欧州Cyber Resilience Act――整合規格ドラフトから読み取る、企業に求められるアクションと対応戦略

  • 2026-06-15

2027年12月に全面適用が迫る欧州の製品セキュリティに関する法規制であるCyber Resilience Act(CRA)について、その適合性の推定に用いることができる整合規格の整備が進んでいます。整合規格の中でも製品セキュリティの確保の前提となる組織の取り組みや製品全般に関わる要件を規定した水平規格については一部のドラフトが公開されており、製造業を中心としたCRA対応企業に求められる具体的要件が明らかになりつつあります。

本稿ではCRAと関連付けながら、ドラフトが公開されている水平規格のprEN 40000-1-1、1-2、1-3を紹介し、加えて一部情報が公開されているprEN 40000-1-4についても解説します。また、これらの規格と従来の標準規格との関係性も踏まえながら、企業が欧州市場で競争力を維持するためのCRA対応に求められる実務的アクションと戦略を整理します。特に、CRAが単なる技術的実装ではなく組織横断的な取り組みであることを強調し、その中でも欧州当局との直接的なコミュニケーション対応の重要性を示します。

なお、本記事は、2026年3月時点において公開されている水平規格のドラフト版に基づいており、パブリックコメント等を通じて、今後要件が変更される可能性がある点にご留意ください。

4. 当局とのコミュニケーションを含む組織横断的な取り組みが鍵

CRAの水平規格に関するドラフトや情報公開が進む中で、製造者が大前提として何に取り組むべきかの輪郭がより明確になってきました。CRA対応の難しさは、それが単なる技術的なセキュア開発にとどまらず、製品の設計段階からライフサイクル全般にわたる総合的なサイバーセキュリティ管理体制の構築と、それらを支える組織文化の醸成、そしてそのような取り組みがCRAに準拠していることを担保するための欧州当局とのコミュニケーションといった組織横断的な対応が要求される点にあります。

特に欧州当局とのコミュニケーション対応は製造者が自身の企業としての信頼性と透明性を市場で証明する上で、クリティカルなポイントだと言えます。コミュニケーションの対象はインシデントや積極的に悪用された脆弱性の報告、監査報告や改善指示への対応、将来的な認定や認証プロセスなど多岐にわたります。組織として当局とのコミュニケーション経路を明確化し、透明で迅速なコミュニケーションが行えるようにすることが今後も欧州市場でビジネスを継続する上での鍵となります。

このような観点から、企業はCRA対応を単なるコンプライアンス課題と捉えるのではなく、組織横断の戦略的経営課題として取り組む必要があります。それにより、強固な製品サイバーセキュリティ体制を打ち立て、欧州市場はもとより世界市場全体での信頼獲得と競争力向上を具現化することが期待されます。

執筆者

奥山 謙

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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和栗 直英

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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山口 直幹

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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亀井 啓

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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エレドン ビリゲ

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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上野 浩

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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