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2021-11-12
国内大手保険各社の中期経営計画やディスクローズにおいて、成熟した国内市場は安定収益源として位置づけられています。一方で効率化の追求、デジタル化、サステナビリティといった観点からの新市場の創出は、短期的なバランスシートへのインパクトという点では時期尚早であり、海外市場の成長をいかにして取り込むかが重要となっています。一方で、戦略に基づいて事業投資を十分に管理できていないために、魅力的に見える案件が市場に現れた際に飛びついて投資をしてしまったり、投資後の事業に対するモニタリングが不十分なために当初の狙いや戦略を達成できていないままその事業を保有し続けてしまったりするという事態が生じます。
本コラムでは、保険会社の事業ポートフォリオの要素である国内保険、海外保険、資産運用、新規事業のうち、海外保険に焦点をあてて、事業投資管理の高度化を検討します。
事業投資管理の高度化に求められるのは次の3つの視点です。
目指すべきポートフォリオの実現に向けて、組み入れるべき投資対象を定める(M&A戦略の策定とロングリストの作成)とともに、自社にとって有望な投資対象の選定(ショートリストへのスクリーニング)を効率的に行う必要があります。特に、近年は、海外マーケットにおけるプレゼンスやシェアの獲得を目的とした保険会社の買収のみならず、先進的なビジネスモデルを展開するInsurTech(Insurance:保険とTechnology:テクノロジーの融合)企業や最先端の技術を有するテクノロジー企業への出資など投資案件が多様化しており、各投資の目的(フィナンシャル/戦略的な達成目標)を明確にしていくことが求められます。
グループ全体の成長をけん引すべき海外事業として、成長性や収益性の観点から貢献度の低い事業については、定期的なモニタリングを通じた管理を行った上でポートフォリオの見直しが必要です。投資時の計画との乖離幅を定期的にモニタリングするといった対応を取っている企業が多いですが、収益などの単なる数値を追いかけるだけではなく、創出したい投資後のシナジーやベネフィットを分解し、細かく振り返りが可能となるようなKPIやKAI(Key Action Indicator)といった要素を定義した上で、モニタリングすることが望ましいでしょう。
事業投資の合理的な意思決定を行うための習熟度を高めていくには、目的達成に必要なマーケットインテリジェンスを獲得し、M&Aの成功率を高めていく必要があります。具体的には、投資目的や獲得したいベネフィットをあらかじめ整理し、投資意思決定プロセスやガバナンスを定義することで、部門や案件単位で異なる検討を経て意思決定されてしまうという事態を回避することが求められます。また、ルールを定めるだけでなく、それをプレイブックとしてステークホルダーと共有し、共通認識を形成することなどが望ましいでしょう。
主要な評価指標を定め、投資およびモニタリングの際に統一した目線を持つことで、投資主体となる主管部門および管理部門をまたいだ判断基準が明確になります。ただし、指標のみに基づいた判断が難しい場面もあり得ます。地政学的なリスク要素から投資を避けることや、事業として黒字であったとしても投資時の戦略的な狙いから外れていることを理由に売却を実行するケースなども考えられるため、トップマネジメントによる総合的な判断に基づいた意思決定が行えるような運営設計も求められます。
海外事業のポートフォリオ管理が高度化された企業では、広く取得したデータを活用可能な体制が整備されており、データドリブンな意思決定が行われています。健全性・収益性・成長性といった分類に基づいて、基本的な事業評価基準に関する指標を定義してモニタリングすることはもちろん、より具体的なグローバル経営管理の枠組みの中でモニタリングの頻度や粒度を強化するとともに、トップマネジメント配下に専門性の高い人材を有する組織を配置し、現地の経営陣や投資主管部門に対抗可能な体制を形成するケースもみられます。
今後はより活性化する事業投資活動に対して、自社戦略に沿った経営判断を迅速に実行していくことが勝ち残りの必須条件になります。経営判断が必要となる事業投資は、トップマネジメントのリーダーシップがあれば進められるものではありますが、収益の柱としての重要度や複雑さが増す中で、組織としての態勢構築を進めていくことが求められます。そして、その投資の成否が経営計画の実現に大きな影響を与えると考えられます。
また、日本の保険会社としてのグローバル経営管理の在り方が問われ、現地の規制等も考慮した評価基準の策定やガバナンス態勢整備が鍵となっていくでしょう。
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