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【連載】自治体とともに目指す、サステナブルなまちづくり ~第1回 岩手県沿岸地域~(後編)

多様な専門家が結集し、地域の経済振興を支援
~岩手県沿岸地域~

PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)は、2014年に岩手県沿岸広域振興局と、東日本大震災からの復興に向けた協力体制を構築することに合意。「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」専門家集団として、岩手県沿岸地域の被災事業者に対し、経営相談をはじめとしたさまざまなプロボノ支援活動を続けてきました。今回は岩手県沿岸広域振興局局長の石川 義晃氏をゲストにお迎えし、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のパートナーで震災後に復興支援組織であるPwC「東北イノベーション推進室」を設立し、グローバルイノベーションファクトリーリーダーも務める野口 功一が、これまでの活動を振り返りながら、企業による持続可能な復興支援のあり方について意見を交わしました。

企業の新製品や新サービス、新たなビジネスモデルを生み出す「イノベーション」の創出・活性化を支援する専門組織

対談者

岩手県沿岸広域振興局長 石川 義晃氏(写真右)

PwCコンサルティング合同会社 パートナー 野口 功一(写真左)

大事なのは継続的で役に立つ支援。そしてその先にあるサステナブルな発展

2014年9月、岩手県沿岸広域振興局とPwC Japanは、アライアンスを通して被災企業への経営指導支援を強化すると発表。これは支援プロジェクトをリードする野口にとっても身の引き締まる話だったと言います。

野口:
岩手の皆さんからの期待を感じました。だからこそ、継続的に支援を行っていくことが大事だとあらためて思ったんです。PwC Japanには私たちPwCコンサルティングだけでなく、PwCあらた有限責任監査法人やPwC税理士法人もある。もっと包括的で有意義なプロボノ支援ができるのではと、すぐに希望者を募りました。

こうした働きかけにPwC Japanの若いスタッフたちの反応は期待以上でした。グループ内の各法人と連携し、2015年からは個人事業主への会計相談が、そして2017年には税務相談もスタートすることになりました。

石川氏:
岩手県内でも特に被害が大きかった自治体の一つである陸前高田市では、多くの個人事業主が仮設店舗で営業していました。本設店舗の再建にあたっては資金繰りや収益性への不安に加え、域内人口の減少や経営者自身の高齢化など、経営に関するさまざまな悩みを抱えていました。そこへ、PwC Japanの方々がさまざまな側面から支援をしてくださったことで、事業継続や本設店舗再建に対する課題の解消につながり、支援していただいた多くの事業者が新しい中心市街地において、本設店舗による営業を開始することができました。

もちろん全てが順調に行くわけではないですが、「せっかく強みがあるのにもったいない」といった視点での的確で具体的な経営のアドバイスは、それに気づいていない事業者たちにとって本当にありがたいものでした。また、岩手県の職員がPwC Japanの方たちと一緒に各地域の商工団体や事業者のもとへ伺うことで、復旧・復興の状況や生の声を知ることができました。今後はさらに、現場の状況やニーズを的確に把握することに努めていきたいと考えています。

支援企業の皆様との継続的な関係構築ということに関しては、岩手県として私たちも思い描いていることがあります。簡単に実現できることではありませんが、皆さんから支援を受けていた地元の事業者が、この先、自立し、収益性のある継続可能な事業を展開するようになり、支援をしてくださった方たちと少額でもよいのでビジネスとして互いにメリットを得られる関係を築きあげていく――。そうした未来が来ることを願っています。

「なんでも会計相談」支援の様子(2019年 岩手県釜石市)

奇跡の一本松、支援会場の仮設商工会議所(2017年 岩手県陸前高田市)

野口:
震災直後の支援のミスマッチを思い返すと、必要としているところに対してきちんとお役に立てているのかなと今は手応えを感じています。プロボノ支援に参加したPwC Japanのスタッフは、被災地から実にいろいろなことを学んで帰ってきています。これは私たちにとって大きな収穫であり、支援活動が継続できる要因の一つにもなっています。若いメンバーだけではありません。例えば会計相談で責任者を務めてくれたあるパートナーも、私のところへ来るなり「本当に人の役に立てた気がします」と話してくれました。PwC Japanにとっても得ることがとても多く、これを本当に支援と言ってよいのか、最近はそういうことも考えるようになりました。

持続可能な開発目標(SDGs)への関心がビジネスの分野でも急速に高まっている中で、多くの企業が社会課題の解決に貢献する取り組みを始めています。PwC Japanはそのような国内の企業に対してアドバイスを行うという責任ある立場にいるからこそ、特に心掛けておくべきことがあります。

