【開催報告】

自動車業界のGX関連動向

  • 2025-12-10

PwCコンサルティング合同会社は2025年9月19日、公益財団法人地球環境戦略研究機関主催のGXエグゼクティブビジネススクール「自動車業界のGX関連動向セミナー」に講師として登壇しました。

近年自動車業界では、各国政策の強力な後押しも受け、カーボンニュートラルに向けた取り組みが他業界に先行する形で進展しています。この取り組みにおいては、完成車メーカーのみが対象になるだけでなく、自動車部品メーカーも含めたサプライチェーン全体での対応が求められています。このような自動車業界における、グリーントランスフォーメーション(GX)の動向および取り組み概況を、自動車産業内外の中小企業に向けて解説しました。本稿ではその概要を紹介します。

GXを取り巻くルール動向

本章ではPwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャーの金子多希が、カーボンニュートラルに向けた政策・規制について解説を行いました。

GXを取り巻くルール動向

気候変動に対する取り組みは1990年頃から国際機関や政府主導で推進されてきましたが、近年は民間イニシアチブの活性化や、経営課題と環境への配慮を織り込んだ経済活動との連動もあり、一層加速しています。これらを受け、主要国はカーボンニュートラル(CN)実現に向けて、気候変動目標の立案、政策・規制の導入、情報開示規制などを推進しています。日本では「グリーン成長戦略」や「GX推進戦略」を策定し、自動車を含む各産業で投資戦略を進めています。

排出に係る情報開示の動向

CNに対する政策の一部として、サステナビリティ情報開示も各企業に対応が求められるテーマの一つです。従来の情報開示では「財務情報」が中心で、サステナビリティ情報のような「非財務情報」の開示は各企業の独自の取り組みとして捉えられてきましたが、今後は規制により、あらゆる企業が対応を求められます。現在、グローバルの地域毎に異なる開示規制が検討されていますが、各規制に個別に対応するのではなく、横断的に捉えて適応していくことが重要です。

日本では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ:Sustainability Standards Board of Japan)により、開示基準の整備・展開が進められており、2027年以降、時価総額に応じて段階的に開示・保証義務化が導入予定となっています。

今や、企業にとってGHG(温室効果ガス)排出量の開示・削減への取り組みは、規制対応による信頼の獲得や、経営効率化・成長力向上などの企業価値を高める戦略的な取り組みとして、重要なものと位置付けられています。

自動車業界におけるGX

本章では、PwCコンサルティング合同会社 マネージャーの秋山輝幸が自動車業界において企業に求められる具体アクションの要点である「全体管理」、「環境投資」、「LCA(Life Cycle Assessment)」について解説しました。

全体管理

カーボンニュートラルに向けた取り組みは、従来、バリューチェーン毎に施行されてきましたが、昨今では、情報開示や内/外部データ連携など、バリューチェーン横断での検討を要するケースが多くなってきています。そのため自動車のOEMは単独で対応することは難しく、部品メーカーも一体となった取り組みが必要です。部品メーカーも、各種規制対応のための計画策定や体制・管理プロセスの構築などが求められています。

環境投資

自動車産業における環境投資の一事例として、リソースサーキュレーションをご紹介します。欧州では、自動車産業の循環型経済移行を目的としたELV(End of Life Vehicle:廃自動車)規則の導入を検討するなど、自動車産業のサーキュラーエコノミーが加速しています。それに伴い車両製造においても、従前のようなバージン原料の調達に限らない、リサイクル原料調達の重要性が増しています。

昨今、日欧における自動車のOEMではリサイクル材の使用率に高い目標を設定しており、2050年には70%にも達すると推定されます。今後特に、車両製造においてCO2排出量の多くを占める鉄・アルミ・バッテリー材料の製造では、リサイクル材の活用が重要なオプションとなり得ます。部品メーカーを含む各企業は、リサイクル材の使用とコスト・機能を両立させた製品開発への対応が求められると想定されます。

LCAによる環境品質の見える化

組織におけるサプライチェーン全体への環境評価を目的とした「組織LCA」に加え、近年では各製品を対象とした「製品LCA」への注目が高まっています。

製品LCAは特定の製品のライフサイクル全体での排出量であるため、自動車のOEMのみでは算出できず、部品を供給する多数のサプライヤーと連携した算定が必須となります。その際、各企業のCO2排出量に関する情報を適切に管理・開示・算出に活用を実現できる企業間のデータ連携手段として、データ流通基盤が必要となります。日本では、企業や業界、国境をまたぐ横断的なデータ連携・システム連携の実現を目指す取り組みとしてOuranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム)というデータ流通基盤の整備がなされており、自動車産業でのCO2排出量のデータ連携から構築が進む見込みです。また、各国で製品CFP(Carbon Footprint of Products:カーボンフットプリント)規制の検討が進む中、将来的には、車両一台ごとにCFP規制が設定される可能性も高まっており、企業間のデータ連携体制の構築や、企業横断でのCO2排出量管理体制の構築は、喫緊の課題です。

主要メンバー

金子 多希

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

秋山 輝幸

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

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