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2022-11-28
リースは考慮すべき項目が多い複雑な会計領域ですが、事業計画や資金繰りにおいてリース取引の果たす役割が大きいことから、多くの企業がリース取引を利用しています。
今回は消費財・小売・流通業の観点からリースに関する各種論点のうち、「任意によるリース料の免除」「会社任意整理手続(CVA)後のリースの条件変更」「「権利金(key money)」の会計処理」「リース資産に関連する除去コストおよび原状回復コストの会計処理」について解説します。
IASBは、賃料の免除や一時的な賃料の減額といった新型コロナウイルス(COVID-19)に関連する賃料の減免に関する借手の会計処理を容易にするために、IFRS第16号「リース」の修正を公表しました。この修正は、借手に対し、COVID-19パンデミックの直接的な結果として生じた賃料の減免がリースの条件変更に該当するかどうかを決定するための個々のリース契約の検討を免除するものであり、借手がそのような賃料の減免をリースの条件変更ではないものとして会計処理することを認めています。この修正は、2022年6月30日以前に期限が到来する、リース料を減額するCOVID-19に関連する賃料減免に適用されます。以下の例では、借手は、COVID-19に関連する賃料減免に係る実務上の便法を適用していません。
貸手は、リース契約の範囲またはその他の条件を変更することなく、リース契約に基づく契約上の支払額の一部を免除することに同意する場合があります(例えば、財政難に陥った借手を支援するため)。
このような減額が契約または法規制で要求されるものでない場合、貸手はこのようなリース料の免除をどのように会計処理すべきでしょうか?
IFRS第9号およびIFRS第16号には、このような任意のリース料の免除の取扱いについて異なるガイダンスが示されています。したがって、このような減額については会計方針の選択が存在すると考えられます。
借手は、賃料の減額をリース負債の部分的な消滅と見なすことができます。IFRS第9号第2項(b)(ii)は、借手が認識したリース負債は、IFRS第9号の認識の中止の要求事項の対象となることに言及しています。IFRS第9号第3.3.1項は、金融負債が消滅した時(契約中に特定された債務が取消しとなった時を含む)に、金融負債の認識が中止されることを定めています。この会計処理に基づき、賃料の免除は、その減額が契約上合意された期間において損益計算書に利得として認識され、対応するリース負債が減少します。
あるいは、借手は、賃料の減額を、リースの対価の変更である(つまり、減額はリースの当初の契約条件の一部ではなかった)ため、リースの条件変更であるとみなし、IFRS第16号44-46項を適用することができます。この場合、借手は、条件変更日において改訂後の割引率(すなわち、リースの計算利子率、または適切な場合には追加借入利子率)を使用してリースに基づき要求される残りの支払の現在価値を再測定し、過去の帳簿価額との差額について使用権資産を修正することになります。
企業は、会計方針として会計処理を選択し、同様の特徴を有し同様の状況にある契約に対して整合的に適用しなければなりません。企業は、会計方針を選択する際に、現地の規制当局の見解も考慮する必要があります。
小売業者Xは、財政難に陥っており、会社任意整理手続(CVA)として事業再生を行うことにより、会社管理手続の適用を回避することができればと考えています。その結果、小売業者Xはリース契約の再交渉を行い、固定リース料から完全な収益ベースの支払モデルへと移行しました。このリース契約は、残存期間が3年から5年のリースに関するものです。
このリース料の変更はどのように会計処理すべきでしょうか?
