PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

2023年の中国経済展望-直面する人口減少の問題に対する見方(2023年5月)

  • 2023-05-26

先般中国国家統計局は2022年末時点の中国(台湾、香港、マカオを除く)の総人口が14億1,175万人となり、前年から85万人減少したと発表した。中国の人口減少は毛沢東時代の大躍進期に大飢饉が発生した1961年以来61年ぶりであるが、総人口がこうした特殊要因によらず予想以上に速いペースで減少局面に突入しており、今後の動向が注目されている。

これまで中国は豊富な総人口や生産年齢人口を背景に経済発展を実現し、今や一人当たりGDPは1万米ドル超に達しており、中所得国から高所得国へ向かう段階にある。こうしたなかで少子高齢化の波が急速に押し寄せており、人々が豊かさを享受する前に経済減速を余儀なくされる、いわゆる「未富先老」を懸念する声も聞かれている。以下では、中国の人口に関連する統計を踏まえつつ中国経済や社会への影響のほか、今後注目すべき方向性などについて筆者の見解を述べていく。

ついに減少トレンドに転じた中国の総人口

まずは図表1、図表2で1949年の建国以来の総人口の推移を振り返ると、上述のとおり大飢饉の影響で大量の餓死者を出した1960年および1961年を除いて総じて増加基調を辿り、現在の総人口は1949年の中華人民共和国建国時(5.4憶人)の約2.6倍に達している。1962年からは出産が奨励されベビーブームとなり、1960年代から70年代前半は年間の人口増が2,000万人内外で推移したものの、詳細は後述するが、人口増加に伴う食糧不足に備えて1979年に導入した「一人っ子政策」により人口増加のペースは大分緩和された。

その後も中国の総人口は1990年代までは毎年1,000万人超のペースで増加したが、2000年代に入り毎年の人口増が700万人前後の水準で推移するなか、政府当局はこうした人口減少に向かう流れに歯止めをかけるべく、2015年以降「一人っ子政策」を解除したことで、人口増加のペースは一時的に盛り返した。もっとも足元で人口増加のペースは急速に減退しており、中国の総人口はついに2022年にピークアウトするに至った。2019年の国連中位推計では、中国の総人口のピークは2031年に14.64憶人と予想されていたが、人口減少の段階は9年ほど早く到来している。


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執筆者

薗田 直孝

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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