製造業におけるDX―Digital Engineering Labが示す、進化するソフトウェア開発の最前線―

  • 2026-07-15

エンジニアリングチェーンにおけるDXの重要性

外部環境が急速に変化するなか、製造業は製品・サービスのDXと同時に、短納期化やコスト削減など業務オペレーション全体の高度化を迫られています。こうした課題に対し、部分最適な改善ではなく、バリューチェーン全体を見据えた変革が求められています。特に、製品価値創出の起点であるエンジニアリングチェーンのDXは、競争力を維持・向上させるうえで重要なテーマとなります。

なぜ今、ソフトウェア開発の変革が求められるのか

持続可能で競争優位なオペレーションを実現するためには、市場が求める声を的確に捉え、スピーディに製品・サービスへ反映する仕組みが不可欠です。コネクティッド技術の進展や半導体の進化などにより、製品に搭載されたソフトウェアを更新することでさまざまな変化に迅速に対応できるようになった現在、ソフトウェア開発業務の変革はエンジニアリングチェーンDXの中核を成す要素となっています。

図表1:従前の開発と目指すべき開発の姿

従前の開発と目指すべき開発の姿

高品質かつスピーディに価値提供を実現するソフトウェア開発サイクル

市場情報に基づき、高品質かつスピーディに価値を提供し続けるためには、市場(Market)と開発(R&D)をシームレスにつなぐソフトウェア開発サイクルを確立することが重要です。その中核となるのが技術情報を一元管理する技術情報管理(デジタルスレッド)であり、これを軸に開発プロセス全体を循環させるのが目指すべきソフトウェア開発の姿です。

【⓪技術情報管理(デジタルスレッド)】すべての技術情報を一元管理し、全体最適を実現する。

【①市場情報のタイムリーな収集】市場や顧客の声を迅速に収集し、開発部門へフィードバックする。

【②市場情報から設計仕様への変換】市場情報を要求・要件として整理し、設計仕様へ落とし込む。

【③ソフトウェア高速開発】再利用や自動化を活用し、品質とスピードを両立した開発を行う。

【④確実・迅速な検証、市場リリース】検証からリリースまでを迅速に回し、ソフトウェアおよび機能アップデートを素早く市場へ展開する。

図表2:ソフトウェア開発サイクル

ソフトウェア開発サイクル

技術情報管理(デジタルスレッド)を軸とした開発業務変革と支援アプローチ

こうした変革を支える技術情報管理(デジタルスレッド)として、ALM(Application Lifecycle Management)の導入が進んでいます。これは、繰り返し行われるソフトウェア開発のなかで活用・作成される各種設計情報、成果物およびトレーサビリティ情報を資産化し、ソフトウェアの再利用を最大化することで、開発効率と品質が継続的に向上するという仕組みおよび管理手法です。

図表3:ALM(Application Lifecycle Management)概念図

ALM (Application Lifecycle Management) 概念図

例として自動車業界内では、SDV(Software Defined Vehicle)の実現による競争力向上を目的として、従前のハードウェア中心の開発管理からソフトウェア管理を独立させるとともに、ALMツールを活用した設計情報の資産化および再利用率の向上などに取り組む動きが活発化しています。PwCコンサルティングでは、こうした取り組みにおいて、現場の業務実態をふまえ、どの業務領域から着手すべきか、どのように部門横断へ展開すべきかといった構想策定から、導入・定着に至るまで、一貫して支援しています。ツール導入を目的化せず、「小さく始めて大きく広げる」現実的なアプローチにより、迅速かつ効果的な業務変革を実現します。

Digital Engineering Labが提供する体験価値

Digital Engineering Labは、エンジニアリングチェーン領域のDXを「知る・感じる」ことを目的とした体験型施設です。本コラムでは、ソフトウェア開発関連の展示デモ例として「生成AI×ALMによる高速ソフトウェア開発デモ」と、「クラウド上での自動開発環境構築デモ」を紹介します。

デモ例1)生成AI×ALMによる高速ソフトウェア開発デモ

近年、生成AIを利用して開発業務を大幅に効率化あるいは代替させる取り組みが注目されています。開発業務での生成AI活用には、企業独自の技術情報や市場情報などを統合的に管理し、AIが参照・活用できる情報基盤の構築およびALMが重要です。本デモでは、製品・サービスにおけるソフトウェア開発の未来像を想定した生成AIの業務適用やALMツールでの統合情報管理の他、ドライブシミュレーターを活用したユーザー体験の疑似的な体感が可能です。その内容をふまえ、自社の既存業務に対してどのようにAI導入やDXを進めていくかといったアプローチについてのディスカッションもできます。

図表4:生成AI×ALMによる高速SW開発デモの概要

生成AI×ALMによる高速SW開発デモの概要


デモ例2)プラットフォームエンジニアリング:自動開発環境構築デモ

SDV時代の到来により、自動車開発に求められるソフトウェアの規模・複雑性は急速に増大し、多くのOEM・サプライヤーが開発期間の長期化や開発工数の肥大化に直面しています。その一因となっているのが、開発以前の「準備」にかかるコストです。プロジェクト立ち上げのたびに、ツールチェーンや環境のセットアップ、アーキテクチャ検討などを個別に進める必要があります。加えて、環境依存のエラー対応やサプライヤー間の環境差異に起因する手戻りといった間接業務が、本来の開発時間を圧迫しています。本デモでは、SDV開発に必要なインフラ・ツール・モジュールを、クラウド上で即時に払い出す仕組みをご紹介します。動作保証済みの構成や参照アーキテクチャを用意することで、OEM・サプライヤーを問わず、関係者が同一かつセキュアな環境を数クリックで構築でき、環境構築・調整工数を削減できます。さらに、AI駆動開発ツールも組み込むことで、開発期間・工数・コストの削減につなげます。

図表5:プラットフォームエンジニアリング:自動開発環境構築デモ概要

プラットフォームエンジニアリング:自動開発環境構築デモ概要

おわりに―体感から始まるDX

製造業が変化の激しい市場環境に対応し続けるためには、ソフトウェア開発を中核としたエンジニアリングチェーンDXが不可欠です。変革の第一歩として、最新トレンド技術の現場適用やDXの実現イメージを体感し、自社の目指すべき姿と変革への道筋・ロードマップを迅速に具体化することが有効なアプローチとなります。PwCコンサルティングが提供するDigital Engineering Labにおいて、「体感から始まるDX」に着手することが可能です。

Digital Engineering Lab来場の申し込み/お問い合わせはこちら

執筆者

佐藤 涼太

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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岡田 裕

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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佐藤 靖之

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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川端 祐樹

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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佐藤 晴彦

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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中原 孝輔

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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