競争法関連規制対応支援

PwCのフォレンジックサービスは、これまで数多くの競争法違反に係る調査に関与してきました。調査を通じて蓄積された経験や知見を活用し、各社の実情やニーズに応じた最適な競争法コンプライアンスに関する支援・コンサルティングサービスを提供します。

競争法関連規制とは

市場における公正で自由な競争の実現を目的とする法律を総称して「競争法(Competition law)」といい、日本では「独占禁止法」、米国では「反トラスト法(Antitrust law)」といいます。

近年の世界経済の変化(グローバル化のさらなる進展、AIなど情報技術革新に伴うビジネス構造の変化など)に伴い、日本の独占禁止法をはじめ多くの国・地域において、競争法の整備や規制強化が進んでおり、日本企業が数多く進出するアジア地域でも法整備が進んでいます。

主要国・地域における主な競争法

国・地域名 主な競争法
日本 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」は、不当な取引制限(カルテル)、企業結合の規制、不公正な取引方法の禁止などを定めており、補完法として「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」によって下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制
米国 米国の競争法の総称である「反トラスト法」は、主に「シャーマン法(カルテルの禁止など)」、「クレイトン法(企業結合規制など)」および「連邦取引委員会法(不公正な競争方法の禁止など)」の3つの法律で構成
EU 「欧州連合の機能に関する条約 (Treaty on the Functioning of the European Union :TFEU)」のうち、第101条は制限的協定・協調的行為を、第102条は市場支配的地位の濫用行為を、それぞれ規制
英国 英国の競争法は、1998年競争法(英国内での取引に影響を与える反競争的協定および支配的地位の濫用の禁止等)、2002年企業法(合併等の企業結合規制等)などの法律で構成
中国 「中華人民共和国独占禁止法」において、独占的協定、市場支配的地位の濫用、事業者の集中(企業結合)、および行政権力の濫用による競争の排除・制限などを規制

競争法違反が発生した場合の企業へのリスク

競争法に違反した場合、企業はさまざまなリスクや罰則に直面する可能性があります。特に、違反した場合の課徴金・罰金の金額は、数十億から数百億円に達することも多く、調査や改善計画の実施にも多大な費用を要します。

  • 法的罰則
    違反が認定されると、企業は多額の課徴金・罰金を科されることがあります。金額は違反の内容や規模、各国の法規定により異なりますが、多くの場合、企業の年間売上高を基に計算され、非常に高額になることがあります。
  • 損害賠償請求
    当該競争法違反によって被害を受けた利害関係者(消費者や競争業者)より、企業に対して損害賠償を求める集団訴訟などを起こされる可能性があります。
  • 経営者の責任追及
    各国の競争法によっては、競争法違反に対し、経営幹部や個人に対しても罰則が科されることがあります。これには罰金や場合によっては刑事責任も含まれます。
  • ブランド価値の毀損
    競争法違反が発生した場合、当局より企業名を公表されるため、違反の発覚により企業のブランド価値が毀損するだけでなく、消費者や取引先、投資家からの信頼を失い、市場シェアの喪失や収益減少、株価の下落につながる可能性があります。
  • 規制当局による継続的な監視と制限
    規制当局からの監視が強化され、将来的な事業展開に影響をうける可能性があります。また、再発防止のためのコンプライアンスプログラムの見直しや導入などの是正措置の実施と実施状況のモニタリングが求められ、経営に大きな負担が発生します。
  • ビジネス機会の喪失と事業計画への影響
    競争法に違反した場合、公的機関が実施する入札への参加資格が一定期間停止される、また、政府や自治体からの補助金や助成金の交付が停止される可能性があり、ビジネス機会の喪失や、予算計画・事業計画に大きな影響を与えます。

企業に求められる取り組み

競争法違反の未然防止および有事の適切な対応のためには、実効性のある競争法遵守体制を確立、継続する、平時の備えが重要です。

実効性のある競争法遵守体制の確立と継続には、リスク評価、関連規程やガイドラインの整備に始まり、それらの運用、定期的なモニタリング、改善活動を含む一連の流れの仕組みを構築することが重要です。

