「経済安全保障推進法」企業に求められる対応

「経済安全保障推進法」概要解説

  • 2023-10-25

経済安全保障とは

世界情勢が不安定になり、地政学的な緊張が高まるなか、自国の脆弱性や潜在的なリスクを軽減する方法として「経済安全保障」という概念が注目されています。経済安全保障とは、経済上の措置を講じ国の平和と安全や経済的な繁栄等の国益を確保することを指します。市場原理に基づき、自由貿易や国際分業を通じてコストの最小化や効率化を図るとともに、安全保障上の対立を緩和することに重きを置くかつての国際秩序が変化し、経済や技術を武器に他国に影響力を行使し、国家や国民の安全を経済の面から確保する動きが加速しています。

経済安全保障の概念は大きく「戦略的自律性」と「戦略的不可欠性」に分類されます。「戦略的自律性」とは、国民生活や社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強靱化することにより、いかなる状況下でも他国に過度に依存せず、正常な国民生活と経済運営という安全保障の目的を実現することを意味します。また「戦略的不可欠性」とは、国際社会全体の産業構造の中で、自国の存在が国際社会にとって不可欠な分野を戦略的に拡大することであり、自国の長期的かつ持続的な繁栄および国家安全保障を確保することを意味します(図表1)。

企業への影響と対応の方向性

国際環境の変化に伴い、安全保障の裾野が経済分野に急速に拡大するなか、主要国による経済安全保障の取り組みは今後ますます進み、日本企業のビジネスへの影響も拡大することが想定されます。国際情勢や各国の政策動向にいかに素早く対応できるか、事前準備によってどこまでエクスポージャーを低減できるかにより、企業の抱えるリスクや影響に差が出るでしょう。日本企業には各国の法整備に係る情報を収集・分析し、自社のリスクと課題を「見える化」するとともに、経済合理性だけでなく世界の大局的な動きも踏まえて事業戦略上の判断を下すことが求められます。

日本の経済安全保障推進法への対応にあたっても、上述の施行スケジュールを見据えて事前に内容を理解し、社外専門家への相談などを通して自社ビジネスへの影響を評価することが重要です。その上で、必要な対策を講じることで安定したビジネス環境を維持し、国際競争力を向上させることが求められます。

1 The White House "Remarks by National Security Advisor Jake Sullivan on Renewing American Economic Leadership at the Brookings Institution" 27 April 2023

2 European Commission "An EU approach to enhance economic security" 20 June 2023

3 内閣府 "経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)"

4 経済産業省 "経済安全保障推進法に基づく認定供給確保計画一覧"

5 内閣府 "経済安全保障重要技術育成プログラム"

6 内閣府 "特定社会基盤事業者の指定基準に該当すると見込まれる者の公表"2023年10月4日

7 内閣官房 "経済安全保障分野におけるセキュリティクリアランス制度等に関する有識者会議"

執筆者

坂田 和仁

マネージャー, PwC Japan合同会社

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