事業競争力維持・向上のための、新商品予測・リニューアル品予測の高度化

  • 2026-05-28

製造業、リテール業、卸業——業種を問わず、新商品の投入やリニューアルは事業の維持・強化に不可欠です。需要の多様化、顧客要求水準の永続的な上昇に伴い、商品の「短ライフサイクル化」と「多品種・少量化」が進む中、市場やユーザーとの接点を保つために、企業は商品ラインナップを刷新し続ける必要があります。加えて、値崩れ防止を目的とした商品リニューアル(管理コード・品番変更を伴う)の要求も年々高まり、高頻度化しています。

1. 新商品投入・リニューアルの加速と、需要予測の構造的課題

上述のような昨今の事業環境は、需要予測業務に二重の困難をもたらします。切り替え時に発生しやすくなる旧品剰余・廃棄ロスと新品の欠品・機会損失。そして、新品の学習データが不在あるいは不足し、予測可能なSKU(Stock Keeping Unit:最小在庫管理単位)の範囲が著しく限定される問題です。現場ではこうした予測の多くが担当者の経験や勘に依存しており、この領域の予測を構造的に底上げすることは業種を超えた共通の経営課題となっています。

また「新商品」は大きく2種類あります。1つは、過去に類似する商品がない「全く新規」の新商品。もう1つは、旧商品の後続として投入されるリニューアル品としての新商品です(図表1)。それぞれ参照可能データの有無や、データの質そのものが根本的に異なり、求められる予測アプローチも異なります。PwCコンサルティングの需要予測ソリューション「Multidimensional Demand Forecasting」はこの2つを明確に区別し、それぞれに特化した予測アルゴリズムを提供します。

図表1:リニューアル品・新商品の違い

2. 新商品予測:3つのステージに特化した予測アルゴリズム

全く新規の新商品には、出荷/販売開始前には実績データが存在しません。ただ「データがない/足りない」という状態は常に一様というわけではなく、発売前、発売直後、実績が蓄積されていく過程で、利用可能な情報も刻々と変化します。私たちは新商品の予測を3つのステージに分け、各ステージに特化したMultidimensional Demand Forecasting固有のアルゴリズムを適用します(図表2)。

図表2:新商品予測における3つのステージ

第1ステージ:予測対象の販売/出荷実績データは全くない段階です。Multi dimensional Demand Forecastingではカテゴリやスペック、価格帯、ターゲット層など多次元にわたる商品の属性情報から類似度計算を行い、過去の商品群より類似度の高い商品を特定します。次に、類似度が高いと判定された商品群の初動の動きを用いて(類似度に応じ加重合成し)初期予測を生成します。類似品の選定には、類似度計算にて自動でピックアップする方法と、ユーザーが業務知見に基づいて自ら指定する方法の2つを用意しており、業務意向に応じた柔軟な運用が可能です。この予測は主に初回生産量を決定するためのインプットとして使用されます。

第2ステージ:実績データが日々入りつつあるものの、いまだ短すぎるため通常の時系列モデルでは学習できない——この制約に対し、Multidimensional Demand Forecastingは「波形の類似性」で対応します。過去の新商品群の初動波形に照らし合わせ、今回の新商品の動きに類似した波形(例:上位5つの類似波形)を素早く特定。複数の波形を類似度に応じた加重の上で合成し、その先の期間に向けた予測値として出力します(図表3)。さらにMultidimensional Demand Forecastingは、この波形マッチングを自律的に改善していく「ヤドカリ方式」を備えています。予測算出の都度、最新の実績値まで用いて類似品の探索をやり直すことで、実績データが長くなるほど、より本来的に似ている商品をピックアップできるようになり、精度が自動的・自律的に向上していきます。売れ行きが商品企画段階の思惑とずれていた場合でも、早期にギャップを把握し、生産/仕入れの増減をタイムリーかつ定量的に判断することで、事業ロスの削減に大きな効果をもたらします。

図表3:類似波形を用いた需要予測

第3ステージ:新商品もしばらく経つと、初動の動きよりは、年間を通じた季節性アップダウンの側面が強くなってきます。Multidimensional Demand Forecastingはこの季節性パターンを予測に組み込み、商品固有の需要リズムに基づく安定した、より外れにくい予測へとスムーズに移行させます。

商品のライフステージに伴い、各ステージでのベストな予測手法に自動で「ギアチェンジ」していく——これがMultidimensional Demand Forecasting新商品予測アプローチの大きな特徴です。

3. リニューアル品予測:旧品と新品を一連の需要として把握

一般に、いわゆる「新商品」の大半はリニューアル品が占めます。リニューアル品としての新商品に対しては、上記とは異なるアプローチが必要です。Multidimensional Demand Forecastingのリニューアル品予測では、まず旧品と新品の実績データをグループ化し、一連のもの(=連続性のある需要)として捉えます。管理コード変更などにより新旧のデータは断絶して見えますが、グループ単位での一連の時系列として捉え、旧品の需要トレンド・季節性等をしっかり学習した上で、新品の予測へ反映させます。これにより、旧商品の終息と、新商品の立ち上がりの双方への予測が可能になります。

リニューアルの新旧対応は、1対1とは限りません。カラー展開で1つの旧品から複数の新品へと広がるケース、複数の旧品=SKUを統合するケース、多対多のケースもありますが、Multidimensional Demand Forecastingはこれらに網羅的に対応します(図表4)。

図表4:リニューアル品における新旧対応

グループとして算出された予測値に対し、旧品から新品への切り替え比率を用い、新旧双方の予測値を算出します。これにより、旧品の余剰・廃棄リスクと新品の欠品・機会損失リスクが明確になり、生産・仕入の停止時期や生産ロット確保量判断のタイムリーなアクションへとつなぐことができます(図表5)。

図表5:旧品・新品の予測値算出

4. 2つのアプローチが拓く、需要計画の新たな可能性

全く新規の新商品に対する「新商品予測」と、旧商品の後続としての「リニューアル品予測」——Multidimensional Demand Forecastingはこの2つを明確に切り分け、それぞれに特化した独自アプローチを提供することで、従来の需要予測の限界を押し広げます。

期待できる最も大きな変化は、予測可能な対象範囲が格段に広がること、そしてタイムリーな生産/調達調整によって事業のムダを最小化できることです。また、熟練担当者の暗黙知への全面的な依存から脱却し、形式知化した標準的アプローチへと移行することで、知識継承や人材不足問題へ対応し、安定的な事業運営へ向かうことができます。短ライフサイクル化と多品種化が進む環境では、この対応力の有無が企業競争力の差として表れます。

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Multidimensional Demand Forecastingのウェブサイト:

「ハイブリッドアプローチによる次世代型需要予測」
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics/df.html

「次世代型AI需要予測ソリューション」
https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/analytics/df/multidimensional-demand-forecasting.html

執筆者

河野 芳明

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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