Worldwide Tax Summary 2025年2月号

2025-03-21

Worldwide Tax Summary 2025年2月号トピックス

  1. 公開国別報告(オーストラリア)
  2. グローバルミニマム税に関する法令案(ベトナム)
  3. 第2の柱に係る報告義務(オーストリア)
  4. 第2の柱に係る報告義務(ハンガリー)
  5. 欧州連合理事会がFASTERを採択(EU)
  6. グローバルサウスにおけるDSTおよびSEPに関する議論(アフリカ)
  7. OECDの第1の柱(利益B)のアップデート(OECD)

公開国別報告(オーストラリア)

2024年11月29日、オーストラリアに拠点を持つ多国籍企業グループに対する新たな国別報告(CBC)公開義務を導入する法律(本誌2023年6月号2024年4月号および8月号参照)が議会で可決された(2024年12月10日に国王の裁可(Royal Assent))。本CBC報告義務は、2024年7月1日以降に開始する報告期間から適用される。オーストラリアに拠点を持つ大規模な多国籍企業グループは、グローバルな財務および税務の状況に係るデータをオーストラリア税務当局(ATO)に提出し、その情報が公開されることになる。この新しい義務は、既存の非公開のCBC報告制度および多国籍企業グループに係る他の公開CBC報告制度(例:欧州連合(EU)の制度)に加えて適用される。

適用対象者 - 以下の全ての基準を満たすグループ

  • グローバルの連結総収入金額(Global consolidated turnover)(前年度)が10億豪ドル以上
  • オーストラリア源泉総売上(Australian-sourced income)(当年度)が1000万豪ドル以上
  • グローバル親事業体(global parent entity)が法人、法人パートナーのみのパートナーシップ、または法人受託者を持つ信託であること

適用時期

  • 本規定は、2024年7月1日以降に開始する年度に適用される(例:12月決算のグループの場合、本規定は2025年1月1日から適用される)。
  • 報告書は年度末から12カ月以内に提出する必要がある(例:2025年12月31日終了年度に係る公開CBC報告書は、2026年12月31日までに提出する必要がある)。

報告書の提出義務者

グローバル親事業体がATOにCBC報告書を提出する義務がある。

報告事項

  • グループの税に対するアプローチに関する声明
  • オーストラリアおよび特定国・地域(specified countries)について、国別の財務、税務、および人員データ
  • 一定の場合、国・地域の発生税額と税引前損益に法定税率を乗じた額との差異の理由の説明(注)
  • その他の全ての国・地域については、財務、税務、および人員データを集計ベースで報告可能

罰則

2,500豪連邦罰則単位(現時点で、825,000豪ドル相当)が課される可能性がある。

免除

ATOの裁量で可能である。

執行ガイダンスで考慮すべき事項

ATOは、新制度の実施に関連するいくつかの実務的な問題に関するガイダンスを発出しなければならない(2025年3月までにガイダンスを発出予定としている)。ガイダンスが必要と思われる事項として以下が含まれよう。

  • 提出のメカニズム:例えば、ファイルの技術仕様(特定のXMLスキーマと検証ルール)の確認、ファイルを提出するためのポータル、グローバル親事業体による登録が必要かどうか、代理人による提出が必要かどうか、提出前に誰がファイルを承認する必要があるかなどがある。
  • 免除:ATOのウェブサイトによると、免除を求めるプロセスに関する公開ガイダンスが2025年3月までに利用可能になる予定であるとしている。本法律では、免除が考慮される状況について具体的には規定していないが、解説メモランダムでは、データの開示が国家安全保障に影響を与えるか、オーストラリアまたは外国の法律に違反するか、商業的に機密性の高い情報を明らかにすることによって事業体に重大な影響を与えるかどうかを考慮する可能性があるとしている。
  • 定義と解釈:公開CBC報告に係る特定の定義に関する技術的ガイダンスが必要と思われる。

なお、国別開示が求められる「指定国・地域」については、本法律の国王裁可後、大臣の決定(Ministerial determination)で示される(注)

