日本経済の足元の動向につき確認していこう。まず国内消費をみると、7月の家計調査において、実質消費支出が前年比+0.1%、前月比では-1.7%、名目消費支出が前年比+3.3%、前月比で-1.5%となり、実質消費は前年比で微増となった。勤労者世帯の可処分所得は名目で前年比+10.7%、実質で同+7.3%となった。賃上げやボーナス、定額減税は実収入や可処分所得の伸びにプラスに働くだろう。この動きが引き続き続くかがポイントだ。消費と価格の動きをみると、価格上昇が進む中で必需財等の基礎的支出の消費は減少し、ぜいたく品等の選択的支出は増加が続くものの、これらの財の価格変化は弱まりつつある。消費者物価の基調的変化は着実に弱まっており、その背景には消費支出の動きが弱いことが影響している。所得拡大は続くも、家計消費の拡大は未だ不十分な状態にある。一方、8月の商業動態統計では、名目の小売業販売額は前年比、前月比ともに増加した。業態別の前年比でみると、特に家電大型専門店やドラッグストア・ホームセンターで大きめの伸びとなり、持ち直しが継続している。また、実質化した小売業販売額は2024年に入り、やや持ち直しの動きがみられるものの、これまで増加基調にあった百貨店は8月に下落に転じ、スーパー・コンビ二は引き続き弱めの動きとなっている。
次に設備投資動向をみておこう。7月の機械受注統計は、船舶・電力を除く民需(コア民需)は前月比0.1%減となり2か月ぶりに減少した。また、外需向けは同8.0%増と4か月連続で増加した。8月の鉱工業生産では、生産が前月比-3.3%となり2か月ぶりに減少した。生産予測調査では9月・10月に増加する見込みであるものの、増加した業種は一部に偏っている。過去の傾向を踏まえた補正値でみると9月に前月比0.3%増が見込まれ、仮にこの通りに推移すると7-9月期は4-6月期対比で0.8%の減少が見込まれる。台風による生産停止などが影響しているものの、基調としては弱めの動きとなっており、7-9月期のGDPは2四半期ぶりに減少する可能性が高まっている。外需に目を転じると、8月の貿易統計では、名目輸出金額は前年比+5.6%となり、9か月連続で増加した。中国・アジア向けが増加したものの、米国向けが約3年ぶりに減少した。輸出数量は前年比-2.7%となり7か月連続で減少した。
以上を踏まえ、景気動向を確認しておこう。7月の景気動向指数における一致指数は117.1となり、前月(6月)から3.0ポイント拡大した。投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(卸売業)、生産出荷指数が伸びた。
物価面をみると、8月の企業物価指数では、国内企業物価指数が前月比-0.2%となり、10か月ぶりに減少に転じた。企業物価は6か月程度のラグをもって消費者物価を押し上げる。8月の全国消費者物価は、総合で前年比+3.0%となり伸びが拡大し、7月から上昇した。もっとも食料・エネルギーを除く欧米型コアでは前年比+1.7%となり、4か月連続で2%を下回って推移している。現時点では所得の増加が消費の増加に結び付く、いわゆる好循環の動きは確認できていない。今後は、賃金の拡大が進む中で実質消費が増加という好循環が生じていくのか、米国を中心とする海外経済の減速による輸出や設備投資の動向、金融引き締めによる金融環境の悪化が注目ポイントとなろう。
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