。

次に、第10回でも述べたような、「データ品質」に対する意識の変化です。従来の品質管理は、正確性・完全性・一貫性といった業務処理を成立させるための品質が中心でした。しかしAIがデータを解釈し判断に利用する時代では、それらに加えて、「理解性」、「信ぴょう性」、データの出所や処理履歴といった来歴の「追跡可能性」など、AIを安心して利用できる品質が求められます。これを実現するためには、セマンティクスに重きを置いたメタデータ管理と、AIレディネスを前提とした品質管理が不可欠となります。

3つ目はデータへの「アクセス主体の変化」です。従来は人が画面やレポートを通じてデータを参照していましたが、エージェントAIの活用が進むと、AI自身がAPIやデータサービスを通じてデータを取得し利用するようになります。そのため今後は、AIが安全かつ統制された形でデータにアクセスできる共通の接続基盤が必要となります。近年はその実装の一例として、AIと各種システムを仲介するMCP(Model Context Protocol)サーバーのような標準化インターフェースの必要性も議論されています。

図表1:生成AI・AIエージェントによるデータ活用の変化

AIレディネスアーキテクチャの概要

AIレディネスを実現する基盤は、これらの変化に対応する多層構造として設計されます。ただし、全てが新しい概念というわけではなく、従来のデータ基盤やデータマネジメントの考え方を土台に拡張・再定義されたものと捉えることができ、企業のデータをフル活用していく上で基盤となります(図表2)。

図表2:従来基盤から拡張されるデータ基盤

まず、基盤の中心となるのが「データソース・データ統合層」です。ここでは社内・社外のデータソースから構造化データと非構造化データを論理的、物理的に統合し、AIとデータ利用者の双方が参照できる共通のデータ原本を形成します。データを一元的に管理するという従来のデータウエアハウス(DWH)の思想から、取り扱うデータの種類や規模、分散性が大きく拡張されたことを背景に、「蓄積層」ではなく「データ統合層」という概念へと進化しています。この考え方は、これまで言及してきたデータメッシュ型アーキテクチャとも整合するものです。 ​

次にAIレディネスの基盤の要となる、「セマンティクス層」が必要となります。この層では語彙定義、ベクトルデータ、来歴情報などを機械可読な形で管理し、AIがデータを正しく解釈できるようにします。メタデータ管理自体は従来から存在しているものですが、AIによる自動解釈を前提に整備される点が従来と異なります。

さらに上位には、AIからの利用を前提とした「アクセス層」が必要となります。この層ではAPI管理、権限統制などを行い、AIが安全にデータへアクセスできる環境を提供します。MCPサーバーなどの仕組みは、この接続レイヤーの実装例として位置付けられます。

そしてこれらの基盤の上に「活用層」が配置され、生成AI、推論モデル、AIエージェントなどが動作することで業務価値が創出されます。前節で述べた

AIレディネスを支える基盤とは、このように、データ・意味・アクセスの各層を含めた多層基盤の整備されることによって初めて成立します(図表3)。

図表3:AIレディネスにおける各層の役割

まとめ

本稿では、AIレディネスを意識したアーキテクチャの概要を解説しました。

PwCコンサルティングでは、データマネジメントを切り口にデータ利活用推進の取り組みを行い、企業文化としてデータドリブンな組織を目指すためのデータトランスフォーメーションを支援しています。これからのAIレディネスなデータの在り方を考える上で重要となるアーキテクチャの導入を検討される際は、ぜひ私たちにご相談ください。

執筆者

黒田 育義

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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澤村 章雄

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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林 勇希

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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村瀨 正憲

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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河﨑 優人

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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小泉 駿

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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