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2022-11-24
減損は業績を予測・分析するうえで注目度の高い領域です。特に、消費財・小売・流通業においては、店舗や倉庫などの不動産は重要な事業資産の1つとなっています。
今回は消費財・小売・流通業における不動産の減損を中心に「複数店舗を有する小売業者におけるCGUの決定」「減損 - 小売店舗の使用価値」「減損 - 旗艦店」「減損 - オンライン売上の配分」について解説します。
小売業者Aは、国内外に多数の店舗を所有しています。店舗は通常、異なる地域や空港に所在していますが、店舗Xと店舗Yは同じ地域にあります。仕入れ、価格設定、マーケティング、広告宣伝および人事方針(個々の店舗のレジ係および販売スタッフの採用を除く)は、すべての店舗について一元的に行われています。また、各店舗で販売されている商品は同じです。
減損テストの目的上、店舗Xと店舗Yを合算すべきでしょうか?
いいえ。各店舗はチェーン内の他の店舗から独立したキャッシュ・インフローを生み出すため、一般的な小売店舗は通常、別個の資金生成単位(CGU)になります。CGUは、「他の資産又は資産グループからのキャッシュ・インフローとはおおむね独立したキャッシュ・インフローを生成する最小の識別可能な資産グループ」と定義されています[IAS第36号第6項]。IAS第36号の設例[設例1]は、地区は異なるものの同じ都市に複数の店舗を有するチェーン小売業者のCGUについて検討しており、CGUは店舗レベルであると結論付けています。
2007年3月のIFRS解釈指針委員会のアジェンダ決定では、IAS第36号における「独立したキャッシュ・インフロー」は正味キャッシュ・フローを意味するものではないとしています。したがって、分析においてキャッシュ・アウトフローは考慮されていません。店舗Xおよび店舗Yの場合、費用の発生が一元化されていることは関係ありません。
小売業者Xは、複数の小売店舗をリースしています。各店舗は、使用権(RoU)資産と、賃借設備改良の形でリース小売店舗に加えられた有形固定資産を有しています。
リース小売店舗の減損テストをどのように行うべきでしょうか?
借手は、IAS第36号を適用して、リース小売店舗が減損しているかどうかを判定し、識別された減損損失を会計処理します。ほとんどの場合、各リース小売店舗は、使用権資産と、リース小売店舗に加えられた賃借設備改良や店舗の什器備品などの有形固定資産から構成されることになります。これらの資産のうちの一つだけが他の資産から独立したキャッシュ・インフローを生成する可能性は低いものの、資産全体でキャッシュ・インフローを生成する可能性があります。したがって、結合した店舗資産を一つのCGUとして減損評価を実施し、合理的かつ首尾一貫した基準により配分できる場合には当該CGUに間接的に帰属する資産(全社資産など)を配分しなければなりません。
各CGUに帰属する資産(および必要に応じて負債)は、回収可能価額を算定するために識別される見積将来キャッシュ・フローと整合している必要があります。使用価値(ViU)モデルを用いた店舗の回収可能価額の算定には、当該店舗に関連するすべての将来キャッシュ・インフローおよびアウトフローが含まれます。
ViUモデルを用いてテストする際、使用権資産はCGUに含まれますが、関連するリース負債は除外しなければなりません。これは、リース負債が資金調達の一形態であり、IAS第36号第50項(a)に基づき、すべての財務キャッシュ・フローがViUから明示的に除外されるためです。
状況によっては、負債を関連資産から切り離すことができないことがあります(例えば、購入者が負債なしに資産または事業を取得することができない、あるいは取得しない場合)。この明らかな矛盾は2016年にIFRICによって検討され、IAS第36号は、認識している負債の帳簿価額をCGUの帳簿価額とViUに基づいて決定される金額の双方から減額し、当該負債に関連するキャッシュ・アウトフローを含めないことを要求していることが指摘されました。このことは、CGUにリース負債を含めるとViUテストに特段の影響を生じさせないことを意味します。
