デリバリーモデル変革による監査業務変革

  • 2023-08-25

はじめに

近年、企業の会計不正を含む不祥事は公表されているだけでも毎年数十件で推移しており、企業のガバナンスの重要性や会計監査人の責任などが問われています。これらの不祥事に対応して、例年、監査基準や実務指針等の改訂・強化が行われており、監査品質向上のための監査手続は増加の一途をたどっています。

一方で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展によるデータドリブンの企業経営やリアルタイムの会計データに基づく会計監査の実現に対する期待も高まっており、デジタルツール活用による会計監査の効率化に伴う生産性の向上も一部で図られています。また、持続可能な開発に関する国際目標(SDGs)や環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から、財務情報のみならずサステナビリティ情報の開示が2023年3月期から上場会社に義務づけられるようになりました。これらに含まれる非財務情報に対する保証としての監査も、社会からの期待が高まっています。

本稿では、このような企業経営や監査環境の変化におけるデリバリーモデル変革、すなわち、従来の「公認会計士のみによって会計監査を実施していた伝統的なデリバリーモデル」から「適切に役割と責任を分担した上で、公認会計士と、公認会計士の資格は保有しないが会計スキルとデジタルスキルを有する人財のリソースとを組み合わせて、高品質な監査を実現する革新的なデリバリーモデル」による監査業務への変革の取り組みを、グローバルと日本に分けて解説します。

その上で、デリバリーモデル変革の会計監査以外のアドバイザリー領域への展開と、デリバリーモデル変革を担うテクニカル・コンピテンシー・センター(TCC)の未来について、デリバリーモデル変革を推進してきた経験を踏まえて見解を述べています。なお、本文中の意見に係る部分は、全て筆者個人の私見であり、PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)の正式見解でないことをあらかじめお断りします。


1 デリバリーモデル変革に関するグローバルの取り組み

(1)サービスデリバリーセンターの設立と拡大

PwCでは、2000年代後半からPwC米国やPwC英国を中心にデリバリーモデル変革の検討を進めてきました。PwC米国やPwC英国が英語圏であることとワールドワイドの人財マーケットの観点から、2010年7月1日にインドにサービス・デリバリー・センター(SDC)を設立し、インドの会計スキル人財を採用して育成から始めました。当初は監査エンゲージメントチームのアドミニストレーション業務や監査業務から確認手続や詳細テストといった一部のタスクを切り出し、会計監査の判断を伴わない業務が中心でした。現在では100を超えるサービスメニューがあり、会計監査業務のみならずリスクアシュアランスなどの領域や、税務やアドバイザリーの領域にも大きく広がっています。

PwCグローバルネットワークで業務品質を担保するために統一の品質管理基準を定め、拠点も、フィリピン、マレーシア、ポーランド、メキシコ、アルゼンチン、南アフリカなどにセンターを設立し、拡大しています。インドは現在でも最も規模が大きいSDCですが、インドの人財マーケットの強みは若い世代が多いこと、採用する過半数が米国やインドの会計士資格を有していることから、人財の採用および育成のためのコストが比較的低いという特徴を挙げることができます。

(2)コンピテンシーセンターとセンター・オブ・エクセレンスの設立と拡大

判断を伴う勘定科目の監査手続を標準化して集中化する取り組みが2012年頃から始まりました。各国の法規制や文化の違いから、主にそれぞれの地域で設立され、現金および預金、固定資産、人件費のような比較的複雑性が低い領域を担当するコンピテンシーセンター(CC)と、税金、退職給付、企業結合など比較的複雑性が高い領域を担当するセンター・オブ・エクセレンス(CoE)に分けて運営が行われてきました。その後、PwCグローバルネットワークとして統一した品質管理基準が作成され、17の勘定科目の標準監査モデルが展開されています。

