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LIBOR移行対応アップデート―ハイライト(2021年6月1日~15日)

今号では、LIBOR移行に関し国際的な協調・一貫性を促すFSBの声明と、これに賛同する国際機関・規制当局の動き、また信用感応度の高い代替金利指標に対する公的セクターの見解などについて取り上げます。

1.LIBOR移行に関するFSBの声明:世界的に一貫性のある対応を

金融安定理事会(FSB)は、LIBOR移行に関する一連の声明および文書を発表しました。本文書には、さまざまな国のワーキンググループや規制当局が設定した暫定的なマイルストーンなどと合わせて、LIBORの公表停止日を反映した最新の世界的な移行ロードマップが含まれています。

最も頻繁に使用される米ドルLIBORの主要テナーは2023年6月まで公表が継続されますが、FSBのロードマップは2022年1月以降、米ドル建てを含む全ての新規取引を代替金利指標で行うことに対する期待を強く示しています。FSBは各国の規制当局に向けた別の声明において、米国銀行規制当局が発表した監督指針を強く支持するとともに、全ての規制当局に対して、「米国の規制当局のメッセージとタイムラインを世界規模で強化する」重要性を強く主張しました。証券監督者国際機構(IOSCO)理事会は、このメッセージを支持する声明を発表し、「全ての市場参加者は、新規契約における米ドルLIBORの使用を可及的速やかに中止」すべきと呼びかけています。

また、FSBはローン市場における移行の遅れが依然として懸念材料であることを認め、市場参加者に対して、リスク・フリー・レート(RFR)に基づくフォワードルッキングなターム物金利の開発を待つべきではないと警告しました。声明とともに公表されたディスカッションペーパーでは、LIBORに代わる最も強固な代替手段として、過去の平均値の形であれ、前決めの形であれ、翌日物RFRが必要であることが解説されています。また、フォワードルッキングなターム物RFRが利用できるようになったとしても、その適用が可能な金融商品は「比較的狭い範囲」にとどまり、「デリバティブ市場ではなく、特定のキャッシュ商品に集中」すると考えられます。

FSBは、キャッシュ商品のLIBOR移行をさらに支援するために、キャッシュ商品のフォールバックに国際スワップデリバティブ協会(ISDA)のスプレッド調整値を用いることを支持する声明を発表し、デリバティブとキャッシュ商品のフォールバックにおける一貫性の促進を図っています。ISDAスプレッド調整は、LIBORとデリバティブ契約の代替金利指標として指定されたさまざまなRFRとの間の経済的差異を反映し、補正することを目的に開発されたものです。

FSBのLIBOR移行に関する声明と文書の発表と同時に、国際資本市場協会(ICMA)は、公的セクターの代表者によるパネルディスカッションの録画を公開しました。英国金融行為監督機構(FCA)、米国連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、スイス国立銀行(SNB)のそれぞれの代表者が、LIBOR移行に伴う残された課題、継続的な国際協調の必要性とコミットメント、LIBORの公表停止に向けた公的セクターから市場参加者への重要なメッセージについて議論しています。

PwCの見解

LIBOR移行における協調性と一貫性は、長い間、大きなテーマとなっていました。例えば市場参加者は以前よりたびたび、異なる商品への移行方法、RFRの使用に関する市場慣行(コンベンション)、その他の一連の法規制や運用上の問題について一貫性を求めています。このセンチメントはICMAのパネルディスカッションでも明らかであり、当局者は一致団結したかのように、さまざまな地域の当局間で調整が行われていることを市場にアピールしています。

市場参加者は、各国の規制当局が2022年1月以降、米ドルLIBORを参照する新規商品の発行を事実上一律に禁止するというFSBの呼びかけに従うことを期待しています。すでにFCA、FINMA(スイス金融市場監督機構)、HKMA(香港金融管理局)などの国際的な規制当局は、米国の規制当局が発表したガイダンスに沿って、新規商品における米ドルLIBORの使用を制限する意向を明らかにしています。また、FSBの声明発表から間もなく、オーストラリアの銀行規制当局も、FSBと米国銀行規制当局が発表したガイダンスを支持する共同声明を発表し、新規契約におけるあらゆるLIBORの使用を、可能な限り早急に、そしていかなる場合でも2021年12月末までに終了させることの重要性を改めて表明しました。2021年12月以降、LIBORの新規商品における使用は世界的に終焉を迎える運命にあると思われます。

