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2023-02-02
棚卸資産は事業経営の根幹となる要素であり、特に消費財・小売業においては在庫品目が多いことが特徴です。
今回は物流コスト、リベートなどの棚卸資産に関する論点、および、開発コスト、ブランド(商標権)、広告宣伝などのその他の支出より「企業結合で取得した棚卸資産」「開発コストの資産計上」「ブランドの耐用年数」「広告宣伝費およびカタログ」について解説します。
小売業者Aは、企業結合において小売業者Bを取得します。小売業者Bは、多数の店舗で重要な水準の棚卸資産を保有しています。
小売業者Bの棚卸資産は、購入価格の配分(パーチェス・プライス・アロケーション)の際にどのように測定されるでしょうか?
IFRS第3号は、企業結合で取得した棚卸資産を公正価値で測定することを要求しています。製品在庫の公正価値は、正味実現可能価額(すなわち、棚卸資産の見積販売価格から、(i)処分コストと(ii)販売努力に対する合理的な利益引当金の合計額を控除したもの)を決定することによって測定されますが、これが出口価格に相当するためです。これは、棚卸資産の小売市場における顧客への販売可能な価格か、卸売市場からの購入可能な価格を参照し、在庫品目と比較可能な在庫品目との間での状態および場所の差異について調整することによって測定することができます。概念上、公正価値測定は、小売価格に(下方)調整を行う場合も、卸売価格に(上方)調整を行う場合も同じになります。必要となる主観的な調整の金額が最も少ない価格を公正価値測定に用いるべきです[IFRS第13号付録B B35項(f)]。
仕掛品在庫は製品在庫と同様に測定されますが、見積販売価格は、製造工程を完了させるためのコストおよびその努力に対する合理的な利益引当金についてさらに減額されます。原材料在庫は、一般的に、市場参加者が棚卸資産に対して現在支払うと考えられる価格に基づいて測定されます。原材料の市場参加者価格は、一般的に、特に最近購入した在庫については、被取得企業の帳簿価額にすでに反映されています。
企業結合で取得した棚卸資産について公正価値で認識される金額は、一般に、企業結合前に取得された企業によって認識される金額よりも高くなります。企業が製品を製造する別の企業を買収する場合は、これに該当する可能性が高いと考えられます。しかし、小売業者Aが小売業者Bを買収する場合、取得原価の調整を決定するためには、他の要素について注意深く検討する必要があると考えられます。例えば、在庫期間が短い棚卸資産(生鮮食品など)の場合、一般的に、将来の販売努力はあまり行われません。したがって、取得原価と最終的な販売価格との差額の相当部分は、販売努力に対する「合理的な利益引当金」と考えられ、そのため、取得原価による帳簿価額は公正価値に近似する可能性があります。
C社は、洗剤の製造業者であり、消費者が衣服の洗濯にかける時間を大幅に軽減するための新技術の開発に多大なコストが発生しています。
C社で発生した開発コストは、無形資産として資産計上されるでしょうか?
開発活動は、IAS第38号において、「商業ベースの生産または使用の開始前における、新規のまたは大幅に改良された材料、装置、製品、工程、システムまたはサービスによる生産のための計画または設計への、研究成果または他の知識の応用をいう。」と定義されています。
IAS第38号第57項では、開発コストは、企業が次のすべてを立証できる場合に、かつ、その場合にのみ、無形資産として資産計上しなければならないと規定しています。
(a) 使用または売却に利用できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
(b) 無形資産を完成させて、使用するかまたは売却するという意図
(c) 無形資産を使用または売却できる能力
(d) 無形資産が可能性の高い将来の経済的便益をどのように創出するのか。とりわけ、企業が、当該無形資産の産出物または無形資産それ自体についての市場の存在や、無形資産を内部で使用する予定である場合には、当該無形資産の有用性を立証できること。
(e) 開発を完成させて、無形資産を使用するかまたは売却するために必要となる、適切な技術上、財務上およびその他の資源の利用可能性
(f) 開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性をもって測定できる能力
無形資産の認識規準を満たすためには、無形資産は、識別可能、かつ特定の製品またはプロジェクトに起因するものでなければなりません。経営者は、認識する個々の無形資産から流入するであろう将来の経済的便益を識別できなければなりません。経営者が個別の製品またはプロジェクトを識別できない場合、無形資産の認識規準を満たすことはできません。