予想キャッシュ・フロー・モデルは以下のとおりです。
税引前の将来キャッシュ・フローの予測は、貨幣の時間価値と資産/CGUに固有のリスク(将来キャッシュ・フローの見積りを調整していないもの)の両方に関する現在の市場評価を反映した税引前の利率で割り引かれます。加重平均資本コスト(WACC)は、基準点として役立つかもしれませんが、これには、企業自身の資本構成ではなく、それぞれの類似企業によって表される適切な資本構成に対する市場評価が反映されていなければなりません。
リース負債は、既存の負債や資本に加え、資本構成の追加的負債のような要素として考慮することが期待されます。
WACCには、類似集団の資本構成を反映する必要があります。そのため、小売業者は適切な類似集団を特定することに注意を払う必要があります。特に、類似集団には、店舗ポートフォリオにおける自社保有店舗とリース店舗の構成が類似している企業が反映されている必要があります。
実務上、減損テストは税引後の割引率で実施されることが多くあります。これは、一般的に観察可能な市場収益率が税引後の利率であることによるもので、実務では通常、税引前キャッシュ・フローを税引前の割引率で割り引く代わりに、税引後キャッシュ・フローを税引後の割引率で割り引くことによってViUが算定されます。これは、税引前の割引率が、将来の税務キャッシュ・フローの特定の金額と時期を反映するように調整された税務後の割引率である場合にのみ機能します。重要な一時差異(認識・未認識)がある場合、計算上の矛盾を取り除くために税金キャッシュ・フローを調整する必要があります。使用価値を決定するために実務において税引後キャッシュ・フローを使用している場合の一時差異の処理方法には、CGUの資産および負債の税務基準額がその帳簿価額と等しいと仮定して税金キャッシュ・フローを計算する方法があります。
小売業者は、それ自体では独立したキャッシュ・インフローを生み出さないもののグループ内の他の店舗CGUに便益をもたらすCGU(補助的CGU)に投資することがあります。補助的CGUは、赤字となる場合も多くありますが、他のCGUに提供する便益と合わせると、企業に経済価値を付加することになります。
例えば、小売業者Aが、魅力的な場所に新たな旗艦店をオープンします。この店舗は、独立したキャッシュ・インフローを生み出す一方で、ブランドの宣伝効果を高めて他の店舗の売上成長を促進する、またはオンラインの売上を拡大させるようにも設計されています。
小売業者Aは、グループ内の他の店舗CGUに便益をもたらす旗艦店CGUの減損テストをどのように実施すべきでしょうか?
補助的CGUとして機能する旗艦店は、他の資産又は資産グループからのキャッシュ・インフローからおおむね独立したキャッシュ・インフローを生成する[IAS第36号第6項]ため、それ自体がCGUの定義を満たしています。したがって、減損の兆候がある場合には、当該旗艦店について減損テストを実施する必要があります。
企業は通常、旗艦店を当初設立した時点で、当該旗艦店を補助的CGUとして識別します。旗艦店を後日(例えば、潜在的な減損リスクを認識した時点で)補助的CGUとして識別することは、一般的に不適切です。
小売業者Aは、どのようなキャッシュ・フローを旗艦店の回収可能価額に含めるべきか決定するために、旗艦店が他の店舗CGUに提供する便益を分析する必要があります。例えば、旗艦店は、広告宣伝やグループのブランド紹介など、他の店舗に便益をもたらす費用(キャッシュ・アウトフロー)を負担する場合があります。この場合、旗艦店は、回収可能価額の算定において、内部振替キャッシュ・インフローを帰属させることができます[IAS第36号設例1B]。この想定されるキャッシュ・インフローは、「第三者間取引で達成され得る将来の価格についての経営者の最善の見積り」[IAS第36号第71項]に基づいていなければなりません。
