米国バイデン政権が税制改革案の一部詳細を含む予算教書を発表

2021-06-03

米国 Tax Topics
2021年6月3日

米国財務省は2021年5月28日(現地時間)、2022年度(2023年9月期)の予算教書(通称Green Book)を発表しました。予算教書は今後の議会での議論の叩き台となるものであり、2021年4月にバイデン大統領が公開した総額$4.1超米ドルの財政支出計画(米国雇用計画および米国家族計画)に充当するための各種の増税案の詳細が含まれています。

予算教書によると2022年度の財政赤字は1.8兆ドル(GDP比7.8%)であり、今後10年間にわたり毎年1.3兆米ドル超(GDP比4.2%)の財政赤字が継続することが想定されています。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応および各種大型経済対策の結果、2021年度の財政赤字は3.7兆米ドル(GDP比16.7%)となる見込みです。各種増税案の規模(今後10年間)は米国雇用計画に基づくもの(法人および事業への増税)で1.7超米ドル、米国家族計画に基づくもの(個人キャピタルゲイン増税等)で0.7兆ドルと見積もられています。

法人増税案の主な項目としては、連邦法人税率引上げ(21%から28%)、グローバル無形資産低課税所得(GILTI合算課税)の実効税率引上げ(10.5%から21%)、会計上の全世界利益が20億米ドルを超過する場合のミニマム税の創設、FDIIの撤廃が含まれています。個人所得税に関しては、最高税率引上げ(37%から39.6%)、100万米ドル超の納税者におけるキャピタルゲインおよび適格配当に対する通常所得税率での課税、相続・贈与に伴い一定の含み益資産が移転した場合のキャピタルゲイン課税が含まれています。

税制改革案のほとんどの項目は2022年1月1日以降開始事業年度からの適用が想定されていますが、一部項目については改正法成立後に開始する事業年度からの適用とされています。他方、キャピタルゲインに対する通常所得での課税は、「発表日より後(after the date of announcement)に認識される譲渡益」に対しても遡及的に適用を行うこととされており、政権関係者によると、当該発表日とは2021年4月28日(キャピタルゲイン増税を含む提案(米国家族計画)の発表日)を示すものとされています。

大統領予算案は議会での検討に向けた提案であり、法人税率の引上げ幅等、実際の改正案の内容は今後の超党派あるいは民主党内の議論に基づき決定されることとなります(例えば、一部の中道派民主党議員は連邦法人税率25%超への引上げに反対しています)。また、個人所得税におけるキャピタルゲイン税率引上げについては、近年の税制改正の傾向としては議会が遡及的な増税を承認したことはなく、また、詳細や施行日を示していなかった包括的提案(米国家族計画)に基づき遡及的適用を行う提案を政権が行うことは通常は行われていなかったため、今後の議論に留意が必要です。

本ニュースレターでは、予算教書に示された税制改革案の概要および想定される適用開始日についてコメントを行います。法人・国際税制項目の詳細については次回ニュースレターでお伝えします。

  1. 予算教書における税制改革案の概要
  2. 税制改革案の適用開始日

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