統合報告の企画立案/価値創造ストーリー作成支援

統合報告とは

統合報告は財務報告などの組織報告の発展とされていますが、一方で有価証券報告書などの他の報告書やコミュニケーションとはさまざまな意味で異なり、組織の短・中・長期の「価値創造」に焦点を当てた報告書です。開示義務は課されていないものの、財務資本の提供者に対して、組織がどのように長期にわたり価値を創造、保全または毀損するかを説明する資料であり、従業員・顧客・サプライヤー・事業パートナー・地域社会などの「組織の価値創造能力」に長期的に関心を持つステークホルダーにとって有益な情報であることから、こうしたステークホルダーからは企業に対して統合報告の開示要請が求められています。

上記を踏まえると、統合報告は企業が中長期的な成長ストーリー(価値創造のストーリー)を発信する報告書と言えます。自社がどこを目指すか、それを目指す上での自社を取り巻く外部環境(メガトレンド、社会課題)は何か、外部環境による企業のリスクと機会(自社の重要課題)は何か、それらを踏まえてどのような戦略・リソース配分や取り組みを行い、結果として社会にどのような良い影響を及ぼすことができるか――こうした内容を取りまとめることが求められています。

統合報告が求められる背景

統合報告に対する投資家の期待の高まり

ESG投資が伸長する中で、投資家は企業評価を行う際に過去実績を分析するだけではなく、企業が無形資産を活用しながらどのように将来の成長を目指しているのかを考慮し始めています。

国内における発行企業数の増加

経済産業省の企業情報開示のあり方に関する懇談会(日本の企業情報開示の特徴と課題2024年5月1日、7日)によると2023年時点で1017社が統合報告書の発行を行っています。

世界的な非財務情報開示基準の統合の動き

国際財務報告基準を策定するIFRS財団が国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立した他、日本においてもサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が発足しました。

また、国際統合報告評議会(IIRC)とサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が合併し、Value Reporting Foundation(VRF)が設立されましたが、その後IFRS財団に統合されています。

読み手(投資家などのステークホルダー)が期待する統合報告とは

資本市場区分の再編やコーポレートガバナンス・コードのアップデートはもちろんのこと、シェアホルダー資本主義からステークホルダー資本主義へのシフトなど、世界的なESG情報開示のトレンドを追随することが求められる他、特に日本においては、企業の持続的な価値創造ストーリーに個性を盛り込むことが、より一層重要になっていくと考えます。

企業が描くべき価値創造ストーリーとは何でしょうか。IIRCのフレームワークでは、「価値創造」を「組織の事業活動とアウトプットによって資本の増加、減少、変換をもたらすプロセス」と定義しています。企業の価値創造ストーリーでは、ステークホルダーに対して「価値創造」の仕組みをストーリー性を持って伝えることが重要です。

企業における課題

一方、企業においてはいくつかの課題があります。

  • 統合報告に実態や個性の訴求が求められる傾向は感じているが、具体的に何をどのように対応すべきか。

  • 統合報告の質を改善・向上させる必要性を感じているものの、質を改善・向上させるための具体的なアプローチが分からない。開示情報を充実させるにも、何の項目についてどのように充実させるべきなのか。

  • 統合報告作成の適正なボリュームはどの程度か。

  • 非財務情報の制度化が進み、有価証券報告書やサステナビリティレポートへの開示を強化しなければならなくなっており、開示内容の重複が生じている。統合報告の位置付け、役割をどうするか悩んでいる。

  • 次年度の統合報告の検討をいつから始めたら良いか分からない。

統合報告は開示して終わりではなく、統合報告を活用して読み手(主に投資家)との対話を促進することが重要です。つまり統合報告書はステークホルダーとの対話を促進するツールであり、社内外の対話「相手」と「タイミング」「方法」を明確にすることが求められます。さらに、対話結果のフィードバックを経営・事業部門へ共有するタイミングやその結果を受けた取り組みについても、同時に検討しておくことが重要です。

統合報告書におけるPwCの支援

国内外で非財務情報開示の取り組みが2020年以降加速したことを踏まえ、今後は形式的なものではなく、実態が伴った開示・対話がより一層注視されるものと思われます。統合報告書においては、自社にとっての価値創造ストーリーがステークホルダーに伝わる内容になっていることが最も重要であると考えます。そのためにも、今までの開示に対してステークホルダーからどのような指摘があったかを把握することで、正しくきちんと伝わっているか、不足している情報は何かを明らかにした上で、どのような情報をどこに、いつ開示するかを明確にしておくことが鍵となります。

また、統合報告自体は毎年開示していく企業が多いとは思いますが、その内容については「単年で開示情報が充実するか」と言うとそうではありません。ステークホルダーからの指摘や他社との比較の上で構成を検討していく中で、数年単位で課題の改善、高度化に取り組む企業が多いのが実態です。そのため、企業が検討する中期経営計画の期間で、開示の大方針を整理することも一案です。

私たちは蓄積された統合報告支援のナレッジや、国内外の動向理解、サステナビリティ先進企業の統合報告の分析・理解に関する知見を基に、企業の要望に応じてオーダーメイド型の統合報告の開示・対話の中身(コンテンツ)作成に関する助言・支援を実施します。

 

進め方

支援例

現状の課題確認

基準策定機関のフレームワークやWICIやGPIFで評価の高いレポートより重要な要素を整理し、過去のレポートに対する投資家や社員などのステークホルダーからのフィードバックを基に課題と改善点を整理します。

  • 対話結果の確認
  • ベンチマーク調査

開示媒体の位置付け整理

Web、有価証券報告書、サステナビリティレポートと開示媒体それぞれの目的、位置付けを整理します。

位置付けの整理と合わせて、構成概要やボリューム、過去~現在~未来のどの時間軸の情報を重視するかなど議論の上、整理します。

  • 開示媒体の位置付け整理
価値創造ストーリー案の検討 国際統合報告フレームワークを参考にPwCで作成したフレームワークを活用し、価値創造ストーリー案を企業との議論を通じて整理します。
  • 価値創造ストーリーの整理
統合報告構成案の検討

価値創造ストーリー案を基に全体構成案、および個別内容の記載の方向性を検討。

ここでは競合他社や優良開示例を参考に検討を進めます。

  • 構成案の検討
  • 台割の作成
作成された統合報告のドラフト確認

報告書のドラフトに対し、全体ストーリーとの整合性や前フェーズで整理した構成との整合性を確認します。

必要に応じて優良開示例を調査し、提供します。

  • 原稿のレビュー

なお、上記の支援内容については、統合報告書のページ自体を制作(ドラフト)、デザインすることではなく、企画立案をサポートすることを主としています。

統合報告書の各ページを制作(ドラフト)、デザインが必要な場合は別途ご相談ください。

主要メンバー

田原 英俊

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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政田 敏宏

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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