  • リスク評価・現状把握
    競争法に関する自社のリスクなどの特定、評価および現状の体制の把握
  • 整備
    リスク評価の結果に応じた競争法遵守体制や競争法関連規定・ガイドラインの整備
  • 運用
    競争法関連規定やガイドラインの周知徹底とその運用
  • モニタリング
    運用状況の定期的なモニタリング(競争法コンプライアンス監査など)
  • 有事対応/改善
    モニタリング結果を元にした改善活動の実施、および競争法違反の発生など有事が発生した場合には、迅速かつ十分な対応、かつ、再発防止策の策定と実施

PwCの競争法関連規制対応支援サービス

PwCのフォレンジックサービスでは、これまでに培った多様な実績と知見をもとに、競争法関連規制違反が発覚した際の実態解明から再発防止策の策定に至るまで、個々の事案に即した最適な支援を提供するだけでなく、リスク評価から競争法遵守体制・プログラムの整備と運用、モニタリングと改善の実施まで、実効性のある競争法遵守体制の確立を行い、企業が直面するさまざまな課題の解決に向けた支援、コンサルティングサービスを提供します。また、PwCグローバルネットワークを活用して、海外でのビジネス展開における複雑な法規制にはグローバルな視点で対応し、企業のコンプライアンス体制の強化と持続可能な成長を支援します。

リスク評価・現状把握

  • 競争法に係るリスクの特定とリスクの影響・発生可能性を測定 (部門による自己評価の実施支援とその評価の妥当性確認)
  • 特定したリスクに対する現状の統制を把握、整理
  • 現在の統制を実施しても残存するリスクの大きさの算定とリスクベースでの課題の特定
Auditing picto

体制整備

  • 現状の体制およびプログラムの成熟度を測定し(当局要求水準やグローバルのリーディングプラクティスとのギャップ分析)、改善すべき点とその優先順位を整理
  • リスク評価とギャップ分析により特定された課題と改善点に対し、必要な統制・施策の検討
  • 各種統制・施策の整備(競争法遵守方針および規程、当局対応マニュアル、文書保管ルールなど)
Auditing picto

運用

  • 整備した統制・施策の周知
  • 組織体制に応じた階層別研修の実施 (競争法遵守の組織風土醸成および競争法遵守体制の理解と実践促進)
Auditing picto

モニタリング

  • 各部門、子会社、関係会社に対する競争法違反リスクアセスメントやコンプライアンス監査の実施
  • コミュニケーションモニタリングやデータ分析などデジタルソリューションを活用したモニタリング
  • コンプライアンスサーベイによるコンプライアンスに対する意識や意見などの吸い上げの実施
  • 第三者機関としての競争法遵守プログラムの運用状況確認
Auditing picto

有事対応/改善活動

  • 初動対応(立入検査対応、証拠収集および保全作業、調査計画策定、利害関係者への初期対応など)
  • 事実解明調査(電子データの解析・レビュー、競争法違反リスクの高い取引の特定および調査、関与者インタビューの実施)
  • 報告書作成(原因分析/責任所在明確化、再発防止策の検討)
  • 利害関係者対応(調査結果公表、規制当局/捜査機関への対応)
  • 是正措置(定期的なリスク評価の実施、再発防止策の運用、運用状況のモニタリング)

下請代金支払遅延等防止法(下請法)とは

日本の下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、独占禁止法の補完法で、下請代金の支払遅延などを防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引の公正化を図り、下請事業者の利益を保護することを目的としています。下請取引における下請代金の支払遅延などの行為は、独占禁止法の不公正な取引方法のうち優越的地位の濫用行為に該当します。
2025年3月に「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。この改正により、企業は下請事業者の利益保護強化、および適切なサプライチェーンマネジメントの見直しが求められます。

下請法改正案の主な内容

項目

改正案の内容

「下請」等の用語の見直し

用語について、「親事業者」を「委託事業者」、「下請事業者」を「中小受託事業者」、「下請代金」を「製造委託等代金」等に改正。

法律の題名も、「下請代金支払遅延等防止法」を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に改正

(以下の説明文においては、改正案の名称を使用しています。)

