日本経済の足元の動向につき確認していこう。4-6月期の実質GDP(1次速報)は、前期比成長率が+0.8%(年率+3.1%)となった。2四半期ぶりのプラス成長となったが、前年比ではマイナス成長が続いており、前期比でプラス成長となったのは1-3月期の落ち込みからのリバウンドの影響が大きい。次に国内消費をみると、6月の家計調査においては、実質消費は前年比-1.4%と2か月連続の減少、前月比では+0.1%と3か月ぶりに増加した。勤労者世帯の実質可処分所得は前年比+8.5%となった。前月(5月)に2022年9月以来20か月ぶりの前年比増加となっており2か月連続での増加となった。賃上げやボーナス、定額減税は実収入や可処分所得の伸びにプラスに働くとみられるが、問題はそれが持続するかである。消費と価格の動きをみると、価格上昇が進む中で必需財等の基礎的支出の消費は減少し、ぜいたく品等の選択的支出は増加が続くものの、これらの財の価格変化は弱まりつつある。つまり物価上昇に家計消費が耐えられなくなっている。一方、6月の商業動態統計では、名目の小売業販売額は前年比、前月比ともに増加した。また、実質化した小売業販売額は2024年に入り、やや持ち直しの動きがみられるものの、これまで増加基調にあった百貨店はやや横ばいに転じつつある。またスーパー・コンビ二は引き続き弱めの動きとなっている。次に設備投資動向をみておこう。6月の機械受注統計は、船舶・電力を除く民需(コア民需)は前月比2.1%増となり3か月ぶりに増加した。また、外需向けは6月に同2.0%増と3か月連続で増加した。7月の鉱工業生産では、生産が前月比+2.8%と2か月ぶりの増加となった。もっとも、生産予測調査につき、過去の傾向を踏まえた補正値でみると8月に前月比-0.9%、9月に同-3.3%と2か月連続の減少が見込まれる。仮にこの通りに推移すると7-9月期は4-6月期対比で0.7%の減少が見込まれ、生産の基調は弱い。外需に目を転じると、7月の貿易統計では、名目輸出金額は前年比+10.3%となり、8か月連続で増加した。輸出数量は前年比-5.2%となり6か月連続で減少した。また、米国を含む全地域向け輸出数量が減少した。以上を踏まえ、景気動向を確認しておこう。6月の景気動向指数(改定値)における一致指数は113.2となった。前月(5月)から3.9ポイント下落した。生産、出荷、労働投入、商業販売額(卸売業)が大きく落ち込んだ。3月~5月にかけての回復以上に落ち込み2月の112.3以来の低水準となった。物価面をみると、7月の企業物価指数では、国内企業物価指数が前年比+3.0%(前月比+0.3%)となった。2022年に入り、水準が切り上がっている。輸出物価・輸入物価も伸びを強めている。企業物価は6か月程度のラグをもって消費者物価を押し上げる。7月の全国消費者物価は、総合で前年比+2.8%となり、3か月連続で同じ伸び率となった。政府のエネルギー負担軽減策終了によるエネルギー価格上昇が寄与している。もっとも食料・エネルギーを除く欧米型コアでは前年比+1.6%となった。前月(6月)の同+1.9%からさらに伸びを弱め2%から下振れている。現時点では所得の増加が消費の増加に結び付く、いわゆる好循環の動きは確認できていない。今後は、賃金の拡大が進む中で実質消費が増加という好循環が生じていくのか、米国を中心とする海外経済の減速による輸出や設備投資の動向が注目ポイントとなろう。
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