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2022-05-27
前回のコラム「自治体職員の視点から見る1年間の実態と通常業務との相違」では、自治体の通常業務と今回のワクチン接種推進業務の相違点として、以下の3点を挙げました。
今回からはその中でも、前例のない取り組みを進めていく際に重要な「プロジェクトマネジメント」に焦点を当てていきます。
今回のワクチン接種推進のような「前例がなく外部環境も流動的なプロジェクト」を進めるに際して、自治体の管理職が注視・管理すべき事項は「PDCA」のPlanよりも上位にある「Goal」および「Issue」です。
プロジェクトマネジメントに際しては、さまざまなフレームやメソッドがありますが、中でも今回のように「Goal」「Issue」に焦点を当てて業務を推進するにあたって、特に重要なポイントはどこにあるのでしょうか。これから3回にわたるコラムにおいて、「事業定義力」「進捗管理力」「チーム推進力」の3つの観点から、自治体の通常業務とは異なる点を踏まえ、そのギャップを埋めながらマネジメントを進めるための要諦を、ワクチン接種支援を例に整理します。
事業定義力とは、「今自分達は何を解決していくべきなのか」「そのために何をするべきか」を定義していくことを指します。ワクチン接種開始当初、多くの自治体は、関係各所や報道機関から日々発出される多数の情報を前に、全体像・担当範囲の把握、実現に向けた論点の抽出、実施事項の優先順位付けなどに悩み、「何をどこまで実現・実施すればよいのか」と戸惑う状況にありました。このような状況下においては、以下のとおり全体の「Goalの設定」と「Issueの洗い出し」が重要となります。そして逆算的に課題とマイルストン、ToDoを整理することが求められます。
ワクチン接種のGoalを「対象住民のうち希望者全員に対し、十分なワクチンと接種機会を、国から提示された時期までに提供する」と明文化し、これをどのようにして叶えるのかを“因数分解”することで、具体的な数や方法に落とし込むことこそが「Goalの設定」です。「対象住民の数」「希望者の割合」「十分なワクチンの量」「接種機会」「提供する方法・接種能力」などを明確にし、「国から提示された時期」のタイミングとあわせ、「目指すべき状態」(数や時期など)をデザインしていくことになります。
Goalの“因数分解”により設定された「目指すべき状態」は、一度設定したら不変的というわけではなく、さまざまな要因によって変化させていく必要性が発生します。例えば今回のワクチン接種では、国からの「ワクチン仕入数」が一時期大きく抑制される事態となりました。この際には、「予定している接種者数とイコールになるよう、何とかして仕入数を確保するために国に働き掛ける(GoalはそのままでToDoを変更する)」のではなく、「(仕入数を増やすことは不可能と判明・判断した時点で)仕入が抑制される期間を確認し、その期間の接種予定者数を変更する」といったように「Goalを変更する」判断をされたはずです。このように、前提の変動要素が高いプロジェクトでは、Goalを不変の到達目標とするのではなく、Issue(解決すべき問題)への対応状況を常に把握しながら都度判断するという形でのマネジメントが求められます。
プロジェクトの推進にあたって注目すべきは、目指すべき姿と現実との「ギャップ(差分)」です。今回のGoalでまず解消すべきギャップは、ワクチンの接種対象となる数(需要)と、提供能力(供給)でした。
まず、需要側である「対象住民のうち希望者」の人数はそもそも何人なのかを明確にする必要があります。自治体内全体、また、エリアごと・年代区分ごとなどに、対象となる住民が何人いて、どの程度の割合の人が接種することとなるのか。この人数に対して、供給側である「十分なワクチンと接種機会」の数が合致していなければ、ワクチン接種のスピードが大きく遅れたり、逆に、打つべき人がおらず、ワクチンが余って廃棄の対象となるという事態が発生したりしてしまいます。さらに、「国から提示された時期」がマイルストンとして掲げられていることから、このタイミングまでに、需要を満たせる供給体制を構築する必要がありました。
供給体制の構築に際しては、ワクチン接種を実施してくれるクリニックが域内に何件存在し、かつ、何回分の接種を実施してくれるかを把握する必要があり、そのためには地域の医師会への確認・相談や調整が必要でした。加えて、クリニックによる接種数だけでは理想とすべき接種数をカバーできそうにないという「ギャップ」が見えてきた場合、クリニックだけではなく、集団接種の会場を設ける必要が出てきます。その場合、集団接種会場でどの程度の接種数をまかなう必要があるのか、一方で、会場となりうる場所は手配できそうか、その会場で1日に接種できる人数はどの程度なのか、といった、確認や手配を繰り返す業務が生じます。
このように、Goalの各部分で、理想とすべき状態と現状との「ギャップ」を見つけ、解消のためにはどこに手を打てばよいのか、それによる他の部分への影響は何か、などを常に考えていくことこそが、Goalに主眼を置いたマネジメントの根幹となります。Goalが明確に見えているからこそ、ギャップが見え、次に取るべきアクションに速やかに移ることができます。この構造で現状の把握・整理ができていた自治体は、国からの接種目標(1日100万人)が提示されたときや、供給量が逼迫していたタイミングでも、どのように対応すればよいかをすぐに判別し、行動につなげることができていたと感じます。
今回のコラムでは、前例のない課題解決に取り組む際に必要となる、「私たちは何を解決しなければならないのか」を明確化する「事業定義力」について述べてきました。ここでGoalとIssueが定まれば、この後はこれらをどのように解決し達成していくかを現状と照らし合わせながら見ていくことができます。次回はそのために必要な「進捗管理力」について取り上げます。
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