ネットゼロ経済指標2022

経済全体でネットゼロを目指す野心的目標の採用が広がり続けているものの、脱炭素化の進展は過去12カ月間にむしろ減速しています。

PwCのネットゼロ経済指標(NZEI)は、G20各国がエネルギー関連のCO2排出量をどれだけ削減し、経済の脱炭素化を推進したかを示す指標です。このNZEIによれば、2021年の全世界の脱炭素化率は0.5%と過去10年以上で最低水準でした。

強まる経済への逆風、そしてエネルギー価格の高騰という難題が待ち受ける中、各国と企業は、脱炭素化の取組みをそれぞれの経済の未来の中心に据えるのであれば、重要な決断を下さなければなりません。

「2022年の結果は、野心的なネットゼロ目標を達成するためには行動を起こさなければならないことを私たちに気づかせる緊急のメッセージです。各国は、政策転換と投資機会の加速を通じて、レジリエンスが高く、手頃な価格のエネルギー、クリーンで生産的な産業、そして健全で公正な社会への道を拓くことができます。企業もまた、新たな機会を捉える準備を整えているようです。しかし、どうすれば私たちは気候アクションを変革アジェンダのトップに据えられるでしょうか」

Emma Cox,(PwC英国 グローバル・クライメート・リーダー)

世界の全体像

Net Zero Economy Index 2022

「悪化する気候非常事態から強く持続可能な経済への移行を果たすためには、脱炭素化を毎年15.2%進展させることが今、求められています。変化への意欲は見られますが、世界は現在、不安定な地政学的、経済的状況のただ中にあります。エネルギー価格の高騰、パンデミックで傷んだ経済を回復させ必要といった事情が最近の脱炭素化の進展を妨げています。今こそ、アクションと投資を辛抱強く続けることにより、各国はネットゼロ経済に向けて正しい道を歩むことができるのです」

Dan Dowling(PwC英国、ネットゼロ・ストラテジー&トランスフォーメーション、パートナー)

分析結果

2021年の世界の脱炭素化進展率はわずか0.5%

平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるには、世界の脱炭素化の年間進展率を15.2%まで加速する必要があります。

地政学的、経済的に不安定な状況の中、2030年までに世界の炭素集約度を77%低減させる必要があります。

ネットゼロ達成への道程は国やセクターによって異なる

企業と投資家にとって、気候アジェンダはますます重要な意思決定の一部になりつつあります。

戦略的協力がかつてないほど喫緊の課題に

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PwCの評価指標とメソドロジー

燃料係数、エネルギー原単位を含むPwCのメソドロジーと主要評価指標の詳細については、以下の「メソドロジーと評価指標」の項をご覧ください。

メソドロジー

ネットゼロ経済指標は、全世界のエネルギー関連CO2排出の脱炭素化を追跡しています。

この分析は、国ごとの燃料種別のエネルギー消費量と、石油・ガス・石炭消費量に基づくCO2排出量を取りまとめたBP社のStatistical Review of World Energy(世界エネルギー統計レビュー)をもとにしています。

世界のカーボンバジェットとは、IPCCの地球温暖化に関する1.5℃特別報告書から引用した、全世界の化石燃料排出量の推定バジェット(許容できる最大量)を指します。気温上昇が限度内に収まる可能性および不確実性、二酸化炭素除去(CDR)技術の利用を含む一連の前提条件に基づいて、これらのカーボンバジェットは推定されています。

AFOLU(農林業およびその他の土地利用)による排出および非CO2排出は本分析から除外しました。ネットゼロ経済指標の分析では炭素隔離を計算に入れていません。したがって、このデータを各国の排出インベントリと直接比較することはできません。

GDPは購買力平価(PPP)ベースで測定しました。

データソース:BP、IEA、世界銀行、OECD、PwC

G7の構成:カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国

E7構成国:ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコ

G20構成国:G7諸国、E7諸国、アルゼンチン、オーストラリア、韓国、サウジアラビア、南アフリカ、EU

炭素集約度

ネットゼロ経済指標の主たる目的は各国と世界の炭素集約度(CO2/GDP)の算出および気温上昇を1.5℃以内に抑えるために必要な炭素集約度の変化率の追跡です。

そこで、IPCCのカーボンバジェットを用いて、今後どれだけの排出削減が必要かを計算し、それをGDP増加予測値で除しました。

これにより、GDP予想成長率を維持するために削減しなければならない排出量が示され、経済成長と排出を切り離すために必要な取組みの規模についての知見が得られます。

燃料係数

燃料係数(CO2/エネルギー)は、消費エネルギー1単位につきどれだけのCO2が排出されるかを表します。簡単に言えば、エネルギー消費がどれだけ環境に優しいかを示しています。

これは、ある国のエネルギーミックスが再生可能エネルギー源にどれだけシフトしているかの指標となります。最も排出量の多い化石燃料(石炭など)からの脱却度合が反映されます。

化石燃料の種類によって、エネルギー1単位を消費するごとに排出されるCO2量は異なります。再生可能エネルギー源から得られるエネルギーを消費する場合、単位当たり排出量は微量またはゼロなので、燃料係数はゼロに向かって下がります。

エネルギー原単位

エネルギー原単位 (エネルギー/GDP)は、生み出されたGDP単位当たりのエネルギー消費量を表します。

これは、ある大きさのGDPを生み出すためにどれだけのエネルギーが必要かを示します。

エネルギー原単位は、政策、標準、技術の成果としてのエネルギー効率、価格設定と行動の変化、経済の産業部門構成、エネルギー効率の高い技術とインフラへの投資、気候がエネルギー使用に与える影響といった多種多様な要因の影響を受けます。

主要メンバー

片山 紀生

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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本多 昇

ディレクター, PwCサステナビリティ合同会社

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インサイト/ニュース

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シリーズ「価値創造に向けたサステナビリティデータガバナンスの取り組み」 第2回:統合管理を含めたデータガバナンス/マネジメントの要諦

多様なテーマを抱えるサステナビリティの領域におけるデータガバナンス/マネジメントを推進するにあたり、個別最適に陥りデータの全社的な利活用に至らないことが課題とされています。本コラムでは、組織横断的なデータガバナンスが必要な理由、そしてその推進の要諦を解説します。

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