(注)シンガポール、スイス、香港を含む40カ国・地域が国別開示対象国・地域として公表された(2024年12月17日時点)。

他の制度との比較

オーストラリアの公開CBC報告要件と、欧州連合の公開CBC報告指令や既存の非公開CBC報告などの他の制度とは重複する部分があるが、いくつかの違いもある。主な違いは以下のとおりである。

  • データソース:データソースは連結財務諸表(トップダウンデータ)でなければならない(他の制度ではボトムアップの現地法人の財務諸表など、他のデータを使用する柔軟性が示されている)。
  • 特定の定義の違い:例えば、「関連者収入」は、オーストラリアの公開CBC報告では他国の関連者との取引のみを含める(非公開CBC報告では通常、同一国・地域内の国内関連者取引も含まれる)。
  • 税務事項に関する追加のコメント:グループの税に対するアプローチに関する声明や特定の国・地域における実効税率の説明(注)など、税務事項に関する追加のコメントが必要である。これらの要件はGlobal Reporting Initiative(GRI)207に基づいている。また、財務省が法案を審査した上院委員会に提供した書面(網羅的なリストではない)において他の違いも強調されている。

(注)2024年12月から、米国財務会計基準審議会(FASB)は、公開事業体に対して、国内法定税率と米国の所得税申告書で支払われた実際の税率の差異分析を求めている(Topic 740)(本誌2023年6月号参照)。

出典:PwC Australia, Tax Alert
「月刊 国際税務」2025年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

グローバルミニマム税に関する法令案(ベトナム)

財務省は、2024年12月6日まで、グローバルミニマム税に関する法令(decree)案に対するフィードバックを募集した。本法令案は、2024年度から施行される決議(Resolution)107の適用に関する基本的なガイダンスを、ベトナムで事業を展開する多国籍企業(MNE)に提供するものである。

適用開始会計年度(2024年度)の明確化 – 決議107は、2024年度から施行される。本法令案では、2024年度は2024年1月1日以降に開始する会計期間に適用されると明確にしている。ただし、最終親事業体(UPE)の会計年度が2023年12月に開始する場合、その会計年度もこの本法令案の下で2024年度とみなされる。適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)上、ベトナムの構成事業体(CE)の会計年度はUPEの会計年度と一致する。これにより、一貫性が確保され、グループ全体でのコンプライアンスが簡素化される。

財務会計基準 – QDMTT上、連結財務諸表で使用される財務会計基準が適用される。これらの基準を使用してCEの純利益または損失を算定することができない場合、他の許容された財務会計基準または承認された財務会計基準(例えばベトナム会計基準)も利用可能である。ただし、これらの基準と連結に使用される基準との間の恒久的な差異が100万ユーロを超える場合には調整が必要となる。

CE間のQDMTTの配分 – QDMTTの適用対象となるMNEグループは、ベトナムにおけるCE間でトップアップ税負担をどのように配分するかを決定できる。この配分は税務当局に申告する必要がある。

トップアップ税計算における通貨単位 – QDMTTの計算は、UPEが連結財務諸表を作成する際の通貨単位を使用して行われ、為替レートの変動に応じて適切に調整される。なお、トップアップ税額は、ベトナムドンに換算して納税することになる。

申告後の調整と税率の変更 – 本法令案では、納税者が前年度の対象税額の増加調整分を当年度の対象租税として組み込むことを認めている。一方、前年度の対象税額を減少させる調整は、前年度の実効税率とトップアップ税の再計算が必要となる。ただし、調整が100万ユーロ未満の場合、納税者はその減少分を当会計年度に含めることを選択できる。

税務申告と執行 – MNEがベトナムに複数のCEを有する場合、会計年度終了後30日以内にQDMTTの納税を行う1の事業体を指定しなければならない。会計年度終了後90日以内に、当該指定をされたCEはトップアップ税の納税に係る税コードを申請しなければならない。また、会計年度終了後9カ月以内に、当該CEは、QDMTTの適用対象となるMNEグループのベトナムCEリストを税務当局に提出しなければならない。

出典:PwC, International Tax News
「月刊 国際税務」2025年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

第2の柱に係る報告義務(オーストリア)