DXの伸展により、標準化された一部の業務については自動化の取り組みが進んでいます。2019年には、PwC英国が中心となって現金および預金の監査手続を自動化した「Cash.ai」が開発され、約100社に導入されました。Cash.aiは、人工知能(AI)を活用して被監査会社の文書を自動で読み込み、理解し、テストまでを行うデジタルツールです。導入初年度は被監査会社の現金および預金の業務プロセスや決算プロセスの標準化が必要でしたが、銀行勘定調整表、銀行残高証明書、為替取引関連書類、銀行の財務状況などのデータを自動で読み込み、監査調書まで作成できるため、監査時間を従来の半分以下に短縮し、効率化と品質向上を図っています。被監査会社にとっても、監査対応時間の削減や内部統制の強化につながっています。

(3)リモートチームメンバーモデルの台頭

SDCの体制が強化され規模が大きくなるにつれて、メンバーのスキルは向上し、経験も蓄積されてきました。そのような状況において、タスクベースで業務を切り出すのではなく、監査エンゲージメントチームの一員として年間を通じて働くほうがメンバーのロイヤリティおよびスキルの向上に寄与すると判断され、リモートチームメンバー(RTM)モデルというデリバリーモデルが開発されました。同時にメンバーのキャリアパスも整備され、ここ数年でSDCからRTMへのシフトが急速に進んでいます。また、PwCでは「次世代監査プラットフォーム」と呼ばれるAIとデジタル技術を活用した統合された監査モデルの導入を目指しており、RTMは次世代監査プラットフォームにおけるデリバリーモデルとして導入される見込みです。これに先駆けて、RTM導入ガイドなどの品質管理基準が策定され、リーダーシップチームや監査エンゲージメントチームが適切にRTMを導入できるように準備しています。

2 デリバリーモデル変革に関する日本の取り組み

日本ではPwCグローバルネットワークのデリバリーモデル変革に関する取り組みの一環としてSDCの利用が進められていましたが、日本特有の言語の壁を克服することが難しく、利用率が低いままでした。現在は自動翻訳ツールの活用などにより、言語の壁は一部克服していますが、抜本的な解決には至っていません。このような背景もあり、2017年頃から日本でのデリバリーセンターの設立を検討しはじめ、2018年7月にテクニカル・コンピテンシー・センター(TCC)を設立しました。TCCは、会計スキルとデジタルスキルを有する人財を採用育成し、業務の受け入れ、計画、実施、完了の全てのプロセスでエンゲージメントチームと一体となって専門的業務を遂行し、業務の標準化とデジタル化による生産性向上および高品質な業務提供を行うことをミッションとしています。日本のデリバリーモデル変革のロードマップのイメージ図は、(図表1)のとおりです。

そこでPwCあらたは、2030年に向けた新たな挑戦として、今後アシュアランスに求められるであろう3点(図表2)に対して、テクノロジーを活用したアプローチを行っています。このアプローチにより、次世代にも利用できるサステナブルな監査テクノロジープラットフォームを構築することで、「信頼のバトン」を次世代に渡すことができると考えています。大限に発揮し、監査に関わる全てのステークホルダーが心身ともに健康的な状態で活躍することで実現される監査です。 VUCA(社会やビジネスにおいて、環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が難しい状態)の時代に、社会に信頼を築き
図表1 :デリバリーモデル変革のロードマップ

TCCは日本特有の言語の壁を克服することを目的としていることから、SDCが実施するアドミニストレーション業務や監査業務の一部のタスクだけでなく、CCやCoEがカバーする領域も担当しています。対象拠点は東京、名古屋、大阪を中心に、ハイブリッドワークやフルリモートワークも可能です。また、標準化した業務を集約化して実施するセンターモデルと標準化していない業務も行う監査エンゲージメントチーム管轄のチームメンバーモデルの両輪で拡大しています。つまり日本のデリバリーモデルは、PwCグローバルネットワークのSDC/CC/CoEの領域はセンターモデルでカバーし、RTMの領域はチームメンバーモデルでカバーする「ハイブリッド型の日本独自のモデル」といえます。以下では、2018年7月の設立以降の日本の取り組みの概要をいくつかの観点から紹介します。