公的セクターのパネルディスカッションでも繰り返し述べられていますが、FSBがLIBORの代替金利指標として翌日物RFRを支持していることは、他の代替金利指標を検討している市場参加者にとって最も重要な考慮事項となるはずです。特に米ドル建てローン市場では、信用感応度の高い代替金利指標が引き続き注目を集めています。規制当局は折に触れ、企業はLIBORに代わる適切な代替金利指標を自由に選択することができると認めていますが、市場参加者は、このようなコメントを信用感応度の高い代替金利指標に対する全面的な支持の表明と捉えるべきではありません。

規制当局の目には、これらの金利がLIBORに類似していることが、運用上の利点としてではなく、むしろ不利益をもたらすものとして映っています。例えば、米国証券取引委員会(SEC)のGary Gensler委員長は、最近行われた業界イベントでのコメント(動画開始から32分10秒)の中で、金融市場の安定性への影響に対する懸念を表明しました。同氏は、「非常に小規模な無担保コマーシャルペーパー(CP)や譲渡性預金(CD)市場に基づいて、金利指標を設定しようとする者がいる」と率直に懸念を示しており、後述する米国財務省の金融安定化監視委員会(FSOC)の会合でも同様の批判を行っています。

信用感応度の高い金利指標の使用を検討している企業はデューデリジェンスを行い、金利指標の算出に使用される市場の取引量、市場ストレス時に予想される挙動や会計・税務上の影響などを厳密に評価する必要があります。しかし最も重要なのは、監督当局や顧客に自社の選択の根拠を説明する準備をしておくことでしょう。

2.SOFRファースト:ターム物SOFRは2番目?

米国商品先物取引委員会(CFTC)の市場リスク諮問委員会(MRAC)のベンチマーク改革小委員会は、2021年7月26日を、インターディーラーブローカーが米ドルの線形スワップ取引のコンベンションをLIBORから担保付翌日物調達金利(SOFR)に切り替える目標日として推奨しました。この目標日以降、LIBORを参照する線形スワップの画面は、情報提供のみを目的として利用され、2021年10月22日以降、完全に削除される予定です。「SOFRファースト」と呼ばれるこの取り組みは、2021年5月に英ポンドデリバティブ市場におけるスワップ取引のLIBORからポンド翌日物平均金利(SONIA)への移行を加速させるために実施した取り組みを模範としたものです。詳細は、FAQをご参照ください。

米国代替参照金利委員会(ARRC)は、この推奨を歓迎し、市場における広汎な採用を奨励しています。この取り組みは、同日に開催されたLIBOR移行の最終年にかかるARRCの第3回SOFRシンポジウムの主要トピックにもなっています。今回のシンポジウムでは主にデリバティブ市場における移行に焦点が当てられました。

CFTCによれば、LIBORからSOFRへの移行は、米ドル建てスワップ市場の「非常に大きなシェア」に影響を及ぼし、SOFRを参照するデリバティブ取引全体の流動性を急激に高めると期待されています。ARRCは以前、SOFR先物の取引価格に基づいて構築されるフォワードルッキングなターム物SOFRを正式に推奨する前提として、SOFRデリバティブの取引が活発であることを挙げていました。ARRCはその声明において、ターム物SOFRは「気配値コンベンション(quoting conventions)の変更が実施されれば利用可能になるだろう」とのFRBのRandal Quarles副議長(銀行監督担当)のコメントを引用しています。

PwCの見解

英ポンドデリバティブ市場では、インターディーラースワップ取引の気配値コンベンションを英ポンドLIBORからSONIAに移行させたことで、SONIAのスワップ取引が著しく増加しました。2021年の最初の数カ月間は、英ポンドLIBORがデリバティブ取引の大半を占めていましたが、5月に気配値コンベンションがLIBORからSONIAへと移行したことで変化が現れました。6月には、想定元本ベースでSONIAスワップが英ポンドスワップ取引全体の70%近くを占め、リスク調整ベースではさらに高い割合を占めるようになりました。

「SOFRファースト」も同様に、SOFRスワップ取引の流動性を高めることになると思われますが、米ドルデリバティブ市場の場合、さらに厳しい課題を乗り越える必要があるでしょう。ISDAの最新のRFR採用指標によると、2021年5月のSOFR金利デリバティブのリスク調整後取引量は、米ドルデリバティブの全取引量の10%を大きく下回っています。

多くの市場参加者にとって、ARRCが推奨するフォワードルッキングなターム物SOFRに関する見通しの改善は、大きなニュースとなるでしょう。ターム物SOFRは、以前から運用のしやすさを重視する一部の市場で実務への適用が期待されています。金利計算期間の開始時に金利を把握することができるターム物SOFRは、経済的に同一ではないものの、LIBORのようなフォワードルッキングな金利と同じような感覚で使用することができます。

