PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

挽回生産による回復も、実質所得減少により弱い国内需要(2024年6月)

  • 2024-07-05

I.2024年6月のまとめ:挽回生産による回復も、実質所得減少により弱い国内需要

7月1日、内閣府より、異例となる2024年1-3月期の実質GDP(2次速報(改訂値))が公表された。設備投資の基礎統計である建設総合統計における遡及改定を受けたもので、実質GDPは前期比年率-2.9%となり、2次速報の-1.8%から下方修正された。住宅投資・公共投資が下方修正となったことが反映された。国内消費をみると、4月の家計調査においては、実質消費は前年比+0.5%、前月比-1.2%、名目消費は前年比+3.0%、前月比-0.2%となり、減少に転じた。勤労者世帯の実質可処分所得は前年比-2.6%と、2022年10月以降19か月連続前年比減少となった。物価上昇に伴う押し下げ効果がややマイルドとなり、実収入の伸びは拡大していない。このため、実質可処分所得の減少ペースは加速している。2024年1月以降、下げ止まりの兆しもあったが、弱めの動きが継続している。また、需要の弱さが価格の押し下げ要因となっていることが確認できる。一方、5月の商業動態統計では、名目の小売業販売額は前月比・前年比ともに伸びが加速した。また、実質化した小売業販売額は2024年に入り、やや持ち直しの動きがみられる。次に設備投資動向をみておこう。4月の機械受注統計は、船舶・電力を除く民需(コア民需)は前月比-2.9%となった。前月の同+2.9%の増加分を打ち消した。製造業が3か月ぶりに減少したことがけん引した。また、外需向けは、4月に同+21.6%と大幅に増加した。5月の鉱工業生産では、生産が前月比+2.8%と2か月ぶりに上昇に転じた。また、先行きを製造業工業予測調査でみると、2024年6月は前月比-4.8%、7月は同+3.6%と、一進一退の動きとなっている。2024年4-6月期の生産は1-3月期の自動車の認証不正による減産からの挽回生産が見込まれていた。しかし、予測指数を踏まえると、挽回生産は前期比+2%程度が上限となる見込みである。外需に目を転じると、5月の貿易統計では、名目輸出金額は前年比+13.5%となり、6か月連続で増加した。輸出数量は前年比-0.9%となり4か月連続で減少した。実質輸出動向は弱めの動きとなっている。また、輸入金額が前年比+9.5%となり、2か月連続で増加した。以上を踏まえ、景気動向をみておこう。4月の景気動向指数における一致指数は115.2となった。前月(3月)から1.0ポイント上昇し、2か月連続の上昇となった。もっとも改善の度合いは緩やかである。物価面をみると、5月の企業物価指数では、国内企業物価指数が前年比+2.4%(前月比+0.7%)となった。2022年に入り、水準が切り上がっている。輸出物価・輸入物価も伸びを強めている。企業物価は6か月程度のラグをもって消費者物価を押し上げる。5月の全国消費者物価は、総合で前年比+2.8%(前月+2.5%)となり、前月より伸びを強めた。エネルギー価格の上昇が寄与している。もっとも食料・エネルギーを除く欧米型コアでは前年比+1.7%と2%を割り込んでいる。

国内景気は、実質所得の減少に伴って実質消費の減少が続いている。一時緩やかとなった物価の動きも、エネルギー価格上昇を受けて再び伸びを強めている。1-3月期は、自動車の認証不正問題に伴う生産停止により、経済が広範に落ち込んだ。4月はやや回復がみられたものの、力強さには欠けており、4-6月期以降の回復は緩やかなものとなろう。


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執筆者

伊藤 篤

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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片岡 剛士

チーフエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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