(1)人財採用と人財育成

日本では公認会計士試験の合格者が限られているため、会計スキルとデジタルスキルを有する人財を採用することはかなりの困難を伴いました。立ち上げ当初は、監査未経験の人財をアシスタントとして採用し、アドミニストレーション業務や確認状の発送・回収などの判断を伴わない業務から始めました。SDCのメニューを参考にタスクのメニュー化を図り、業務範囲を拡大し、採用も増やしてきました。SDCの業務が拡大すると、CCやCoEが実施する業務領域のニーズも高まっていきました。これらの領域を責任もって担う人財として、経理、内部監査、会計システム導入などの経験をもつ人財の採用を開始しました。さらには、会計やファイナンスを学ぶ大学生などから、未経験でもスキルを有する人財の採用も行っています。これらの人財採用のパイプラインを拡大することで、インドのように会計士人財の採用はできないものの、教育レベルが相対的に高い日本においては会計スキルとデジタルスキルを有する人財の採用が可能となりました。

その結果、多様なバックグラウンドをもつ、ダイバーシティに富んだ人財の採用も実現することができました。

日本はインドのように会計士資格を有する人財が多くはないことから、会計スキルとデジタルスキルを有していても監査の知識や経験はほとんどないケースが多く、人財育成のための研修やワークショップおよびOJT(On the Job Training)はこれまで以上に必要とされています。そのため、PwCグローバルネットワークが提供している監査の研修に加え、それらを補完する知識のインプット型の研修と実務的なアウトプット型のワークショップを部門として実施することで、部門全体の底上げを行っています。最近ではデジタルツールの活用が進んでいるため、デジタルツールを使いこなすためのワークショップが増えてきており、人財育成は部門として最も投資している分野の1つとなっています。

(2)業務の標準化とデジタル化

SDCのメニューやCC/CoEの17の標準監査モデルを参考にタスクのメニュー化を図る過程においては、年間の監査業務のタスクを分解して棚卸を行い、品質管理本部と連携し、標準化できる領域を特定して日本の標準モデルを整備し、TCCが実施できるものについてはマニュアルを作成してきました。これにより、誰でも標準モデルに基づき業務を行えるようになり、業務のレビュー時には誤りや異常値が発見しやすくなるなど品質向上にも寄与しました。

標準化された業務はセンターモデルに集約され、エンゲージメントチームからのリクエストを受け付けるポータルサイトが開発され、窓口が一本化されました。リクエストはチケット管理され、進捗なども確認できるようになりました。このように、センターモデルで実施する業務は全てチケット管理され、エンゲージメントチームがダッシュボードを通じて、どのような業務を依頼していて、それぞれの進捗がどうなっているのかがエンゲージメントごとに確認できるため、安心して業務を進めることができます。

レポートの出力や時価のチェックなどの単純な定型業務については、RPA(Robotic Process Automation)を活用して自動化し、人の手を介さずに業務を提供できるようになっています。現在では、クライアントマスターで情報を事前入力しておくことによりチケット起票も自動化し、リクエストを適切なリソースにアサインするためのチケット割り振りの自動化も実装しており、生産性の向上につながっています。

(3)センターモデルとチームメンバーモデルによる拡大

TCCの設立当初は、業務の標準化とデジタル化による業務の集約を主な目的としていたため、センターモデルによる拡大が志向されていました。そのため、タスクのメニューの拡大に合わせてセンターモデルを拡大していきました。特に、現金・預金、純資産、開示などの標準監査モデルは、日本の半数近くの監査エンゲージメントのセンター化を実現しており、標準化による品質向上につながっています。また、保険業など業種特有の領域やITシステムなど特定の領域の監査業務の標準化も進めており、センターモデルの拡大につながっています。

一方、PwCグローバルネットワークでは、RTMモデルへの移行が急速に進んでおり、標準化を継続しつつ、日本版のチームメンバーモデルの重要性を考慮するようになっています。標準化とデジタル化の波にしっかり対応しつつ、人財がロイヤリティをもって業務に取り組み、さまざまな業界や業種に関わりつつ成長につながる経験を積むことは、メンバーにとって財産になると考えています。3~5年単位でセンターモデルとチームメンバーモデルを両方経験することで、業務の幅を広げることもでき、標準化とデジタル化の変化の理解や体系立った監査経験を得ることにもつながっています。

このように、個人のキャリアは人財のローテーションによって経験を固定化せず、人財には業務の幅も広げつつ会計スキルとデジタルスキルをもって、さまざまな領域で活躍してもらうことが重要だと考えています。今後もセンターモデルとチームメンバーモデルのバランスを考慮しながら、両輪で拡大していくことが期待されます。

