PwC Intelligence ―― Emerging Technology Insights

Tech Translated: 4D Printing 4Dプリンティング(2025年7月)

  • 2025-07-02

レポート全文(図版あり)はPDF版で公開しています

※本コンテンツは、Tech Translated: 4D printingを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。


4Dプリンティングとは何か?

4Dプリンティングはその名のとおり、3Dプリンティングに「時間経過による変化」という追加の次元をもたらす。「4Dプリンティングは積層造形における次世代技術であり、無生物に生物のような環境刺激への反応能力を与えることで、その柔軟性をさらに高める」と、PwC米国法人 グローバルAI・イノベーションテクノロジーリーダーのScott Likensは述べている。

4Dプリンティングは、柔軟なポリマー(例えば、セルロースを含浸させたハイドロゲル)を、製造工程において本来は硬い構造物に埋め込むことで機能する。これらの柔軟な部分は、水に浸したドライフラワーが再び「開花」するのと同じように活性化する。

どのようなビジネス上の問題に対処できるか?

4Dプリントされた物体は、プリンタから取り出した直後から、移動、変形、さらには自己組織化が可能となる。それには熱、光、水といった単純な外部刺激を与えるだけで十分で、モーターなどの追加部品は必要ない。開発中の4Dプリンタの多くは既存の3Dプリンタを利用しているが、メタマテリアル(自然界に存在する物質には通常見られない、特殊な特性を持つ合成材料)といった、より革新的な技術を活用したものもある。つまり、潜在的なユースケースが非常に豊富であるということが示唆される。

  • 4Dプリンティングにより、インフラの耐久性が向上しうる。例えば、凍結すると拡張するパイプや、地震の際にたわんで亀裂を自己修復する橋などが挙げられる。
  • 消費者向け分野では、4Dプリンティングにより個別にカスタマイズされた製品を大規模に生産できる可能性がある。例えば、肌に触れると自動的に体にフィットする衣服や、常に足裏を完璧にサポートするスニーカーなどが考えられる。アディダスはすでにこの技術を応用しており、4DFWDスニーカーでは柔軟な格子状のソールが下方向への圧力を前方への推進力に変換できる。
  • 航空宇宙分野では、4Dの翼が飛行中に形状を動的に変化させ、空気力学的効率を向上させることが可能になるかもしれない。
  • ヘルスケア分野では、汎用的なタンパク質鎖を特定の形状に折り畳んで患者に投与することで、必要に応じて個別化された薬剤を投与できる可能性がある。さらに、病院では汎用的な設計を基に、オンデマンドでオーダーメイドの義肢を4Dプリントできるようになるかもしれない。研究者はすでに、4Dプリンティングを使用して人間の骨や組織の成長を促すスキャフォールドを作成し、個々の患者の体に適応するスマートインプラントを提供している。

どのように価値を創造するか?

4Dプリンティングは、革新的な新製品の開発を可能にするだけではない。この技術を効果的にスケールアップできれば、企業は3Dプリンティングによる製造・サプライチェーンの革新と、自己組立型の流通モデルによる経済効率を融合させることが可能になる。場合によっては、製品の自動的な組み立てを実現できる可能性もある。

「最も基本的な形態では、平らな板を消費者に配送し、ヘアドライヤーを当てるだけで複雑な家具に変身させることができるだろう。さらに、このコンセプトは、送電塔、タービンブレードiv、緊急時のシェルターといった大型の物体にも応用できる可能性がある」とLikensは述べている。「これらのアプリケーションは、スマートシティやコグニティブビルディングと密接に連携する。4Dプリンティングによって形成された物体は、設計上の固有の特性として、自動的にその役割を果たす。電力供給を必要とせず、交換すべき可動部品がないため、メンテナンスコストが大幅に削減されることになる。これは新たな産業革命につながる重要な推進力となるだろう」。

誰が注意を払うべきか?

このテクノロジーは製造業のイノベーションの最前線にある。航空宇宙・防衛、都市・インフラ、重工業・エンジニアリング、建設、産業機械、運輸・物流などの業界のCOO、CTO、CSO、CIO、CRO、主任エンジニア/研究開発リーダーなどのリーダーは、4Dプリンティング技術が自社のビジネスにどのような影響を与えるかを検討する必要がある。

企業はどのように準備すればよいか?

4Dプリンティングが組織に応用できそうな場合、Likensは、ワーキンググループを設置してこのトピックを徹底的に調査し、4Dプリンティングが製品の設計、製造、流通の領域で自社のビジネスに与えうる影響を特定することを推奨している。「潜在的な応用がバリューチェーン全体に影響を及ぼす可能性に留意すべきだ。その影響を評価する際には、エコシステム全体を考慮することに価値がある」とLikensは述べている。社内で、あるいは他の組織と連携してR&Dに投資することで、先行者利益を獲得し、新たな収益源を開拓できる可能性が生まれる。


続きはPDF版をご覧ください。

レポート全文(図版あり)はこちら

( PDF 983.39KB )

主要メンバー

近藤 芳朗

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

柳川 素子

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

PwC Intelligence
――統合知を提供するシンクタンク

PwC Intelligenceはビジネス環境の短期、そして中長期変化を捉え、クライアント企業が未来を見通すための羅針盤となるシンクタンクです。

PwC米国の「PwC Intelligence」をはじめ、PwCグローバルネットワークにおける他の情報機関・組織と連携しながら、日本国内において知の統合化を推進しています。

詳細はこちら

本ページに関するお問い合わせ