米国大統領選・各候補者の税制改革案と選挙後の税制改正議論の見通し

2020-10-30

米国では現地時間2020年11月3日(火)に大統領選・総選挙が行われます。大統領選では共和党で現職のドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン氏が争うほか、上院で約1/3議席・下院で全議席が改選の対象となります。本ニュースでは、大統領選各候補者の税制改革案の概要と、選挙後の税制改正議論の見通しについてお伝えします。

両候補者の税制改革案の概要

  • トランプ大統領は、2017年税制改正(いわゆるTCJA、Tax Cuts and Jobs Act)における個人所得税減税(殆どが2025年で失効)について恒久化を行うことを提案しています。加えて、2019年には、中低所得層の個人および法人に対して追加の減税を行う意向を示しており、政権内部からは連邦法人税率(21%)の更なる引下げが含まれる可能性が示唆されています。
  • バイデン氏は、高所得者および法人への増税を含む幅広い税制改革案を提示しており、増税から生じる歳入増を中低所得者層への減税措置および国内製造業促進やインフラ投資等の財政支出へ充当する意図を示しています。法人税では、①連邦法人税率の28%への引き上げ、②全世界ベースの会計上利益に対する代替ミニマム税、③国内製造活動への回帰を促す特別措置(GILTI合算課税の強化を含む)、④特定業界向けの特別措置(不動産業、金融業、クリーンエネルギー関連等)が含まれています。
  • 両候補者の税制改革案の比較については下記図表をご参照ください。

選挙後の税制改正議論の見通し

  • 大統領選でバイデン氏が勝利し、かつ、総選挙で民主党が上院過半数を奪回し下院過半数を維持した場合には、バイデン氏の税制改革案が実現へ動く可能性が高くなります。
    • 接戦州の多い上院(現議席は共和党53、民主党47)の選挙結果がキーポイントとなるものと考えられます。
    • ただし、実際の増税規模およびタイミングについては、最優先の政策課題となっている新型コロナ対策の追加経済措置の内容やその後の景気動向を踏まえての判断となるものと考えられます。また、民主党が上院過半数を奪回したとしても僅差の場合には、保守派を含む全民主党上院議員の賛意を得られない改正項目については修正・廃案となる可能性があります。
  • また、バイデン氏勝利の場合、総選挙結果の如何にかかわらず、トランプ政権下で実施された各種規制・行政措置について重要な変更が生じる可能性があります。
  • 大統領選でトランプ氏が勝利した場合には、現在のいわゆる「ねじれ国会」(民主党が下院過半数、共和党が上院過半数)が続く可能性が高いと見込まれています。但し、その状態であっても、2017年税制改正に関連する立法措置やOECDデジタル課税プロジェクトへの対応としての立法措置が行われる可能性があります。

税制改革案比較

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