{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.text}}
2021-04-27
業務標準化・システム定着化(=チェンジマネジメント)のためには、営業業務の現状分析結果から標準化・定着化の阻害要因を特定し、阻害要因を基にした「3W1H(Why、What、Who、How)」での施策検討が必要となります。営業現場に対し何をどのように伝えると標準化・定着化が進むのか、中長期的にどのようなモニタリング・フォローを実施すべきか、現場が共感・受け入れ可能なチェンジマネジメントとはどのようなものか。このような観点を基に構成した業務標準化・システム定着化のプログラムについてご紹介します。
前稿では、「業務標準化・システム定着化がなぜ実現しないのか?」というテーマで、現場におけるSFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)の位置づけと標準化・定着化に向けた指針をご提示しました。本稿においては、業務標準化・システム定着化のための具体的な方法についてご紹介します。
業務標準化・システム定着化のプログラムは、下記の6つの手順で標準化・定着化を推進します。以下、各々について具体的にご紹介します。
業務・システムが標準化・定着化しない原因は、大別すると3段階の深刻度があります。深刻度の数字が大きいほど、「重症度」が高いと言えます。
深刻度1の場合は、システムの画面遷移や操作性の問題であるため、比較的容易に対応が可能です。深刻度2の場合は、業務プロセスの理解不足が起因しているため、システムだけでなく業務プロセスの理解の促進が必要となります。深刻度3の場合は非常に「重症」です。会社としての営業戦略や業務プロセス、システム活用の意義を現場が理解できていないため、単に業務プロセスやシステム操作だけなく、そもそも会社としてどのような営業戦略を立案しているのか、そのためにどのような業務・システムが必要であるかを認識形成する必要があります。
このような深刻度を特定するために、まずは現場に対するインタビューとシステム活用状況の分析を実施し、業務標準化・システム定着化の度合いを診断します。
続いて、標準化・定着化を阻害している要因を定量的な観点からも分析するために、営業業務の詳細なアセスメントを実施します。アセスメントは診断ツールを活用し、実施済みの現場インタビュー結果と合わせて、下図のような観点から阻害要因を特定します。「阻害要因分析」の上段に問題があるほど、より深い施策を打つ必要があります。
このように、定性・定量的な情報の分析により、深刻度と阻害要因を明らかにすることで、打つべき業務標準化・システム定着化の施策の規模を明らかにします。
阻害要因の特定が完了した後、「3W1H」の観点から業務標準化・システム定着化の具体的な方法を設定します。アプローチの概要は下図のような考え方で検討します。基本的には先述の標準化・定着化度合いに合わせて「3W1H」のアプローチのレベルを設定しますが、個々の企業の状況や事情に応じて柔軟に設定することが重要です。
「Why」と「What」のレベルは原則一します。標準化・定着化の深刻度と阻害要因に合わせてレベルを設定します。レベル2やレベル3の場合は、市場環境の変化を提示したうえで、会社としてどのような営業戦略(今のままの営業活動では売れなくなるというメッセージ)を立案しているのか、そのために業務をどう変えるべきか、業務の実現にシステムがなぜ必要かを現場に伝える必要があります。レベル3の場合は、消費者・市場・技術動向の分析をもとにした今後の業界構造の変化に言及し、必要な営業戦略を語ることが大切です。
「Who」はガバナンス・組織やマネジメントの状態に合わせて、「誰に伝えるか」を検討することが重要です。多くの場合、(前稿で述べた通り)現場の営業担当ではなくマネジメント層を対象とする必要があります。企業の組織・マネジメントの構造に基づいた判断を実施しますが、特に支社・支局のガバナンスが強い企業の場合には、支社・支局のマネジメント層の理解を促し、現場に落とし込んでもらうといった施策を検討する場合もあります。
