PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

円安で拡大する日本向け投資/リパトリ減税による好循環の後押し(2024年4月)

  • 2024-04-30

物価・賃金は30年ぶりの改善を示すも、内需低迷で好循環の開始には至らず

足元の日本経済では、物価・賃金・投資・株価が30年ぶりの改善を示している。まず、図表1で消費者物価をみると、総合では2022年度に前年比+3.2%、2023年度も同+3.0%と2年連続で3%を超えた。このうち、食料は2022年度に同+5.7%、2023年度に同+7.4%と伸びが加速している。一方、エネルギー価格は、2021年度に同+10.7%、2022年度に同+12.8%と2年度連続で2桁の伸びを示した。その後、2023年度には政府のエネルギー対策による押し下げ効果もあり同-8.0%と減少に転じた。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く欧米型コアは、2022年度の同+1.1%、2023 年度の同+2.6%と伸びが加速した。総合、欧米型コアともほぼ30年ぶりの伸びとなった。もっともこの物価高は、食料やエネルギー価格の上昇による側面が強く、今後とも物価が2%を維持できるかは予断を許さないであろう。

図表2で物価の動きを月次で確認しておこう。輸入物価はエネルギー価格の上昇を受けて2021年3月から前年比で増加に転じ、半年後の2021年9月にCPI総合が増加に転じた。さらにほぼ半年後の2022年4月には欧米型コアが増加に転じた。2022年7月には輸入物価の上昇率がピークをつけ、半年後の2023年1月にはCPI総合がピークをつけている。ここまでは、エネルギー価格の上昇をきっかけとした物価上昇の側面が強かったといえよう。その後、欧米型コアがピークをつけたのは2023年12月であり、CPI総合がピークを付けた2023年1月から1年が経過している。また、2024年に入ってから欧米型コアは伸びを弱めている。これは足元の国内消費の弱さを反映しており、今後消費の回復がなければ物価は伸びを弱める公算が大きい。もっとも、上記でみた通り、2021年4月以降のエネルギー価格上昇の影響で、物価は上昇してきた。輸入物価は2024年2月・3月に若干ではあるが、再び前年比で増加に転じている。直近では地政学リスクの高まりによって原油価格が上昇しており、今後、原油価格が伸びを強めれば、再び物価が伸びを強める可能性がある点には留意が必要である。


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執筆者

伊藤 篤

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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