C社は、規準を満たした後にコストを資産計上しなければなりません。規準を満たす時点を決定することは、時として困難です。企業は、コストの資産計上規準が満たされているかどうか、またいつ満たされたかを決定するために、開発の「ステージ・ゲート」プロセスを上記の規準にマッピングする必要があります。
その過程で、C社は研究コストと開発コストを明確に区別することも必要だと考えられます。IAS第38号は、「研究」を、「新規の科学的または技術的な知識および理解を得る目的で実施される基礎的および計画的調査」と定義しています。研究コストは発生時に費用計上しますが、これは、プロジェクトの研究局面においては、企業は、可能性の高い将来の経済的便益を創出するであろう無形資産が存在することをまだ立証できないためです。
プロジェクトが無形資産としての認識規準を満たす前に発生した費用は、発生時に費用計上しなければなりません。以前に償却されたコストは、プロジェクトが資産を認識しなければならない段階に達した場合でも、無形資産の一部として復活させることはできません。
A社は、高級品を販売しており、その商品ラインナップのために2つの香水のブランドを買収しました。
無形資産は、各ブランドについて認識されています。C社は、耐用年数を確定できないものとしてブランドを会計処理すべきでしょうか?
無形資産は、関連するすべての要因の分析に基づいて、無形資産が企業への正味のキャッシュ・インフローをもたらすと期待される期間について予見可能な限度がない場合には、耐用年数を確定できません[IAS第38号第88号]。この場合、個々の香水について個別に考慮される要因には、以下のものが含まれます。
時代を超えた名品のブランドは、耐用年数を確定できない可能性が高いと考えられます。そのブランドは、何十年にもわたり市場で成功を収めてきたことにより、すでにその長期性を証明しています。
新たに有名になった音楽スターにちなんで名付けられた香水は、そのスターの人気に結びついている可能性が極めて高いため、そのブランドがそのスター本人の寿命、またはメディアで取り扱われる期間を越えて存続するかどうかを評価することは困難です。また、新商品であり、その長期性は証明されていません。このブランドの耐用年数を確定できない可能性は低いと考えられます。
耐用年数を確定できない無形資産は、事象および状況が、耐用年数を確定できないという仮定を依然として裏付けているかどうかを確認するために、毎年見直しを行わなければなりません。その裏付けがない場合には、耐用年数を確定できないものから確定できるものに変更し、IAS第8号に基づく見積りの変更として会計処理しなければなりません[IAS第38号第109号]。
B社は、既存顧客および潜在顧客に郵送する年間カタログを通じて宣伝を行っています。
B社は、作成済だがまだ送付されていないカタログに関して資産を認識できるでしょうか?
通信販売カタログの主要な目的は、流通ネットワークを作り出すことではなく、顧客に商品を宣伝することです。通信販売カタログは広告宣伝活動の一例であり、資本計上することはできません[IAS第38号 BC46G項]。さらに、製品のカタログが他の手段(テレビ、インターネット、企業のウェブサイトなど)を通じてマーケティングされた場合、このマーケティングをプロデュースし策定するためのコストは、直ちに費用計上されなければなりません。ただし、その支出がまだ受け取っていないサービス(例えば、プリペイド広告)に関する場合には、そのサービスを受け取るまで貸借対照表において前払金が認識されることになります。
企業は、制作済だがまだ発表していない広告宣伝に関して資産を認識すべきではありません。広告宣伝を発表した結果として企業にもたらされる可能性のある唯一の経済的便益は、それが強化または創出するブランドまたは顧客との関係の結果として企業にもたらされる可能性のある経済的便益と同じです。企業は将来の広告宣伝または販売促進活動に関して受け取った財またはサービスを、資産として認識してはなりません[IAS第38号 BC46B項からBC46C項]。
広告宣伝および販売促進活動はブランドまたは顧客との関係を強化または創出し、それらが次には収益を生みます。広告宣伝または販売促進活動を行うために取得された財またはサービスには、それらの活動を行う以外の目的はありません。これらの財またはサービスの唯一の便益は、ブランドまたは顧客との関係の開発または創出であり、それらが次には収益を生みます。自己創設したブランドまたは顧客との関係は、無形資産として認識されません。
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