旗艦店が他のCGUにもたらす費用削減を正確に定量化することは困難な場合があります。想定されるキャッシュ・フローを見積もるアプローチは、提供されるサービスについて入手可能な外部証拠があるかどうかによって異なる場合があります。入手可能な外部または公開情報がない場合、旗艦店への投資時(例えば、旗艦店の新規リース契約の締結時)に経営者が承認した事業計画を用いることが、グループの他の店舗と同様の投資収益率を達成するために必要となる想定されるキャッシュ・フローの決定に役立つと考えられるため、許容可能なアプローチとなる場合があります。旗艦店に配分される内部振替キャッシュ・インフローの見積りは、旗艦店がより広範な事業に増分利益をもたらし、想定上のリチャージが妥当であることを確認するために、継続的に注意深くモニタリングする必要があります。
減損テストにより損失が発生した場合、旗艦店の減損は、実際の旗艦店の売上でカバーされない損失に概念的なリチャージを加算した損失の合計になります。
経営者は、旗艦店の存在と活動によって便益を得ている他の店舗CGUについて減損の兆候が識別されるかどうかも検討する必要があります。これらの店舗CGUの個別の減損評価は、合理的で首尾一貫した基準により、想定されるキャッシュ・アウトフローの割合を反映させる必要があります。
小売業者Xは従来、50店舗の小売店で物理的な商品販売のみを行っていました。しかし、同社は過去10年においてオンライン販売に多額の投資を行っており、実店舗よりオンラインでの買い物を好む消費者が増え続けていることから、近年ではオンライン販売が飛躍的に伸びています。小売業者Xの顧客は、以下の方法で商品をオンライン注文することができます。
商品が顧客の自宅に配送されるオンライン販売は、小売業者Xの中央配送センターまたは個々の店舗の在庫からの供給が可能です。
オンラインで購入した商品を返品する場合、顧客は商品を郵送するか、店舗に持ち込むかを選択することができます。
店舗(CGU)の減損評価を行う際、オンラインの売上と返品はどのように店舗に配分すべきでしょうか?
IAS第36号は、減損テストの目的上、「他の資産又は資産グループからのキャッシュ・インフローとはおおむね独立したキャッシュ・インフローを生成する最小の識別可能な資産グループ」であるCGUを識別することを要求しています[IAS第36号第6項]。各店舗は独立して運営されていると見なされるため、通常、CGUは個々の小売店舗となります。オンライン販売の拡大により、実店舗から独立した、または独立していないキャッシュ・フローが発生する可能性があるため、CGUの決定やオンライン販売の店舗/CGUへの配分が実務上困難となり、判断が必要となる場合があります。
売上が特定の小売店舗に由来することを証明するためには、売上と店舗との間に実証可能な直接的関係があることが重要です。
上記の質問で示された事例では、小売業者Xが以下のキャッシュ・フローを店舗CGUの減損評価に含めることが適切であると結論付けています。
上記の場合、小売業者Xは、顧客が自宅から注文し、商品が中央倉庫から顧客の自宅に配送される場合を除き、これらの売上が特定の店舗に由来する(言い換えれば、商品が店舗から注文され、かつ/または当該店舗で引き取られる)ことを証明する実証的かつ直接の関係を有しています。
顧客が商品を注文して受け取る方法や小売業者が商品を配送する方法には、上記と異なる方法があるかもしれません。企業は、店舗とオンライン売上の間に実証可能で直接的な関係があるかどうかを判断する必要があります。オンライン売上は、そのような関係が確立され、証明される場合にのみ、特定の店舗に配分することができます。重要性が高い場合、企業はそのアプローチを会計方針の一部として開示し、当該会計方針がIAS第1号で定義されている重要な会計上の判断にあたるかどうかを検討する必要があります。
返品に伴うキャッシュ・アウトフローには、「同種のもの」と比較する原則が適用されます。店舗に返品された商品に関連するキャッシュ・アウトフローは、当初の売上からのキャッシュ・フローが減損評価時に当該店舗のキャッシュ・インフローの一部として認識されていた場合にのみ、減損の目的上、当該店舗のキャッシュ・フローから差し引く必要があります。
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