最近、一部の市場参加者は、日次の後決め金利計算の複雑さに対する懸念を理由に、米ドルLIBORの代替としてフォワードルッキングな信用感応度の高い金利指標に注目しています。ARRCのターム物SOFRの推奨が近日中に行われるのであれば、Quarles氏のコメントが示唆するように、新規商品にターム物SOFRがより広く採用されることになるでしょう。早ければ7月にもターム物SOFRが正式に推奨され、LIBOR移行の重要なきっかけとなる可能性があります。また、信用感応度の高い金利指標の使用について規制当局の監視を受ける可能性を懸念する市場参加者にとっては、ちょうど良いタイミングとなるでしょう。

3.米国財務省FSOC会合:LIBORへの賛辞

米国財務省のJanet Yellen長官が主催した金融安定監督評議会(FSOC)会合で、米国の複数の銀行規制当局からLIBOR移行に関する最新情報が共有されました。夏を目前に控え、Quarles氏は「より強い金融システムの、広くて明るい高地」への道筋を説明しました。一方、会合に参加した公的機関の代表者は、LIBOR公表停止に向けた準備が遅れている組織に対する批判を展開しました。また、頑健な代替金利指標の必要性を繰り返し強調するとともに、市場参加者に対して、十分な取引量がない金利指標に頼るという過ちを繰り返さないよう注意を促しました。

会合における発言の要約では、監督機関が持つ強い信念と一貫性を正確に捉えることはできないかもしれません。したがって今回は、発言の一部を順を追って紹介します。

「LIBORの追悼の機会をいただき、ありがとうございます。(中略)LIBORからの脱却に向けた数年にわたる取り組み、LIBORの不正操作の歴史、そしてパネル銀行のLIBORの生成に参加しないという明確かつ不変の意思にもかかわらず、一部の市場参加者は、この世界の不可逆的な進化に自分たちは巻き込まれないで済むと信じているようです。また、戦略的に先延ばしの姿勢をとり、他の市場参加者が迫り来るLIBORの終焉に向けて必要な措置をとるのを、ただ見守っているだけの人もいます。移行に否定的な人たちや出遅れている人たちは、幻想的な思考に陥っています。LIBORは終わるのです」

Randal Quarles
FRB副議長(銀行監督担当)

「SOFRは、参照する取引量が他のLIBORの代替金利指標とは比較にならないほど多く、ほとんどの商品への使用に適した頑健な金利です」 「現在の代替金利指標に関する選択次第で、十分な取引量がない代替金利指標の使用によってLIBOR の欠点の一部が再現されることになりかねません。最近のデリバティブ取引においてこうした金利指標が使用されていること、今後増加し得ることを懸念しています」

Janet Yellen
米国財務省長官

「12月31日はそれほど先のことではなく、市場参加者は移行計画を真に加速する必要があります」 「(Quarles)副議長は、SOFRをデリバティブ市場や資本市場において採用することで、広範なシステミックリスクを回避する重要性を強調しています。進むべき道は明らかであり、もはや先延ばしのための言い訳はできません」

Jerome Powell
FRB議長

「FSBは最近『広範に使用される金利指標は、特に頑健でなければならない』と述べ、この見解を支持しています。これに関し、私は多くの商業銀行がLIBORの代替として提唱している、ある金利について懸念を抱いています。この金利は、Bloomberg Short-Term Bank Yield Index (BSBY)と呼ばれています。(中略)BSBYの裏付けとなる市場は、市場が良好な時でも流動性が低く、危機時にはほぼ消滅してしまいます。昨年(2020年)の春、パンデミックの最初のストレスで(この指標が参照する市場の一つである)プライマリーCP市場は約5週間消滅しました」 「私たちは先日、プライムMMFのレジリエンスの低さ、特にストレス時のレジリエンスの低さについて議論したばかりです。この教訓を忘れてはなりません」 「(IOSCOは、)『指標が計測する価値(Interest)にかかる信頼性の高い市場を反映した』指標を確立する必要があるとしています。BSBYがその基準を満たしているとは思えません。また、FSBが求めるように、『特に頑健』であるとも思えません」

