企画が決まってから、最初のコードが書かれるまでに数週間から数カ月を要する――大企業の開発現場では、珍しい話ではありません。
生成AIの登場で、コードを書く時間そのものは大きく短縮されました。それでも成果物として価値が提供されるスピードが変わらないのだとすれば、ボトルネックはすでに開発そのものから、その前後の工程へと移っています。環境やアカウントの準備、ツールの利用申請、セキュリティやネットワークの確認、関係部門との調整、そしてテストやリリースに必要な確認・申請。加えて、次々と登場する技術やツールの中から何を選ぶべきかの調査と検討も求められます。これら一つ一つは必要な対応ですが、案件ごとに繰り返されるうちに、多くの時間がそこに費やされていきます。
また大企業や金融関連企業では、セキュリティや品質などのルールや方針は整備されているものの、実際に理解し、正しく守ることは各案件や開発者の意識や判断に任されているケースが少なくありません。加えて、技術選択や関係部門との調整も案件ごとに発生します。問題はガバナンスそのものではなく、こうした複雑な対応を人の判断や注意に頼りながら、各案件が個別に進行していることです。その影響は現場の疲弊にとどまりません。市場投入は遅れ、投資は成果に結びつかず、優秀な開発者ほど組織を去っていきます。必要なガバナンスを確保しながらこの複雑性を減らし、開発者が本来の価値創出に集中できる環境をいかにつくるかが、多くの大企業に共通する課題です。
この課題を解決するアプローチが、プラットフォームエンジニアリングです。
プラットフォームエンジニアリングは、開発に必要な環境、ツール、ワークフローなどを開発者向けプラットフォームとして整備し、開発者が本来の価値創出につながる開発業務に集中できる状態を目指します。
その特徴の一つが、組織として推奨する開発方法や構成、セキュリティ対策などのベストプラクティスを「ゴールデンパス」として提供することです。開発者は案件ごとに多数のツールや構成を比較・検討したり、セキュリティやネットワーク要件への対応方法を一から考えたりすることなく、推奨された方法に沿って開発を進めることができます。
例えば、ブラウザーから利用できる統合開発環境(Web IDE)、クラウド環境を構築するInfrastructure as Code(IaC)テンプレート、ソースコード管理、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)、セキュリティチェック、監視・ログ管理、生成AIの利用環境などを、企業固有のルールやベストプラクティスを反映した共通機能として提供します。これらをセルフサービスで利用できるようにすることで、環境準備や申請・調整にかかる時間を短縮するとともに、何を選び、どのように構成すべきかを考える開発者の認知負荷も軽減できます。
図表1:プラットフォームエンジニアリングの概要
これまで各開発チームが個別に担っていた、環境準備やツール選定、セキュリティ対応、関係部門との調整など、顧客価値の創出に直接つながらない周辺業務を、プラットフォームとして集約・仕組み化します。これにより、各開発チームはこうした業務に時間や意識を取られることなく、本来の価値創出に集中できるようになります。
一方、プラットフォームは一度構築して終わるものではありません。開発技術や開発者のニーズが変化し続ける中、開発者を社内の「顧客」として捉え、利用状況やフィードバックをもとに継続的に改善し、社内プロダクトとして育てていくことが重要です。
そのためには、プラットフォームの企画・開発から運用・改善までを一貫して担う専門のプラットフォームチームが必要です。プラットフォームチームは、利用者の声や新たな技術を素早く取り込みながら、継続的に価値を高め、各開発チームが価値創出に集中できる状態を支え続ける役割を担います。そのため、プロジェクト単位の一時的な体制ではなく、継続的な改善を担う専門組織として運営していくことが求められます。
図表2:よくある開発現場の課題・要望イメージ
また、優れたプラットフォームを整備するだけでは、必ずしも利用は広がりません。各開発チームには、これまで積み上げてきたやり方があります。その中で利用を広げていくには、経営層や現場の開発者に価値を伝え、利用者を巻き込む活動が欠かせません。
ある大手金融系IT企業のクラウド推進組織では、これまで、現場の開発を支援するためにさまざまな環境や施策を整備してきました。しかし、提供者側で必要だろうと考えたものを中心に整備していたため、現場のニーズとのずれが生じ、せっかく用意した環境や施策も十分に認知・利用されない状態が続いていました。
そこでPwCコンサルティングは、開発者へのアンケートやインタビューを通じて実際の課題やニーズを把握し、現場の開発者を巻き込んだワークショップやプロトタイプによる検証を実施しました。現場のフィードバックを反映しながらプラットフォームを具体化するとともに、経営層へのデモを通じて取り組みの価値を共有し、段階的に提供範囲を拡大しました。結果として、開発者向けプラットフォームの提供開始からわずか2カ月で、20案件、100名以上に利用が広がりました。
また、継続的に改善していけるよう、プロダクトマネジメントの考え方を取り入れた運営の仕組みづくりも進めました。
PwCコンサルティングは、開発者への調査を起点に、開発者向けプラットフォームの提供価値や対象ユーザー、優先するユースケースを整理し、構想策定から設計・開発、利用定着までを一貫して支援します。
また、プラットフォーム構築後にも、開発者の声や新たな技術を継続的に取り込みながら改善することで、専門のプラットフォームチームの立ち上げをサポートします。
チームの立ち上げでは、プロダクトマネジメントやアジャイルな開発・運営を取り入れ、利用者の声をもとに継続的に価値を高めていく運営・文化の定着に伴走します。支援過程においては、私たち自身もアーキテクチャ設計や実装、運用設計に関与し、クライアントとともに実際の開発・運用を進めるため、実務を通じた技術・ノウハウの移転が可能です。また、トレーニングやワークショップを実施し、段階的に内製化を進めることで、クライアントがプラットフォームの企画・開発・運用・改善を主導できる体制づくりをサポートします。
PwCコンサルティングは、こうした取り組みを通じてプラットフォームを整備し、開発者に継続的な価値を提供する社内プロダクトとして育てるとともに、開発スピードとガバナンスを両立できる開発組織への変革を支援します。
DXをデジタル技術導入で終わらせない。組織や仕組みの抜本的な変革を支援します。
不確実性が高まる経営環境においては「仮説検証を繰り返すアジャイルアプローチ」が求められています。PwCのアジャイル化推進支援は、伴走型でのトライアル&エラーで成功体験を積み重ねながら、クライアント企業独自のアジャイル文化の醸成と、ビジネスへの早期の貢献をサポートします。
PwCは、クラウドの活用によるコスト最適化と運用効率化の実現はもちろんのこと、最先端のテクノロジーを活用するなどし、その先にある新たな価値創造を見据えてクライアントを支援します。
PwCはアマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用し、クラウドサービスの実現を支援します。
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