第5回「スマートファクトリー・エコシステム【後編】」

2020-09-23

4.スマートファクトリー・エコシステムの戦略の方向性

前編で解説したように、デジタル影響を踏まえると、スマートファクトリー・エコシステム戦略の方向性は、「バリューチェーンの広がり(モノ売り~コト売り)」と「データ利活用の広さ(自社~外部)」の2軸から大きく4つに分けられます。

(1)工場稼働状況・工場内作業のデータ化による製造工程の効率化

(バリューチェーンの広がり:モノ売り、データ利活用の広さ:自社)

工場稼働状況をデータとして取得し、予測メンテナンスを行うことで故障を防ぎ設備稼働率を向上させることや、デジタルを活用し、熟練工の暗黙知を形式知化することなどが該当します。

(2)工場内外のデータを活用した付加価値向上

(バリューチェーンの広がり:モノ売り、データ利活用の広さ:外部)

製造から集荷までの工場内データに加え、顧客の使用開始から終了に至るデータを取得し、製品の使用状況データを取得。これらのデータを解析して製造工程の改善や新製品の開発、顧客別のカスタマイズを行うことなどが該当します。

(3)既存製品をベースとしたビジネスモデルの転換

(バリューチェーンの広がり:コト売り、データ利活用の広さ:自社)

IoT対応家電やサブスクリプションモデルなど、既存の製品(モノ)をベースとしてビジネスモデルを変え、新たな付加価値を提供していくことが該当します。

(4)モノづくり×異業種のデータ活用による「コト売り」の新たなビジネスモデルの構築

(バリューチェーンの広がり:コト売り、データ利活用の広さ:外部)

エンジンの従量課金モデルなどの自社のモノと顧客データを活用したコト売りや、モノの稼働データと取引実績データを組み合わせて工場機器が将来生み出す利益を算出し融資を行うといった金融サービスを提供するなど、モノと自社内外のデータを基に異業種が連携してサービスを提供することが該当します。

6.アライアンスを組む上で留意すべきこと

スマートファクトリー・エコシステムにおいては、研究・開発・調達・製造・流通・販売など、バリューチェーンの各機能別にアライアンスを締結していくと考えられます。その際には、各機能固有の論点に答えを出すことが必要です。例えば共同で研究・開発を行う際の論点としては、データやテクノロジーなどの経営資源をエコシステムのプレイヤーと共有し有効活用しつつ、いかにそれらを保護していくか、共同研究・開発の成果物の帰属および利用範囲、アライアンス終了時の取り扱いをどうするかといった点が挙げられます。また、製造のアライアンスでは製造物の品質担保の方法や契約終了後のノウハウの取り扱いなどが論点となり得ます。いち早くエコシステムを形成していくためには、アライアンス開始までのスピードが重要となるものの、こうした各機能のアライアンス別に多岐にわたる論点に漏れなく対応していくこともあわせて重要となります。

アライアンスを行う際には、当然ながら企業文化やケイパビリティの異なる企業との連携が必要となります。例えば、デジタルプロバイダーと伝統的な製造業とでは、仕事のスピード感やデジタルケイパビリティなどが大きく異なることが想定されます。このため、オーガナイザーとしてもデジタルを積極的に活用し、各プレイヤーとのデジタル面のケイパビリティギャップを小さくしておくことが必要となります。

執筆者

溜井 智也

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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