(4)アシュアランスアシスタントとテクニカルスペシャリスト

当初、TCCでは、SDCが実施するような業務領域にフォーカスしていたため、「アシュアランスアシスタント(AA)」という職種を設けていましたが、CCやCoEが実施する業務領域に拡大していくため、「テクニカルスペシャリスト(TS)」という職種を新設しました。それぞれの役割と責任は(図表2)のとおりで、これに応じて人事制度や必須研修などが設計されています。

また、AAやTSが1年目、2年目、3年目に何を学ぶべきかといったモデルケースも策定し、展開することで、監査未経験からどのように成長していけばよいのかを具体化しました。これによりAAやTSのメンバーが何を学んでいけばよいのかを理解できるだけでなく、プロフェッショナルとして会計士がAAやTSとどのように関わっていけばよいのか、プロフェッショナル会計士自身も何を求められていくのかを明確にすることができました。さらに、会計スキルとデジタルスキルだけでなく、チームをまとめる役割を果たせる十分な経験をもつ人財が、シニアTS(STS)やプリンシパルTS(PTS)として業務を行えるように体制を整備してきました。

こうした取り組みにより、AAからTSに転換する機会やTSからSTSやPTSにキャリアアップしていくといった、部門全体のキャリアパスが整備され、メンバーの働き方や仕事への価値観に応じた体制も整うことになりました。TCCには資格補助制度もあり、会計スキルやデジタルスキルの向上はもちろん、公認会計士やUSCPAを取得してプロフェッショナル会計士としてのキャリアをスタートする実績も増加しています。

図表2:アシュアランスアシスタントとテクニカルスペシャリストの役割と責任

役職 定義
アシュアランスアシスタント
  • 会計に関する限定的な知識および監査またはアドバイザリーの経験を有しており、テクノロジーの活用ができる人財。定型業務のうちデジタル化が困難な業務について、チームをサポートする業務を実施。
  • 簿記2級取得を推奨しており一定の研修を受講しているが、責任を伴う業務は実施できない。
テクニカルスペシャリスト
  • 会計に関する一定の知識と監査またはアドバイザリーの経験を有しており、業務標準化と自動化およびテクノロジーツールの活用により生産性向上に貢献できる人財。リスクの高くないエリアの監査およびアドバイザリー業務の手続を責任をもって実施。また、テクノロジーを活用したデータ分析を実施。
  • 簿記2級に加えて研修の受講を必須としており、責任をもって業務を実施できる。

(5)業務領域の高度化とデジタル活用による生産性改革

2023年7月時点、TCCには約200名のTS、約250名のAAが所属していますが、TCCのさらなる拡大に向けてTSのリソースを拡充予定です。これは、TCCの拡大に伴って比較的複雑性が低い分野の監査手続に関するニーズが急拡大していることもありますが、データドリブンの会計監査を目指す「次世代監査プラットフォーム」の導入に向けてデジタルツールを活用した会計監査手続の実施が期待されていることが背景に挙げられます。

従来、現金および預金の監査手続を実施していたところからCash.aiのようなデジタルツールが導入されたように、他の分野でもデジタルツールの開発が進んでおり、TCCのメンバーもこれらのデジタルツールを使いこなす必要があります。「サステナブルな監査を実現するAudit experienceの変革(図表6参照)」のテクノロジーマップに記載されていますが、デジタルツールにはデータ基盤や業務インフラのように全てのメンバーが使いこなす必要があるものと、データ抽出、データ加工、データ利用のプロセスで利用する専門性を必要とされるものに分けられます。データ抽出、データ加工、データ利用の領域については、センターモデルの中に専門チームを組成して、集約していく取り組みも開始しています。

このように業務領域の高度化が図られており、これらのデジタルツールの活用によって生産性改革を進めています。

(6)トップマネジメントによるカルチャーチェンジとKPI導入

これまで見てきたデリバリーモデル変革の実現には、既存の業務のやり方を大きく変えるだけでなく、マインドセットの変革を伴うカルチャーチェンジが必要となります。理屈では分かっていても、実際に行動に移すのは簡単ではありません。海外地域でも同様に、デリバリーモデル変革にはさまざまな課題を抱えながら現在も取り組んでいる状況です。