第2の柱(グローバルミニマム課税)ルールは、2024年1月1日から適用される。連結グループ収入の閾値は7億5000万ユーロで、当該グループの全ての法人および恒久的施設に適用される。グループに複数のオーストリアの構成事業体がある場合でも、第2の柱で納税者とされるのは1のオーストリアの構成事業体のみである。当該納税者は、オーストリアで発生するトップアップ税(国内トップアップ税、所得合算ルール、軽課税所得ルール)を支払う義務がある。また、当該構成事業体は、第2の柱に係る事前報告の提出義務もある(事前報告に係る詳細は別途の法令(ordinance)で決定される)。第2の柱の納税者は、以下のいずれかのオーストリアの構成事業体である。

  • 最終親会社によって指定された事業体
  • 最終親会社による指定がない場合、グループストラクチャーで最上位のオーストリアの構成事業体
  • 最上位のオーストリアの構成事業体が存在しない場合(例:オーストリアに共通の親会社がない場合(例;兄弟会社))、経済的に最も重要なオーストリアの構成事業体(経済的に最も重要なオーストリアの構成事業体を評価する際、事業活動、売上高、オーストリア商業登記簿からの情報、GloBE情報申告、国別報告(CbCR)などを総合的に考慮する必要)

グループストラクチャーなどに応じて、多くの場合、最終親会社は特定のオーストリアの構成事業体を第2の柱に係る納税者として指定すべきである。このような指定が行われた場合、当該指定をされた納税者は、その旨の証拠を添えて税務当局に報告する必要がある。この報告はオーストリアのFinanzOnlineプラットフォームを通じて提出できる(12月決算の会計年度の場合は2024年12月31日まで、暦年と異なる会計年度の場合は2025年12月31日までに提出する必要)。最終親会社による指定が行われない場合、最上位のオーストリアの構成事業体または経済的に最も重要なオーストリアの構成事業体が自動的に第2の柱に係る納税者となる。この場合、税務当局への報告は不要である。

出典:PwC, International Tax News
「月刊 国際税務」2025年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

第2の柱に係る報告義務(ハンガリー)

グローバルミニマム課税ルールの適用対象となる国内法人は、2024年に始まる課税年度の開始日から12カ月以内に、多国籍企業(MNE)グループに関する報告義務を負うことになる。規定の文言などによると、ハンガリーに係る移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーを適用するMNEも本報告義務の対象になる。本報告を提出しない、または遅れて提出した場合、税務当局は当該法人に最大500万HUF(ハンガリーフォリント)(約13,000米ドル)の罰金を課す可能性がある。本報告は、税務当局(National Tax and Customs Administration)が指定するフォームで、通常の電子的な方法によって提出する必要がある。2024年10月17日に公表された秋季税制改正案によると、ミニマム税法の対象となる法人は、本報告において、グループメンバーの識別詳細(例:法人名、税番号)、ミニマム税法に基づく分類やグループメンバー間の資本関係に関する情報を含めることになる。

出典:PwC, International Tax News
「月刊 国際税務」2025年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

欧州連合理事会がFASTERを採択(EU)

2024年12月10日、欧州連合理事会は超過源泉税の迅速かつ確実な救済(FASTER: Faster and Safer Relief of Excess Withholding Taxes)指令を採択した(本誌2023年8月号および2024年7月号参照)。FASTER指令は、源泉税の対象となるクロスボーダーの配当支払いの手続きをより調和させ、資本市場同盟(CMU)を投資家にとってより魅力的なものにするためにシステムを簡素化することを目指している。また、証券投資に関連する税の不正や濫用の問題にも対処することを目的としている。加盟国は2028年12月31日までにこの指令を国内法に取り込まなければならず、国内規定は2030年1月1日から適用される。なお、EU加盟国は本指令による要件を当該適用開始日よりも早く実施することを選択する可能性があるため留意が必要である。FASTERは、以下を通じて、EU全体の投資プロセスを変革し、CMUを強化し、脱税への対処を強化することを目指している。

  • 上場株式および債券へのクロスボーダー投資を簡素化するために、源泉徴収およびその還付手続きを合理化
  • 共通のEUデジタル税務居住証明書の導入により、統一性を提供
  • 「源泉での救済」や「迅速還付」システムなどの迅速なメカニズムで税に係る救済を迅速化し、租税回避防止規定の形で「より安全な」メカニズムを促進