「How」については、コンテンツと実施方法の2軸で考えます。まずコンテンツについて、阻害要因の深刻度を問わず、マニュアルの説明程度で済ませても標準化・定着化を実現できないと考えるべきです。標準化・定着化では納得感の醸成が重要です。受け手が「たしかに営業活動を変えていかないと今後は売れなくなりそうだ」「システムを使ってこういう業務を実施すると利益・売上が伸びそうだ」と思わなければ、行動変容には至りません。分かりやすく納得感のある動画やアニメーションなどのコンテンツを活用することが重要です。次に、実施方法について、多くの場合、単なるコンテンツの配布もしくは一方的な説明会ではなく、ワークショップを活用した双方向のコミュニケーションが重要となります。ワークショップでは、現場のマネージャーや営業担当者から、提示した業務・システムを実現する上での懸念や課題を挙げてもらい、どのように解決していくかについてディスカッションを実施します。また、(特に現場マネージャーを対象に)どのように・どのくらい標準化・定着化を達成するかを設定してもらうことが効果的です。このようなディスカッションを複数の営業拠点を交えて実施することで、納得感やモチベーションを醸成することができます。
以上のように、阻害要因分析の結果をもとに「3W1H」の観点で標準化・定着化の方法を検討・実行します。昨今、新型コロナウイルス感染症の影響で、1カ所に集合してワークショップを実施することが難しくなっていますが、可能な限り、感染症対策を行った上で対面で実施することを推奨します。リモートで実施すると、当事者意識を醸成しにくく、ディスカッションも成立しにくいからです。しかし、どうしてもリモートしか選択できない場合は、(コロナ禍で増えてきた)相互コミュニケーションのツールを活用し、可能限り「参加型」での標準化・定着化を実施することを目指します。リモートにて実施する場合は、一方的な説明のみにならないよう、Q&Aの時間を設けたり少人数チームでディスカッションを実施したりし、オンラインワークショップの形に仕立てることが重要です。参加者に「自分事」として捉えていただくために、可能な限り「参加型」となるような工夫が求められます。
ここまで述べてきた方法で標準化・定着化の施策を実施すると、非常に大きな成果が出てきます。第3回連載でご紹介する企業も、施策(アニメコンテンツ×ワークショップ)実施後にシステム活用率が飛躍的に向上しました。ただし、施策を一度打っただけでは、効果が長続きしないことがあります。特に営業現場が(年末・年度末などの)繁忙期を迎えた途端に元の状態に戻り、繁忙期が終わってもそのまま回復しない場合が散見されます。したがって、「やりっぱなし」ではなく施策実施後の結果検証とフォロー施策も重要となります。
結果検証については、予めKPIを設定したうえで、KPI達成率(数)を「見える化」します。SFAのダッシュボードなどを活用すると効果的です。KPI設定で重要なことは、「定着度」を測るのか、「標準化度」を測るのか(もしくはどちらも測るのか)を決めることです。「定着度」は(入力内容を問わず)システムをどれだけ活用しているか、「標準化度」は設定した業務プロセスを実現できているかを検証します。後者のほうが測定・分析の設計が難しいですが、業務・システム双方が適切に実行・活用されているかを把握することができます。
測定した結果に基づき、優れた拠点の取り組みを事例化して展開するとともに、標準化・定着化が遅れている拠点にフォロー指示と事例を共有するなどの施策を実施します。なお、標準化・定着化を評価などの「強制力」のみを用いて実施することは避けるべきです。「強制力」のみを用いると「とりあえず入力する」といった本来の想定とは異なるシステムの使い方をされる恐れがあるためです。「強制力」は一連の現場への定着化施策を実施しても効果が薄い場合にのみ活用することを推奨します。
業務標準化・システム定着化で最も重要なことは、現場に寄り添った施策を実行することです。標準化・定着化がどんなに「正しいこと」であっても、それが現場の実態と乖離している場合、現場は受け入れません。営業現場では何が課題なのか、どのような思いを持っているのか、インタビューなどを通じて丁寧に収集・分析し、営業現場が共感可能なメッセージを発信することで、チェンジマネジメントが進んでいきます。次稿では、本稿でご提示したプログラムを現場の課題に即して実行し、チェンジマネジメントが飛躍的に進んだ大手消費財メーカーの事例をご紹介します。
本稿は、SalesZineにて2021年1月25日付で掲載された記事を転載したものです。
{{item.text}}
{{item.text}}