日本では、監査総時間に対する時間をKPI(Key Perfor-mance Indicator)として導入し、トップマネジメントからの継続的なメッセージを発信することで、カルチャーチェンジに取り組んできました。設立当初のTCC比率が10%未満だった頃は、プロフェッショナル会計士、TS、AAの役割と責任の理解がされておらず、TSとAAの知識や経験も不足していたため、目指すべき高品質な監査の実現に向けて困難に直面していました。しかしながら、TCC比率が10%を超えてきた頃から、徐々に浸透してきたカルチャーチェンジの効果やTSとAAの知識と経験の向上も相まって、TCC比率の拡大のためのKPIの達成につながってきていると実感しています。

3 会計監査以外のアドバイザリー領域への展開

会計監査以外のアドバイザリー領域においても、業務の標準化とデジタル化によるデリバリーモデル変革は実現できるものと考えられます。TCCの人財が有する会計スキルとデジタルスキルと、会計監査経験がベースになり、会計監査以外のアドバイザリー領域への展開が始まっています。

具体的には、以前からアドバイザリー部門が提供している連結決算アドバイザリー、内部監査アドバイザリー、J-SOXやUS-SOXなどの内部統制アドバイザリー、コンプライアンス系テスト業務などについては、チームメンバーモデルでエンゲージメントチームと一体になって業務を遂行しています。一方で、従来のアドバイザリー業務もDXにより進化しており、デジタルスキルをベースにしたアドバイザリー領域も拡大しています。例えば、「サステナブルな監査を実現するAudit experienceの変革(図表6参照)」のテクノロジーマップに記載したデータ加工領域でデータ分析ツールを活用したレポーティングプロセスの自動化は、さまざまな領域でニーズがあると考えられます。また、PwCが開発したリスク管理に関するベンチマークプラットフォーム「Connected Risk Engine」は、サイバーセキュリティ対策、内部監査など、企業を取り巻く多様なリスクに対する管理態勢の成熟度評価と業界平均値のベンチマークデータを提供しており、こうしたデジタルツールを活用したデリバリーもアドバイザリー領域として始まっています。今後は、このようなデジタルツールの開発も増えていくと考えられ、それらを活用したデリバリーが拡大していくことが予想されます。

情報の信頼性についても担保されていなければなりません。

4 TCCの未来

2018年7月に設立したTCCは、過去5年間で450名にまで拡大しました。諸外国のデリバリーモデル変革での目標に鑑みると、今後数年間で1,000名規模に拡大していくことが見込まれます。PwCあらたは、「Assurance Vision 2030」を公表しましたが、TCCは高品質なデリバリーの中核としてのブランドを備え、業界ナンバーワンを実現できる組織になっていくことが期待されています。そのためには、それぞれのメンバーが会計スキルとデジタルスキルを継続して高め、さまざまな業務を経験をすることでDXの環境の変化に柔軟に対応できる人財でいることが求められます。生成AIの飛躍的な進化や新規のデジタルツールの開発などの環境変化により、私たち自身も常にカルチャーチェンジをして業務のやり方を見直し、新しいデジタルツールを使いこなす人財であることを求められています。人財が全てである私たちにとって、人財育成に投資し続けることが、TCCが必要不可欠な組織になっていくために必要だと感じています。

PwCあらたは、デジタル社会に信頼を築くリーディングファームとなるため、人財がリードしテクノロジーが支えるアプローチでこれを実現したいと考えています。TCCは、会計スキルの継続的な向上と、前述のテクノロジーロードマップに示したデータ基盤や業務インフラ、データ抽出、データ加工、データ利用などのさまざまな領域でデジタルツールを活用して、監査およびアドバイザリーの生産性改革を実現していきたいと考えています。

情報の信頼性についても担保されていなければなりません。

執筆者

PwCあらた有限責任監査法人
アシュアランス・イノベーション&テクノロジー部
テクニカル・コンピテンシー・センター長
パートナー 尻引 善博