これは、リースの対価が当初のリース契約から変更されているため、リースの条件変更であると見なされます。使用権の追加はなく、IFRS第16号第44項の条件を満たしていないため、この条件変更は独立したリースとして会計処理されません。その代わり、リース負債は、条件変更の発効日に決定される改訂後の割引率を用いて再測定されます。指数またはレートに基づいていない変動リース料は、リース負債の一部ではありませんが、当該変動リース料が発生する契機となった事象または状況が生じた時に損益計算書に認識されます。この例では、収益に連動するリース料は、収益が発生した時点で認識されることになります。したがって、リース負債は、条件変更日において完全に認識が中止され、使用権資産について対応する修正が行われることになります[IFRS第16号第44-46項]。
小売業者Cが、一等地にある店舗に関する長期リース契約を締結しました。小売業者Cは、その場所を引き継ぐために、現在のテナントに「権利金(key money)」を支払いました。現地の法律では、小売業者Cは、当初のリース期間の終了時に、リース契約の更新を要求する権利を有しています(その賃料は必ずしも市場条件を反映していません)。貸手が更新を拒否する場合、貸手は借手が被る被害を補償しなければなりません。あるいは、小売業者Cは当初のリース期間の終了時に、更新の要求を選択しない場合もあります。この場合、小売業者Cは、新しいテナントがその店舗を引き継ぐことを容認し、新しい借手から権利金を受け取る権利を得ることになります。
小売業者は、店舗から退去する際に、貸手からの補償または新しい借手からの権利金のいずれかを通じて、当初の支払金額を回収できると見込んでいます。
小売業者Cは、支払った権利金をどのように会計処理すべきでしょうか?
新しい借手から前の借手への支払は、当初直接コストに該当し、使用権資産の当初測定に含められます。
使用権資産の事後測定の決定にあたって、許容可能なアプローチの一つは、IFRS第16号第31項が要求しているとおり、IAS第16号の減価償却の要求事項を適用する際に、権利金を使用権資産の独立した構成部分として取り扱うことです。このような取扱いは、IAS第16号第43項および第44項に従って、権利金がIFRS第16号に基づくリース期間よりも長い期間にわたって経済的便益をもたらすことを表しています。IAS第16号第52項は、資産の残存価額が帳簿価額を上回っていない限り、減価償却費は認識されると規定しています。小売業者が残存価額を権利金の構成部分と等しいかそれを上回ると見込んでいる場合、この構成部分の減価償却費はゼロとなります[IAS第16号第54項]。
代替的なアプローチは、権利金を使用権資産そのものと連動しているものと見なし、使用権資産(すなわち、権利金を含む)を単一の資産として取り扱うことです。契約全体(権利金を含む)としてテナントにいくつかの権利が付与されていますが、このアプローチではそれらを区別せず、使用権資産について、借手が店舗から退去する際に回収すると見込まれる金額に基づく残存価額が認識されます。このアプローチでは、権利金の予想回収可能価額の事後的な増加は、使用権資産全体の残存価額を増加させ、減価償却費の合計額を減少させることになります。
権利金に対するIFRS第16号の適用は、重要な会計上の判断となる可能性があり、その場合にはIAS第1号の開示要求を考慮しなければなりません。
小売業者Aは小売店舗をリースし、リース契約の一部として、引渡時と同じ状態で店舗を返還することを義務付けられています。
小売業者Aは、リース資産の原状回復および除去に関連する債務をどのように会計処理すべきでしょうか?
中二階
小売業者Aは、中二階を設置し、リースの終了時にそれを除去するための引当金をIAS第37号に基づいて認識しています。この債務は、過去の事象である、小売業者Aが改良を完了した時点で発生します。小売業者Aは、IFRS第16号第24項(d)を適用し、対応する金額を使用権資産の一部として含めています。
IFRS第16号第24項(d)のガイダンスは、当初測定のセクションに含まれていますが、第25項では、原状回復コストは、これらのコストに対する義務が小売業者に生じた時点で、使用権資産の取得原価の一部として認識しなければならないと述べています。例えば、中二階がリース期間の途中で設置された場合でも、小売業者は、原状回復コストを使用権資産に含めて資産計上します。
破損
リース期間中に、小売業者Aの使用する資産に、リース期間の終了時に修繕が必要な破損が発生します。賃貸期間にわたる見積修繕コストについて引当金を計上する必要があります。その理由は以下のとおりです。
小売業者Aは、対応する金額を費用として認識しなければなりません。破損に関する引当金は資産を創出しません。IFRS第16号の「結論の根拠」では、使用権資産の取得原価による測定は、IAS第16号との整合性を意図したものであり、資産の設置、建設または取得に関連する場合にのみ、原状回復コストおよび除去コストを資産計上することを認めています。
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