2022年にはコロナ禍の影響を受けて急減速を余儀なくされた中国経済は、引き続き不動産市場の低迷や逼迫する地方財政といった課題を抱えており、今月開催された全国人民代表大会において李克強首相から発表された「政治活動報告」では、2023年の実質経済成長率の目標が「5%前後」と2年連続で引き下げられたほか、少子高齢化などの中長期的な課題に対する具体的な言及は見当たらず、目先の経済安定に配慮した意図が窺える内容となっている。
第3期目が本格始動する習近平政権の慎重かつ適切な政策運営が注目されるが、足元では不動産ほか固定資産投資の伸びも期待し切れず、外需を取り巻く環境も楽観視し難い中、ゼロコロナ政策解除に伴うリベンジ消費はじめ個人消費を牽引役とする経済回復を期待する声が多く聞かれている。
以下では、先日公表された2023年2月までの統計も踏まえつつ、今年の中国経済の先行きを展望するにあたって、特に目先の消費動向に関連するポイントについて筆者の見解を述べていく。
まずは足元の景況感を占うために図表1で購買担当者景気指数(PMI)をみると、2月には56.4と、ここ10年余りで最も高い水準まで上昇した。
製造業・非製造業別にみると、図表2の製造業PMIは、今年1月には企業活動拡大・縮小の基準となる50を超えて50.1となり、2月には52.6と更に上昇し、2012年4月以来の高水準を記録した。季節要因やコロナ禍における特殊要因もあり、今年は低い発射台からスタートしたことも一因であるが、1月の春節(旧正月)連休後に工場の生産再開の動きが加速したことが窺え、製造業全体のトレンドとしてまず堅調な回復を辿っている。
図表3で建設業およびサービス業を対象とする非製造業PMIをみると、今年1月の54.4から2月は更に56.3まで上昇し、2021年3月以来の高水準となっている。内訳をみれば、建設業はインフラ支出や不動産デベロッパー向け融資の拡大が寄与し、1月の56.4から2月は60.2に上昇し、サービス業も輸送・宿泊部門での改善に支えられ、1月の54.0から2月は55.6に上昇した。
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