事業者(特に、指令に記載されている認定金融仲介機関のように、実質受益者に対する源泉税の適用を決定する役割を果たす事業者)は、FASTERへの準備を進める必要があろう。なお、詳細な規制要件は2025年中頃までに公表されることが見込まれる。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2025年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

グローバルサウスにおけるDSTおよびSEPに関する議論(アフリカ)

アフリカ税務行政フォーラム(ATAF)、South Centre、および西アフリカ税務行政フォーラム(WATAF)は、OECDの第1の柱(利益A)の実施による潜在的な税収とDST(デジタルサービス税)との比較を検討する2024年6月10日の研究について議論するウェビナーを開催した(2024年11月)。一方、東アフリカ共同体(EAC)政府間組織も同様に、これらの分野での進捗を考慮するようメンバーに促した。この研究によると、広範な「ハイブリッドADS」事業者(少なくとも一部の製品やサービスをデジタルかつ自動化された方法で提供する法人)に5%のDSTを適用すると、ほぼすべてのアフリカ連合(African Union)およびSouth Centreメンバー国にとってはるかに高い税収が得られることが示されている。3%の税率でも、ほとんどの発展途上国にとって同様の結果が得られる。当ウェビナー中、ATAFとSouth Centreは、メンバー国に対してDSTを直ちに実施し、主要な先進国(米国、ドイツ、デンマーク、フランス、スイス)によって利益AのMLCが批准されるまでその検討を保留するよう助言した。ATAFはまた、DSTが実施される場合、それが租税条約の範囲外と取り扱われるべきであるとしている。また、ケニア税務当局が公表した声明によると、第52回東アフリカ税務当局長官会合総会において、EAC政府間組織の8つのパートナー国(ブルンジ、コンゴ、ケニア、ルワンダ、ソマリア、南スーダン、ウガンダ、タンザニア)は、「DSTを実施し、各国のデジタル経済の課税における進捗に基づいて重要な経済的プレゼンス(SEP)課税枠組の適用を検討する」よう促されている。

出典:PwC, Digital tax megabyte
「月刊 国際税務」2025年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

OECDの第1の柱(利益B)のアップデート(OECD)

2024年12月19日、OECDは、移転価格の簡素化および合理化されたアプローチの理解と運用を促進するための価格設定ツールとファクトシートを公表した。ファクトシートは、利益B(本誌2024年4月号および8月号参照)のメカニズムの概要をハイレベルで示しており、納税者および税務当局が利益Bを適用するために取るべきステップなどを示している。価格設定自動化ツールは、適用対象者の利益Bリターンを自動的に計算するように開発されており、税務当局および納税者の双方にとっての執行上および簡素化のメリットが最大限に得られることを目的としている(毎年更新)。2024年2月に公表された利益Bのガイダンスで示されているように、各国・地域は2025年1月1日以降に開始する会計年度の対象取引に対して、この簡素化および合理化されたアプローチの適用を選択できる(注)。なお、利益Bを実施する国・地域のリスト(採用日を含む)は別途OECDのウェブサイトで公表するとしている(各国・地域での正式な公表に伴い、定期的に更新予定)。OECDは、2025年2月11日に利益Bに関連するウェビナーを開催し、価格設定自動化ツールのデモンストレーションも行う予定である。

(注)2024年12月18日、米国財務省およびIRS(内国歳入庁)は、NOTICE 2025-04(Application of the Simplified and Streamlined Approach under Section 482)を公表した。利益B(SSA)(2025年1月1日以降開始課税年度より)の適用は、納税者が適用を選択した場合のみSSAが適用される(オプション1)となっているが、納税者が選択しない場合でも対象国当局(IRS)がSSAを適用する権限を有する(オプション2)とすることも引き続き検討するとしている(原則として、2025年3月7日まで意見募集)。

出典:OECD website
「月刊 国際税務」2025年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
 

その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。

本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のPwCが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を翻訳してお伝えしています。税制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認くださるようお願いいたします。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

本ページに関するお問い合わせ