消費者市場におけるIFRS会計論点およびソリューション:その他の収益取引(2)

2022-10-21

消費財・小売・流通業における会計論点の中で、売上収益は最も重要な財務指標の1つであり、論点の多い会計領域でもあります。

収益認識においては、売上取引の内容を整理し、該当する論点を適切に把握することが重要です。

今回はその中から「小売業者によるSIMカード販売」「直販店」「物品税および税金」について解説します。

2. 直販店

前提

A社は、直販店を含む大型デパートを運営しています。A社は、営業権保有者に対し、デパート内の営業スペース、販売員、POS機器および倉庫スペースを営業権保有者に提供します。またA社は、最終顧客からの現金回収を含め、製品の販売を管理します。

営業権保有者は、A社に対し、年間CU10,000の固定契約手数料に直販店の総製品売上の20%を加えた金額を支払います。営業権保有者は、販売する製品および顧客への販売金額を決定し、また、営業許可を有する複数の店舗間で在庫を移動する権利を有しています。シーズン終了時に、営業権保有者は販売されていない製品を引き上げなければなりません。

A社は、営業権保有者に割り当てられたスペースの場所をいつでも変更する権利を有しているため、契約はリースとは見なされません。

論点

A社はこの契約をどのように会計処理すべきでしょうか?

ソリューション

この契約における特定された財またはサービスは、直販店で販売される製品です。A社は、いかなる時点においても、販売される製品の支配を有していません。A社は最終顧客と取引を行いますが、価格設定はせず、在庫リスクを負うこともありません[IFRS第15号付録B B36項からB37項]。したがって、A社は、最終顧客への販売における代理人として行動しており、営業権保有者のために履行しているサービスに対して手数料を受け取っています。

A社は、営業権保有者の製品の販売による総収入ではなく、営業権保有者からの未収手数料を収益として認識します。

3. 物品税および税金

前提

シナリオA

A社は、ブランド・アルコール飲料のグローバルな生産業者兼流通業者です。A社は、保税倉庫から出る製品の価値および数量に基づいて物品税を支払います。通関のための保税倉庫からの製品の移動により、物品税の支払義務が発生します。顧客が支払を行わなかった場合、また製品が販売されなかった場合でも、A社は、支払った物品税の還付を請求することはできません。A社は、顧客から総収益および物品額を回収します。

A社は、物品税の税率の変更を製品の販売価格に反映させる法的債務または推定的債務を負いません。物品率の引き上げにより、企業は販売価格の引き上げを行う可能性がありますが、そのような引き上げは業務上の決定であり、自動的に行われるものではありません。税額は請求書にて別掲されるものではありません。

シナリオB

B社は、さまざまな法域の顧客にスマートフォン用アプリを販売します。特定の法域では、製造業者は販売されたスマートフォン用アプリの数量に基づいて計算された売上税を支払います。顧客に対する個々の販売時点で、売上税の支払義務が発生します。税額は、顧客への請求書にて別掲され、税率が上がると、顧客に請求される税額も同様に引き上げられます。製造業者は、債権が回収されなかった場合には、売上税の還付を受けます。

論点

A社およびB社は、顧客から回収する税金を、総額(すなわち、収益および費用として)または第三者(政府機関など)に送金する金額を控除した純額のどちらで認識すべきでしょうか?

ソリューション

企業は、第三者に送金しなければならない代金を顧客から回収することがよくあります(例えば、税金を回収し政府機関に送金するなど)。顧客から回収する税金には、売上税、使用税、付加価値税および消費税などが含まれます。一部の売上税など、第三者の代理で回収する金額は取引価格には含まれません。なぜなら、それらの金額は政府の代理で顧客から回収されるものだからです。企業は、これらの状況においては政府の代理人となります。

販売ではなく生産を基礎とする税金は、通常は顧客ではなく売手に課されます。製造を基礎とする税金を支払う義務を有する企業は、それらの税金について本人であり、したがって、この税金は収益に影響させずに営業費用として認識します。

経営者は、これらの税金額を収益と相殺すべきか、営業費用として認識すべきかを判断するため、各種類の税金を法域別に評価する必要があります。特定の法域における税法の趣旨も考慮しなければなりません。

企業が税金に関して本人なのか代理人なのかに関する評価において、税金の名称(例えば、売上税または物品税)は必ずしも決定要因となりません。顧客が税金の額を知っているかどうかも、必ずしもこの分析には影響しません。経営者は、企業が税金を支払う主たる義務を負っているのか、または税金は顧客に課されているものなのかを判断するために、関連性のある法域における税金および税法の基礎となる特性を考慮する必要があります。これは、一部の企業、特に異なる租税制度の施行された多数の法域において事業を営む企業にとっては、かなりの作業負荷が発生する可能性があります。

税金が企業の責任であるため、(取引価格からの控除ではなく)費用として計上されるべき指標には、以下のものがありますが、これらに限定されません。

  • 製品の生産または輸入時点で、納税義務が発生する場合。反対に、顧客への売却時点で納税義務が発生する場合は、企業が政府の代理で税金を回収していることを示唆する可能性がある。
  • 税金は、顧客への販売価格ではなく、企業が生産する単位数または物理量(例えば、タバコの本数やアルコール含有量)に基づいている。
  • 税金は、個々の販売取引ではなく、一定期間の累積利益に対して課される。
  • 企業は、関連する在庫が販売されなかった場合、あるいは顧客が販売された商品またはサービスの支払を行わなかった場合、税金の還付を請求することができない。
  • 企業は、税金を反映するために価格を変更する法的債務または推定的債務を負わない。反対に、税金が販売価格から明確に分離されており、税金が変更されると顧客への請求額が同様に変更される場合は、企業が政府の代理で税金を回収していることを示唆する可能性がある。

上記の指標は、特定の法域における税法の趣旨と併せて考慮しなければなりません。上記の指標のいずれかに当てはまる(またはいずれも当てはまらない)場合でも、それ自体が決定要因となるわけではありません。

シナリオA:A社は、(顧客への販売時点ではなく)製品の移動時点で物品税の支払義務が発生し、税金を顧客に課すために顧客への販売価格を調整するかどうかの決定を行い、また、顧客が支払不能になった場合に還付請求することはできないため、物品税について本人となります。したがって、A社は、物品税を、取引価格からの控除ではなく費用として認識しなければなりません。

シナリオB:B社は、政府機関の代理人として売上税を回収する可能性が高いです。顧客への販売時点で納税義務が発生し、税金は別途顧客に請求され、またB社は受取債権が回収されない場合は税の還付を受けます。したがって、B社は、顧客から回収した売上税を取引価格から除外すべきであり、税金に関する費用は認識されません。税金の回収と支払は、貸借対照表項目にのみ影響を与えることになります。

執筆者

長谷川 友美

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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坂井 嘉兵衛

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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岡村 嘉雄

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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