協議を適切に行わない代金額の決定の禁止 対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明又は情報の提供をしないことによる、一方的な代金の額の決定を禁止
手形払等の禁止 対象取引において、手形払を禁止。また、支払期日までに代金相当額を得ることが困難な支払手段も併せて禁止
運送委託の対象取引への追加 対象取引に、製造、販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を追加(現行法では、物品の運送の再委託のみ)
従業員基準の追加 委託事業者および中小受託事業者の定義における基準に従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設し、規制の適用対象及び保護の対象を拡充
面的執行の強化

関係行政機関による指導及び助言に係る規定、相互情報提供に係る規定等を新設

当該受託取引の事業所管省庁の主務大臣に指導・助言権限を付与。また、「報復措置の禁止」の申告先として、事業所管省庁の主務大臣を追加

出典:公正取引委員会ウェブサイト「(令和7年3月11日)「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」の閣議決定等について」https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/mar/250311_kakugikettei.html

PwCの下請取引関連規制対応支援サービス

PwCのフォレンジックサービスでは、下請法をはじめとする下請取引関連規制違反リスクへの対応が喫緊の課題となっている企業に向けた下請取引関連規制対応支援、コンサルティングサービスを提供します。
下請法をはじめとする下請取引関連規制への対応は、競争法関連規制遵守体制・プログラムの1つの要素ではある一方、以下のような下請取引関連規制に焦点を当てた対応が重要です。

  • リスク評価におけるビジネスフローの可視化
    企業において日常的に発生している各取引におけるビジネスフローを可視化し、各取引におけるリスクを洗い出し
  • 取引実態の把握
    発注書などの各種書面の確認とともに各取引のオペレーションの把握と整理を行い、下請取引関連規制違反あるいは違反リスクがないかを確認(違反が確認された場合は、原状回復および当局への自発的申出を速やかに実施)
  • 課題の洗い出しと体制整備
    リスク評価と取引実態の把握によって洗い出された課題への対応と、下請取引関連規制の遵守および取引関与者の理解促進のための規程やガイドライン、マニュアル、発注書など各種書面の整備、見直し

PwCの支援例

支援例 支援概要
入札談合調査
  • 国内従業員の数百名のPCおよび携帯電話の保全。その中で、ヒアリング対象となっている社員を中心に、計10万件超のメールレビュー
  • 規制当局に提出する資料作成(案件リストなど)とリニエンシーの申請
  • 関与者へのインタビュー実施
  • 再発防止策策定支援
価格カルテル調査
  • 海外で発生したクラスアクションの対応支援
  • PwC JapanグループおよびPwCグローバルネットワークの協働によるクロスボーダー案件として、計50万件超のメールデータなどのレビューを一定の基準に従って実施
  • 日本および海外弁護士事務所と協働し、法廷提出資料を作成
競争法監査支援
  • 競争法コンプライアンス監査を導入するにあたり、コンプライアンス監査を実施するためのプログラムの設計
  • 内部監査部門による監査実施における支援
競争法コンプライアンスプログラムの運用状況の確認
  • 競争法遵守規定に対して会社が実施しているコンプライアンスプログラムをマッピングし、整備された規定に対してプログラムが実施されていることを確認
  • コンプライアンスプログラムが適切に実施されているかを主管部署担当者へのヒアリングや会社のデータベースなどに存在する証憑などを確認して評価
競争法研修
  • 会社の競争法リスクや施策を盛り込んだオーダーメイド研修資料の作成
  • 講師を派遣した研修の実施
下請法違反対応支援
  • ビジネスフローの可視化とリスク評価
  • 取引実態の把握と整理
  • 確認された違反に対して、原状回復および当局への自発的申出の実施支援(原因分析および再発防止策策定支援)
  • 課題の洗い出しと体制整備の支援

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

主要メンバー

山上 眞人

執行役常務, PwC Japan有限責任監査法人

那須 美帆子

パートナー, PwCリスクアドバイザリー合同会社

平尾 明子

ディレクター, PwCリスクアドバイザリー合同会社

奈良 隆佑

ディレクター, PwCリスクアドバイザリー合同会社

満行 毅

シニアマネージャー, PwCリスクアドバイザリー合同会社

阪本 凌

PwC弁護士法人

本ページに関するお問い合わせ