中国国家統計局が発表した2025年第1四半期(1-3月)の実質GDP成長率は前年同期比+5.4%となった。2024年9月以降、政府当局が相次いで打ち出した景気刺激策が奏功したことにより、消費小売や固定資産投資、鉱工業生産などの主要指標には底打ちの兆しもうかがえ、実質GDP成長率の項目別寄与度をみると、最終消費と外需が牽引役となり経済成長を実現している。しかしながら、足元の中国経済は長引く不動産不況に加え、雇用不安もあり個人消費は勢いに乏しい。さらには、欧米諸国ほか主要貿易相手国・地域では中国の過剰生産に端を発する貿易摩擦の問題に加え、トランプ大統領による対中関税引き上げを契機に米中両国の間で報復合戦が繰り広げられており、これが中国の貿易動向に与えるマイナスの影響が懸念され、外需環境も楽観しがたい。2025年においても、政府当局による景気刺激策の効果も含めた景気回復の持続性や先行きが注目されるが、引き続き長引く不動産不況の下で需要不足の状態から脱し切れず、さらに個人消費において政府当局の政策効果が剥落するほか、米中摩擦に端を発する貿易環境のさらなる悪化なども想定され、今後も楽観しがたい状況が続くものとみられる。以下では、先般公表された2025年第1四半期(1-3月)の主要経済統計を踏まえつつ、中国経済の現状および2025年を通じた今後の展望について筆者の見解を述べていく。
まずは図表1で四半期ベースの実質GDP成長率をみると、2025年第1四半期(1-3月)には前年同期比+5.4%となり、2024年第4四半期(10-12月)の同+5.4%から横ばいで推移した。2024年通算では前年比+5.0%となり、政府当局が掲げる2024年通年の目標である「5%前後」の経済成長率を実現しており、四半期ベースでみても、中国経済はまず堅調に推移しているようにみられる。ただし、前期比(季節要因調整後)ベースでみると、2025年第1四半期の伸びは+1.2%(年率換算ベース:+4.9%)となり、2024年第4四半期の同+1.6%(年率換算ベース:+6.6%)から減速している。
また、名目ベースのGDP成長率をみると、2025年第1四半期(1-3月)通算では前年同期比+4.8%となり、名目GDP成長率が8四半期連続で実質GDP成長率を下回る名実逆転の状態が続いている。詳細は12ページ以降で述べるが、足元の物価動向をみると、2025年3月には消費者物価指数が前年同月比-0.1%となり、2か月連続でマイナス推移するなど、根強いデフレ圧力に直面する状態が続いているだけに、実態的な物価動向の把握に努めていく必要があろう。ここで実質GDP成長率の需要項目別の寄与度をみると、2025年第1四半期(1-3月)の実質GDP成長率(前年同期比+5.4%)のうち最終消費が2.8%ポイントを占めており、これに純輸出(2.1%ポイント)が続いている。純輸出については、トランプ関税を見据えた前倒しの駆け込み輸出の動きが進んだ一方、輸入の落ち込みが続いた結果、引き続き中国経済の牽引役となったものである。2024年第4四半期(10-12月、同+5.4%)の需要項目別の寄与度と比較すると、最終消費が+0.4%ポイント、純輸出が+0.5%ポイントと大きく寄与している一方で、総資本形成(0.5%ポイント)は-0.9%ポイントとなっており、足元では最終消費および純輸出の伸びに支えられつつ経済成長を実現していると言える。
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