メッシュアーキテクチャが切り開く新たなデータアナリティクス~第9回 メッシュアーキテクチャ実現における中央組織活動の要諦

2025-06-16

第8回では、メッシュアーキテクチャを実現する上で重要な、中央データ基盤に求められる機能について議論しました。今回は、中央組織としてどのような活動を行うべきか(図表1「中央組織活動」の部分)に焦点を当てます。

図表1:メッシュアーキテクチャにおける中央組織活動と中央データ基盤機能

企業内データ共有の活性化戦略策定

メッシュアーキテクチャにおいて各ドメインのデータプロダクトの相互連携は非常に重要ですが、これは単にデータ基盤やガバナンス、人材を整備しただけでは効果が得られません。各ドメインにおいてデータおよびデータプロダクトはドメインとしての資産とみなされ、社内であってもデータを共有することへの抵抗感が生まれることがあります。「自ドメインのデータをなぜ他ドメインに提供しなくてはいけないのか」といった反発が生じる可能性もあるため、この課題を軽減するための戦略を検討する必要があります(図表2)。

図表2:データ活性化戦略

戦略1:会社全体のデータ利活用方針として「データ共有」を明確に掲示する
戦略2:データ共有に対してインセンティブとなる褒賞制度を設ける
戦略3:データ共有に対する金銭的インセンティブを設計する

基本的には下段の戦略ほど効果が高く、ビジネス部門である各ドメインに対してデータおよびデータプロダクトを共有するメリットを目に見える形で還元することで、データ共有を自発的に行う文化を醸成できます。また戦略3における副次的効果として「データでお金を稼ぐ」意識の定着を期待でき、これにより各ドメインがデータを活用した新しいビジネスを創出する環境の整備につながります。
なお、戦略策定にはCDO(Chief Data Officer: 最高データ責任者)などマネジメント層との議論・検討が必要不可欠です。

データプロダクトオーナー向けの活動

データプロダクトオーナーには、主にデータプロダクトの開発および運用に関わる支援を提供します。データプロダクトに関する責任はデータプロダクトオーナーにあるものの、責任を一方的に押し付けるのではなく、中央組織として開発/運用をサポートすることが重要になります。データプロダクトは、常に変化するデータのトレンドに対応しなければ品質が低下するため、定期的な更新が不可欠です。中央組織は適切な更新の重要性を周知し、同時に中央データ基盤に開発/運用向けの機能を実装することで、データプロダクトオーナーを支援します。

データコンシューマー向けの活動

データコンシューマー(データプロダクトの利用者)には、データ利活用を促進するための啓発活動を行います。第7回「柔軟な対応力を育む人材育成の重要性」でも述べたように、データ利活用人材のレベルはドメイン間・ドメイン内で多様であり、それぞれのレベルに応じた教育が必要になります。

また一般的な知識・技術の教育だけではデータ利活用を自分ごととして捉えることが難しい場合もあります。社内でデータ利活用が進んでいるドメインからユースケースを収集し、それを他のドメインに共有することで、データ利活用のイメージを具体的に想起しやすくなります。これにより、データコンシューマーがデータ利活用の価値を実感し、データ利活用に積極的に取り組む文化を醸成することにつながります。

おわりに

メッシュアーキテクチャは、これまでの一元管理/集中管理を撤廃し、完全分散を実現するわけではありません。個別推進をスピーディーに行えるよう配慮しつつ、いかに全体的なデータ連携と活用推進を両立するかをハイブリットで進める考え方です。第7回から第9回では、メッシュアーキテクチャを前提にしたデータ利活用人材教育や中央データ基盤に求められる機能に触れ、またそれを実現するために中央組織が実施すべき活動のポイントを解説しました。

PwCコンサルティングでは、データマネジメントを切り口にデータ利活用推進の取り組みを行い、企業文化としてデータドリブン化を目指すためのデータトランスフォーメーションを支援しています。これからのデータ利活用のあり方を考える上で重要となるメッシュアーキテクチャの導入検討時には、ぜひ私たちにご相談ください。

執筆者

高橋 功

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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黒田 育義

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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澤村 章雄

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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飯田 千尋

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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