【2022年】PwCの眼(8)持続可能なモビリティ時代における財務マネジメント

2023-03-17

スマートモビリティサービスは、交通混雑解消、環境負荷低減、ラストワンマイルの移動補完といった、さまざまな地域課題の解決へ寄与すると期待されている。持続可能なスマートモビリティサービスの地域への実装を進めるにあたり、自動車業界関係者や、地域の関係者にとって、財務マネジメントの観点からは何が重要なのか、考えてみたい。

近年、全国各地でスマートモビリティサービスの社会実装に向けて実証実験が行われている。例えば、経済産業省と国土交通省が連携して推進する、地域における移動課題の解決や経済活性化を目指す「スマートモビリティチャレンジ」などのプロジェクトが挙げられる。また、地域課題を解決するための取り組みとしてスマートシティが注目されており、総務省の「地域課題の解決に向けたスマートシティの推進に関する調査」では、全国の自治体で導入されている300超のサービスを調査し、「交通・モビリティ」分野のサービスは56件と多くを占めている。中でも、「都市部の移動手段の高度化」(30件)、「過疎化で公共交通機関の維持が困難」(13件)といったニーズが高く、モビリティサービス導入の期待が高いことが分かる。

モビリティサービスの社会実装の実現可能性を考える際には、技術的要件や法的要件、社会的な受容性などのさまざまな考慮事項があるが、導入後、持続的に運営が出来るかという観点から、財務マネジメント上の考慮事項も重要だ。

財務マネジメント上の考慮事項として、サービスのビジネスモデルの想定、費用を負担する重要なステークホルダーの特定、具体的な収益・費用項目の想定がある。ビジネスモデルを定める際は、サービスの乗客からの収入だけでなく、広告料やデータの活用など、多様な収益化の可能性を検討する。実証実験を通じて、収益・費用項目をシミュレーションし、導入時の一時費用や運営費用を持続的に負担出来るビジネスモデルが構築可能かを見定めていく。サービスに活用する車両の導入費・改造代など、導入時の一時費用に関して官公庁の各種補助事業が活用できる場合には利用すべきであろう。

COVID-19を契機とした働き方・生活様式の変化の浸透や、少子高齢化・人口減少も相まった利用者の減少により、交通事業者の運賃上昇・減便・廃線がこれまで以上に加速し、地域公共交通は厳しい環境にさらされている。一方で、地域交通を含む公共サービス分野においては、地域住民にとっての利便性の維持向上が求められる。利用したいタイミングでの移動サービスの提供に加えて、今後は移動そのものだけではなく移動の前後に周辺サービスを付加することによる、サービス全体での価値向上も重要となり、官民連携した質の高いサービスの開発と導入は今後ますます求められる。

社会的インパクト投資の一種であるSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)のように、官民連携の資金調達方法も近年着目されている。地方自治体が民間に業務を委託する際、サービスの成果に基づいて委託額を変動させるものであり、民間の仕組みを活用して効果を高めつつ、事業コストの削減が期待されている。SIBの地域公共交通への活用も検討が始まりつつあり、こうした動きにも注目したい。

執筆者

大矢 亮輔

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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※本稿は、日刊自動車新聞2023年2月27日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

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