Gary Gensler
SEC委員長

「市場規制当局としては、市場参加者が、持続可能な道が明らかに見えているにもかかわらず、LIBORが陳腐化への道を機械的に進むのを黙って見過ごすことはできないでしょう」 「現状に甘んじるという選択肢はありません。また市場参加者は、終着駅までLIBORという列車に乗り続けることができると考えてはいけません。私たちは、SOFRへのスムーズな移行を確実にするために一丸となって行動し、転換のタイミングは今であることを、今日ここで行ったように明確に示していかなければなりません」 「LIBORが実際の(市場・経済)活動から切り離された時に発生するコンダクトリスクと安定性リスクを回避するために、取引を代表し、それを利用した商品の深さと幅に比例した(頑健な)金利指標に依存しなければなりません」

Rostin Behnam
CFTC委員長代行

「米国連邦住宅金融庁(FHFA)は、規制下の企業に対し、LIBORがなくなることを一貫して明言してきました」

Dr. Mark Calabria
FHFAディレクター

「SOFRは慎重に開発された頑健な代替金利指標であり、さまざまな市場環境下で確実に利用可能です」 「SOFRがデリバティブ市場やその他の市場で広く採用されることにより、金融システムの全参加者の金融安定性が促進されるでしょう。SOFRは幅広く利用することができ、すでに実績もあります」 「私たちは全ての銀行が規模にかかわらず、自行が選択した代替金利が、商品、資金調達ニーズ、業務能力に適したものであると証明することを期待しています」

Michael Hsu
米国通貨監督庁長官代行

「過去に私や他の米国連邦預金保険公社(FDIC)職員が述べたように、FDICは特定の代替金利指標を支持していません」

Jelena McWilliams
FDIC総裁

「私もLIBORを讃えるためではなく、葬り去るために来ました」

Todd M. Harper
信用組合管理機構議長

「各州の保険規制当局は、来る期限を踏まえ、保険会社がLIBORの代替金利指標に可能な限り迅速に移行することが非常に重要であると考えています」 「保険規制当局は、保険業界に最も影響を与える可能性のある3つの分野、すなわち、生命保険の積立金、投資とスワップ、法定会計(statutory accounting)に注目しています」

Eric Cioppa
メイン州保険局長

PwCの見解

規制当局は、移行作業の加速化を繰り返し呼びかけると同時に、SOFRに代わる信用感応度の高い代替金利指標に対する批判の声を強めつつあります。これまで規制当局は、勝者と敗者の明言を避け、米ドルLIBORの代替としてSOFRを用いることは、義務ではなく推奨であると認めてきました。しかし、LIBORの消滅に向け規制当局が一丸となる一方で、LIBORと性質が似ていると考えられる信用感応度の高い金利指標(CSR)に関連するリスクに対して注意喚起する協調的な取り組みも見られます。SECのGensler委員長は、これらの警告を最も強く受け止め、特定の金利指標を例に、その名前を挙げて注意を促しています。

もはや行間を読まずとも、安全性と健全性の観点から、SOFRが望ましいと考える公的セクターの意見は理解できるでしょう。政府のCSRの健全性に対する警告は、顕著になってきています。つまり、借り手(および貸し手)は、過小評価できないリスクを負ってCSRで取引を行っているということです。

LIBORが終焉に向かっていることは確かですが、規制当局が批判したからといって、CSRが直ちにLIBORと同じ運命をたどるとは限りません。いかなる変動金利商品も、借り手と貸し手の両方にリスクをもたらします。CSRの場合のリスクは、LIBORを使用する場合のリスクと類似しているかもしれません。例えば、基礎となる資金貸借市場における金利としての代表性の欠如、指標が入手できなくなったり規制当局からの監視リスクに晒されたりする可能性が挙げられます。しかし、SOFRの貸出金利指標としての使用は、一部の市場参加者において、アセット・ライアビリティ・マネジメント(ALM)上の課題となる可能性があります。最近の市場でのCSRへの関心の高さからすると、少なくとも一部の銀行にとっては、たとえ別のリスクが発生するとしてもその使用を真剣に検討する必要があるほど、ALMへの配慮が重要であることを示しています。

CSRの使用を検討している銀行は、使用には便益だけではなくリスクも伴うことを顧客に示し、コンダクトリスクを軽減する必要があります。リスクが公的に公知された今、銀行はむしろ、顧客が選択肢を理解していること、借り手と貸し手の双方が、発生するリスクを踏まえてそれぞれの対価を適切に受け入れていることを示さなければなりません。

※本コンテンツは、PwCが2021年6月に発刊した「LIBOR Transition Market update: Jun 1-15, 2021」の一部を抜粋し翻訳したものです。

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