【2021年】PwCの眼(4)地域をリデザインする企業貢献型の「地域コミュニティー基盤」

2021-07-19

COVID-19の影響により、地域公共交通は厳しい環境にさらされている。2020年度の鉄道・バスなどの交通事業者の収益性は軒並み低下したが、直近1年で働き方・生活様式の変化が浸透しつつあるため、完全に元の水準に戻ることは想定しにくい。少子高齢化・人口減少も相まって、交通事業者の運賃上昇・減便・廃線がこれまで以上に加速し、結果として交通弱者が移動手段を失う、地方経済が不活性化する懸念がある。この状況を打開すべく、行政・事業者・住民が一丸となり、共助型のモビリティインフラの整備・運用を進めていくことが期待されている。本稿では、そのような打ち手に必要となる「地域コミュニティー基盤」とはどのようなものか、「地域コミュニティー基盤」を構築・運用する上で、自動車・モビリティ産業に関わる企業が担うべき役割を、特に地域モビリティ課題解決の視点で論ずる。

「地域コミュニティー基盤」とは、地域・住民課題の解決に向けて、生活の質をなるべく落とさずに行動変容・新規解決策導入を図るべく、需要・供給・アセットのデータを取りまとめた基盤である。究極的には、地域のリアル情報を即時に再現したデジタルツインとなる。地域モビリティで例示すると、路線バスの維持が困難な地域での代替移動手段として、需要情報をもとに同じ店舗へ買い物に向かう住民同士が誘い合わせ、供給・アセット情報をもとに日中稼働していない企業の送迎バスをオンデマンド交通として運行することなどが想定される。この「地域コミュニティー基盤」は、さまざまな技術進化との組み合わせを通じて真価を発揮する。例えば、行動変容を促す仕組みとなる地域通貨、効果的な配車が可能なAI(人工知能)アルゴリズム、ドライバー不足を解消する自動運転、遊休資産としての活用用途が多様な電気自動車、移動せずとも便益を得られる拡張現実、基盤の中立性を担保するブロックチェーンなどが想定される。

「地域コミュニティー基盤」を構築・運用する上で企業が果たすべき主な役割としては、次の3点がある。まず、企業が有する関連データの提供が挙げられるだろう。地域モビリティで例示すると、需要者としての従業員の通勤データに加え、交通サービスや移動手段の供給、アセット(遊休資産)の稼働データの提供などが期待される。続いて、前稿にて論じた、地域に根差すグローバル経営やESG経営を進めるべく、企業が拠点を有する地域における「地域コミュニティー基盤」構築の取り組みに参画することが挙げられる。最後に、コミュニティーの課題に向き合って社会イノベーションを創発すべく、基盤の利活用に向けた周辺技術を開発・導入・改良することも想定される。現状では、住民意向の反映や監視社会化への懸念に対する配慮、先進的な試みへの投資を図るため、国内における企業が参画する「地域コミュニティー基盤」は、電気・自動車・通信などの業種の大企業によるグリーンフィールド型再開発における「都市OS」が中心である。今後、地域住民との合意形成を得るためのガイドラインとともに類する基盤が各地に展開されていくことで、あまねく地域・企業の参画機会が広がるだろう。

執筆者

北川 友彦

阿部 健太郎

ディレクター
PwC Strategy&

※本稿は、日刊自動車新聞2021年7月19日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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