知と戦略をつなぐポートフォリオマネジメント

  • 2026-02-13

製薬企業の研究開発を取り巻く環境は、今、かつてない不確実性に直面しています。モダリティの多様化、外部連携の拡大、投資利益率(ROI)の低下などにより、企業は「どこに資源を投じるべきか」という根本的な問いに常にさらされています。こうした状況に対応するため、R&Dポートフォリオマネジメント(PPM)はこれまで以上に重要な役割を担うようになりましたが、実際の現場では「案件が増えるのに止められない」「失敗の学びが組織に残らない」「評価が属人的になる」といった構造的な課題が繰り返し報告されています。

PwCは独自の調査研究および多数の研究現場・マネジメント層へのインタビューを通じ、従来のPPMではこうした課題を解消できない理由を明らかにしました。それは、従来のPPMが「案件選別の仕組み」として最適化されてきた一方で、研究段階特有の高い不確実性や暗黙知、学びの継承といった「形式知化しにくい領域」を十分に扱えていないためです。

本レポートでは、PPMを単なる評価・管理装置としてではなく、知と戦略をつなぐ媒介プラットフォームとして再定義する必要性を提起します。具体的には、以下の新たな2つの役割を提示するとともに、それを支える4つの基盤(知の仕組み化、評価の意味化、信頼のループ、イノベーションガバナンス)を紹介します。

  • 経営と現場の意思決定を支える「準備役」としてのPPM
  • 挑戦・失敗・学習を循環させる「知の仕組み」としてのPPM

これらの分析から浮かび上がるのは、PPMの再定義は単なるプロセス改善ではなく、研究開発組織そのものの再設計につながるという視点です。不確実性が高まる今、「なぜ挑むか」「何を学んだか」「どう次につなげるか」を組織レベルで扱えるPPMの構築が求められています。研究段階におけるPPMの本質的な難しさ、現場に存在する見えない壁、世界の先進企業の成功例を照らし合わせながら、未来に向けたPPMのあり方を具体的に示します。

本レポートの概要

  • 製薬企業の研究開発環境は不確実性が急上昇し、従来のPPMでは意思決定が機能しにくくなっている
  • 研究段階のPPMには、科学的不確実性、評価基準の曖昧さ、失敗知の不継承など特有の構造的課題が存在する
  • 現場では「止められないが増やせない」状態や、属人的判断・知識断絶・曖昧な延命判断といった“見えない壁”が生じている
  • PPMの役割を「意思決定を支える準備役」と「知と学びを循環させる仕組み」に再定義する必要がある
  • PPM進化の鍵となる4つの基盤として、知の仕組み化、評価の意味化、信頼のループ、イノベーションガバナンスを提示
  • PPMの再定義は、研究開発組織の思考様式・文化・制度を変えるアプローチであり、未来の価値創造を左右する

図表:ポートフォリオマネジメントの再定義

知と戦略をつなぐポートフォリオマネジメント

執筆者

ヴィリヤブパ プルック(エディ)

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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