2023年の中国の実質GDP成長率は前年比+5.2%となり、政府当局が掲げる2023年通年の経済成長率「5%前後」との目標を達成した。ただし、新型コロナ流行の影響を受けて低水準の伸びであった2022年(同+3.0%)からのベース効果によって押し上げられたところも大きい。実態としては、長引く不動産不況に加え、雇用不安もあり国内消費は勢いに乏しいうえ、欧米景気の先行き不透明感は払拭されず、外需を取り巻く環境も厳しい状況が続いており、景気回復のペースは鈍い。また、2023年の名目GDP成長率は同+4.6%と前年(同+4.8%)から鈍化したうえ、名目GDPが実質を下回る伸びに止まるなど、ディスインフレの状況が続いている。
中国はこうした国内外の需要不足に直面する一方で、慢性的な過剰生産能力を抱えていることから、根強いデフレ圧力の余波が国内に止まらず、海外諸国にも波及する「デフレの輸出」が生じる状況も懸念されている。以下では、中国における個人消費や外需、鉱工業生産などを取り巻く環境を踏まえつつ、根強いデフレ圧力に直面している足元の物価動向および今後の見通しについて筆者の見解を述べていく。
まず中国の全国CPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)の推移をみると、CPIは2023年10月以降4か月連続、PPIは2022年10月以降16か月連続のマイナスで推移を続けている(図表1)。
CPIは2023年通年で前年比+0.2%となり、政府当局による通年の物価目標3%を大きく下回った。今年1月には前年同月比-0.8%とマイナス幅は前月より拡大し、2009年9月以来の低水準で着地した。中国では家計消費はじめ需要が旺盛となる春節(旧正月)休暇が旧暦の関係で毎年1月と2月の間を移動する。2023年の春節休暇は1月(1月21-27日)、2024年は2月(2月10-17日)だったため、2024年1月の数字は前年同月比で下振れしやすい点は考慮する必要がある。なお、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは2024年1月に同+0.4%となり、前月(同+0.6%)から鈍化して着地した。足元でのCPIの鈍い動きは食品やエネルギー価格の下落によるものである。2023年7月以降は低位ながらプラスを維持しつつ安定的に推移していることから、現時点でみる限り、物価上昇ペースが鈍化するディスインフレの状態にあると言える。
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