支援する側がやりたい支援と、支援される側が必要とする支援に齟齬があることは、今でも往々にしてあります。でもそれは絶対に避けたいので、私たちが得た東北での教訓をクライアントや、PwC Japanの仲間たちに積極的に伝えるようにしています。社会課題の解決、地方創生、復興支援、どれも簡単ではありません。このような活動は往々にして支援する側が「やりたい事」を支援内容としてしまいます。震災直後、私たちも含め多くの企業がこのようなすれ違いを経験しました。やらなければならなかったのは被災地が必要とする「やるべき事」なのです。先ほどもお話ししましたが、私は震災後からがむしゃらに支援した上で、3年たってようやくこのことに気づいたというわけです。PwC Japan内でも若い人を中心にこのような社会貢献活動へのモチベーションが高くなっていますが、私が経験したような失敗をしてしまうことをとても心配しています。支援の名のもとに「ありがた迷惑」をやってはならないのです。もちろん、支援をしようと手を挙げる人たちのやる気をそぐようなことはしたくありませんが、「誰かを助ける」とはどういうことなのか、今、あらためて真剣に考えるべきだと思っています。

課題先進地域における実践の中でこそ鍛えられる力がある

現在、岩手県沿岸地域における支援活動は「復興」から「持続可能な社会作り」へと、さらにフェーズが進んでいます。

野口:
岩手の方々の間でも、それぞれが解決すべき課題というものが段々と明確になっているように思います。被災事業者のビジネスも軌道に乗り、今後はこれをいかに持続していくかが重要です。そのために、最近は、私たちが持っている本来のナレッジを生かしたサポートが「今なら役に立つかもしれない」と感じる機会が増えてきました。震災から約9年。テクノロジーも随分と進化しました。例えば、私たちが知見を持つモビリティシステムを中心にしたスマートシティプロジェクトなども、このタイミングなら大きな効果を発揮するかもしれない。そんな風に考えています。

石川氏:
私もそれに対して同感です。震災からの復興のみならず、人口減少による働き手の不足、高齢化のますますの進行など、被災地は今もなお多くの課題に直面しています。例えばご年配の方々の免許返納を求める声が強まっていますが、では車を持たずにどうやって買い物に行けばよいのか。自動運転やカーシェアリングによる送迎サービスというのも、今なら真剣に課題解決策の一つとして検討できる。私たちもそのように感じています。

もちろんこれは被災地特有の問題ではありませんが、私たちがいる場所が「課題先進地域」であることは事実です。東北の行政機関として、これからはただ皆さんから支援を受けるだけでなく、今日のお話で出たような事業者支援の取り組みなどを通じて、岩手県が抱える課題や現状、そして復興への取り組みをPwCの皆様と共有することで、皆様が今後他の地方自治体と連携される際の参考にしていただきたいと考えています。

野口:
PwCコンサルティングでも、岩手県沿岸地域での支援活動で得られたナレッジやネットワークをもとにして、新製品や新サービス、新ビジネスモデルなどのイノベーション創出を支援する専門組織「グローバルイノベーションファクトリー」を2015年に社内に設立しました。またPwC Japan内のさまざまなチームにおいても被災地のみならず、全国各地で地元企業の経営戦略立案、新規事業創出をサポートするなど、地方発のイノベーションを積極的に支援する活動を進めています。

私は、「課題先進地域における実践の中でこそ鍛えられる力がある」と思っています。実際に見て聞いて感じるというのは、言うまでもなく非常に貴重な経験となります。また、一人ひとりから真剣に話を聞いて課題を一緒に見つける過程というのは、若いメンバーにとって通常の業務で経験するのは案外難しいことです。被災地で持ちかけられる相談は、日々の収入を得ることに関する悩みや、日々の人間関係に関する悩みがほとんどです。その相談に乗るということは、明日、事がうまく運ぶように、今、何ができるかを考えるということです。すぐに結果を出さなければ、専門家集団として存在価値がありません。相手は地域密着型の介護施設を経営する個人事業主、地元で古くから親しまれている酒屋の経営者など、明日の地域経済を担う方々です。通常のコンサル業務とは異なる緊張感が生まれる業務と言えるでしょう。これまでのように、復興支援、社会課題解決という役割を果たしつつ、この先は、人材育成や課題先進地域におけるナレッジの集積についてもより積極的に推し進めていきたいと考えています。

石川氏:
岩手県は、一日でも早く復興を成し遂げ、課題先進地域から復興の先進地域となって、被災地にとってのロールモデルになることを目標としています。そのためには、震災からの復興に加えて、域内人口の減少や少子高齢化といった重要な社会問題とも向き合いながら、地域作りやビジネス、行政のあり方を持続可能なモデルに見直す必要があると考えています。今後もPwC Japanの皆さんからのお力添えをいただきながら、「一日も早い復興とより豊かで希望あふれる三陸の創造」を目指していきたいと考えています。

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主要メンバー

野口 功一

パートナー 常務執行役, PwCコンサルティング合同会社

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